最適なコンサルティングを今すぐ活用する!

“静かな採用活動”が会社を変える――社内の人材を見直すという発想

SPECIAL

マインドポジション経営コンサルタント

株式会社アトリオン

代表取締役 

マインドポジション経営コンサルタント。社員と顧客の心に占める貴社の位置づけ―「マインドポジション」をアップし、業績向上を目指す仕組み構築のスペシャリスト。30年にわたる中小企業のブランディングと組織開発の経験を背景に、マインドポジション経営実践プログラムをオリジナル開発。時代に合わせて組織を刷新したい経営者や、2代目、3代目社長、社員の力を引き出して社内の体制を再構築したい経営者に高く評価されている。新しい切り口に基づく事業の見直しと組織の再開発を通して業績の2ケタ成長を実現するなど、持続可能な企業の成長に向けた力強い支援に定評。株式会社マインドポジション経営研究所代表取締役

今年の初めごろからでしょうか。「静かな退職」という言葉をよく見かけるようになりました。調べてみると、2022年にアメリカのキャリアコーチ、ブライアン・クリーリー氏がソーシャルメディアを通じて広めたのが始まりで、若い世代の共感を呼んだといいます。(リクルートマネジメントソリューションズサイトより)

ワークライフバランスのうち、ライフを重視する若者が増えているのは周知のとおりです。与えられた任務だけを淡々とこなし、必要最低限の収入を確保する――。

一見すると仕事への情熱を失ったようにも見えますが、実はそうではありません。彼らはストレスから自分を守りながら、“持続可能な働き方”を模索しているのです。とはいえ、企業側から見れば歓迎しがたい現象です。しかも名前が与えられることで、そのスタイルが「あり」とされ、正当化されていく危うさもあります。

この話のポイントは、「決して仕事への情熱が失われたわけではない」という点です。わずかでも情熱の源があるなら、それを再び燃やす仕掛けを考えることができる。同時に、“持続可能な働き方”を支える職場環境を整えることも、企業の大切な責任です。

さて今回のテーマに戻ります。

社会問題化している人材採用の難しさに対しても、同じような発想が必要です。つまり――外から新しい人を採るだけでなく、今いる社員の力を引き出す。これも立派な“採用活動”の視点です。

中小企業の多くが抱える悩みの一つが、「採用しても続かない」「応募が来ない」ということ。若年層の減少で採用難が常態化するなか、多くの企業が求人広告や採用媒体など、外向きの施策に力を注いでいます。

けれども、本当の意味で「選ばれる会社」になるためには、外に向かって声を上げる前に、社内の人材をどう見るかを問い直すことが欠かせません。これこそが「静かな採用活動」の中核となる考え方です。

たとえば、これまで“当たり前のようにそこにいた人”の中に、会社の未来を担う人材が隠れているかもしれません。「次のリーダー候補はいないか」と聞かれても、すぐに名前が挙がらない会社は少なくないでしょう。しかしその理由は、リーダーがいないからではなく、「リーダーとして見たことがない」からなのです。

ピグマリオン効果という言葉をご存じでしょうか。アメリカの心理学者ロバート・ローゼンタールが提唱したもので、他者からの期待を受けることで、その期待に応えようとパフォーマンスが高まる心理的効果を指します。

私が若いころ在籍した会社に、「機会が人をつくる、人が機会をつくる」というキャッチフレーズがありました。人は置かれた環境によって成長し、成長した人がまた新しい機会を生む――この循環を実践していた企業です。だからこそ「人材輩出企業」としての評価を確立していたのでしょう。

話しを戻すと、新しい人を外から“採る”ことに目を向けすぎると、今いる社員の可能性を見落としてしまいます。“採用”を「社外の人材獲得」に限定してしまえば、人材不足の本質的な解決には至りません。

「静かな採用活動」とは、外に向けて派手に募集をかけることではなく、社内の人材を見直し、育てることを前提に採用力を高める考え方です。

もちろん、欠員が出たときに外部採用が必要な場面もあります。しかし、同時にもう少し長い目で見て、社内人材の潜在能力を引き上げる視点を持つことが、企業の持続的成長につながります。

いまいる人をどう見て、どう育てるか。静かな採用活動は、実は企業の文化を磨く第一歩でもあります。

あなたの会社では、どんな“採用”が行われていますか。

コラムの更新をお知らせします!

コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。