成長と信頼構築を加速させる中期経営計画
「経営計画って、プロはこういうふうに作りこんでいくんだねぇ。感心しました」
先日、事業承継に向けて中期経営計画を一緒に策定していたある経営者の方から、そんな言葉をいただきました。お客様に寄り添いながらご支援する者として、大変うれしい一幕でした。
経営計画というと、「将来の数値をまとめた資料」や「金融機関に見せるためのもの」と思われがちです。しかし、本来の経営計画はもっと実践的で、もっと人の心に訴えかけるもの。社長が描く未来の姿をカタチにし、それを引き寄せるための経営の設計図をどのように描くか。
今回は、そのエッセンスをご紹介します。
■経営計画とは ― 未来を形にする設計図
経営計画とは、単なる将来の数値シミュレーションではありません。社長が描く“ありたい未来の姿”と、そこに至る道筋を具体化し、従業員(場合によっては社外の関係者)と共有するためのものです。
経営計画を策定することにより、これまでの「手なりの成長」、つまり惰性や偶然に任せた成長曲線を超え、より高いステージに到達するための意志と施策を形にしていくことができます。計画を立てることで社内の計画性が高まるのはもちろん、採用や人材育成、資金調達にも生きてきます。
そして何より、社長自身が自社の将来像と戦略を明確に語れるようになること。それが自信と魅力をもたらし、社内外からの信頼を生み出していきます。中期経営計画は、成長と信頼を同時に築くための有力な経営ツールなのです。
■考え方のポイント ― 理想を描き、現実を設計する
経営計画づくりの最初のステップは、「全社としてどうありたいか」をとことん考えることです。経営者の価値観がもっとも明確に表れる部分ですので、この軸が定まらないままでは、どんな精緻な計画も形骸化してしまいます。
そのうえで、営業・人事・生産・経営基盤など、より実務に近い3~5つ程度の領域に分けて理想の姿を検討していきます。各領域ごとに「何を」「いつ」「誰が」実行するのかを整理し、3~5年のスパンで腰を据えて取り組む。これが中期経営計画の基本的なかたちです。
ただし、現実的な制約ばかりにとらわれていては、現実の延長線上の成果しか得られません。理想が実現している状態を一度しっかり思い描き、「理想の姿が実現しているとしたら、その過程でどんな課題がどんなふうに解決されただろうか」と逆算して考えてみる。この“理想からの逆算”が、新しい発想を生み、成長を後押しします。
どの段階でも「言語化」が鍵となります。誰が読んでも誤解のない、簡潔でわかりやすい表現に整えること。この作業こそが、計画を実行可能なものに変えていきます。
そして最終的には、定性的な方向性を収支計画に落とし込み、定性と定量の両面から到達目標を明確にしていく。そのとき、「描いた夢」が「動かせる計画」へと変わっていくのです。
■経営計画を“生かす” ― 組織を動かす共通言語に
経営計画の価値は、書き上げた瞬間ではなく、それを“動かし始めたとき”にこそ生まれます。社長一人のための資料にせず、従業員や関係者と共有し、日々の判断や行動の基準として浸透させる。この「共有」と「運用」が、計画を“生きた経営ツール”に変えていきます。
また、ただ策定するだけでなく、定期的に進捗を確認し、計画と現実のズレを見直しながら改善を重ねていくことも非常に重要です。それを繰り返すうちに、会社全体でPDCAが自律的に回り始め、社長個人の努力に頼らない組織経営が根づいていきます。そうなれば、目標に向けて自走していく組織が生まれていきます。
中期経営計画は、未来を示すためのものであるだけでなく、”変化の中で成長と信頼を両立させるための共通言語”でもあります。経営者が未来を語り、社員と一丸となって現実にしていく。その循環こそが、会社を強くしていく効果的な仕組みになるのです。
経営計画をつくるということは、未来を「語れるもの」にすること。経営者が自社の未来像と戦略を自信をもって語れるようになると、その姿勢そのものが社内外の信頼を生み、次の成長を呼び込みます。
また、急速に変化する現代においても、元々思い描いていた姿とそこに至る道筋が明確だったのであれば、変化点を明らかにして舵を切ることも可能です。
経営計画は単なる書類ではなく、未来への設計図です。これを大胆かつ丁寧に描き切ること。このプロセスが、会社の歩みを大きく変えることがあり、当社としても力を入れてご支援をしていきます。
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