ショールームは「たった2坪でも」機能する
「先生、ウチがショールームを作れるなんて思ってもみませんでした」
当社のコンサルティングをお受けいただいて、念願の自社ショールームをお作りになった中小企業の社長です。
この会社は、取引先の大企業がショールームを持っていて、そこを使わせてもらうことでショールームイベントを開催していました。しかし、願望というか憧れというか、いつか自社ショールームを持ちたいと常々考えていました。
そんな中で、当社の「中小企業のための2坪からでもできる~」というタイトルの書籍をお読みになり、自社でもできるのではないかという思いでコンサルティングを受けていただきました。そして、ついに今般完成となったのです。
もちろん、ショールームをただ単に作るだけなら、お金をかければ誰にでもできます。しかし、憧れとか道楽とかで済ますわけにはいきません。当然、売り上げのアップを目指して作るのですから「作り方」と「使い方」が重要になります。
中小企業がショールームを作っても成功しないといわれています。これは「中小企業」だからではなく、作り方と使い方を知らないからです。したがって、それを知らなければ大企業でも成功はしません。
さて、それではどのような姿かたちのショールームを作ったかというと、これが本当に2坪のショールームです。正確に言えば2坪ちょっとなのですが、この「2坪からでも」というのは単に広さを意味するものではありません。「2坪くらいの狭い空間でも」という意味です。
その狭い空間に、トイレが2台置いてあります。たった2台です。でもそれが、この会社にとっては精いっぱいの、社長にとっては憧れのショールームです。そのショールームが、きちんと機能しているのです。
狭い空間に2台のトイレ。姿かたちは、ただそれだけのショールームですが、そこにはちゃんと仕掛けがあります。
実際に用を足すことはできませんが、水を流すことができます。お客様に水の流れ具合とか、節水の仕組みとか、お掃除のしやすさを体験してもらえるように工夫しています。体験学習ができるようになっているのです。
また、今どきの高級トイレでもなく、スタイリッシュな一体型でもありません。それは、この社長のこだわりから、そのような展示になっています。社長はお掃除がしやすく省エネが効いた、リーズナブルでメンテナンスがしやすいトイレを提案しているのです。
一般的には、高級で見栄えのいいトイレをお客様に勧めるはずです。高いほうがお金はとれるし、利益率もいいからです。ところが、この社長はそうはしていません。本当に自分の気に入ったトイレしか展示していませんし、お客様に勧めません。
小さな会社で地域にお世話になっているという思いが強いため、自分が体験した中で最もいいと思う製品しかお勧めしません。それは社長自身の独自性と客観性があるからです。お客様にとって、本当にいいものは何かを考えている結果です。
もし、自分の都合だけで製品を選んでお客様に勧めたら、その時は儲かるかもしれませんが、長い時間軸で見れば、それは損をするということをよく知っています。
狭い商圏で、地元地域と長いおつきあいをしている中で商売をしているのですから、信用が第一なのを身をもって知っています。
社長は長年ショールームを作りたいと考えていましたが、どのようなショールームをどのように作ればいいか、よくわかりませんでした。メーカーのショールームを参考に、ショールームの外観や内装、展示品などをあれこれ考えてきました。
しかし、メーカーのショールームをまねて作るのであれば、お客様はメーカーのショールームに行ったほうがいいに決まっています。展示品は多いですし、アドバイザーもわかりやすく説明してくれるからです。
そんなことでは、自社のショールームは存在価値がなくなってしまうと考えた社長は、「普通と違うショールーム」を目指していました。最初は、それが何かはわかりませんでしたが…。
今回作ったショールームは、社長の思いがこもっています。お客様にとって価値ある製品しか展示していません。それは高いとか安いとかではありません。機能とかデザインだけでもありません。お客様の立場に立って、考えに考え抜かれた展示なのです。
突拍子もないショールームを作る方がいます。野球場を模したり、ピラミッドだったり、異様に派手だったり…。
ショールームは姿かたちだけで作ってはいけません。そこには経営者の信念がなければなりません。そうでなければ、いくら立派なショールームでも「普通」のショールームに成り下がってしまいます。
あなたのショールームに対する信念は何ですか?
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