1人の問題社員を辞めさせる苦労は、10人の平凡な社員の笑顔で報われる。

「あの人さえいなければなぁ・・」
社員のみならず経営者にとっても、扱いにくい社員の一人や二人は、必ずいるものです。
そして往々にして、そういった社員は、一緒に働く多くの社員たちからも、
うとましがられていたり、仕事を進めにくい原因になっていたりします。
会社の人事部は、そんな悩みを抱える経営者・管理職の駆け込み寺でもあります。
私も人事部時代は「寺の住職」として、また自分の部下に対しても、
幾多の問題社員対応を断行した、ほろ苦い経験から、
問題社員の扱い方が、組織の将来を左右する、と確信しています。
◆ 口頭での改善指導は、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」
扱いにくい問題社員に対して、問題点と改善要求を明確に突き付けていますか?
1回だけではなく、改善しなければ何度でも、要求をしていますか?
多くの経営者は、この段階をないがしろにしがちで、
「困っている」と言いながら、本質的にやるべきことができていない状況です。
問題点と改善要求を、公式な文書として明文化し、公式な面談で説明する、
次回面談までに改善がされなければ、再度、同じことを行う、この繰り返しです。
本人の署名ももらいましょう。
面談では、著しく気まずい空気が漂いますが、これを避けていては、
絶対に次の段階には進めず、状況は何一つ好転しません。
◆ 退職勧奨に踏み込む勇気と決心
改善指導を数回行って、本質的に改善することは、残念ながら稀です。
そのため、改善指導は、次の退職勧奨を行うことを前提にした設計が不可欠です。
退職に同意させるための補助材料には、様々な形態があります。
一定期間の勤務免除在籍、特別加算金、再就職先の支援、等々。
当然ながら、追加のコストがかかります。
しかし、そもそもの採用責任と育成失敗のコストを支払うこと、
退職しない場合の周囲への悪影響コストと天秤にかける、等々は不可避です。
一方で、「カネで解決」しようとしている、と思われたら失敗します。
「経営者としての覚悟」「会社と社員を守る意思の強さ」
を明確に示すことが、この大勝負のポイントです。
◆ どうしても辞めさせられない時の待避策
ある程度の地位の社員であれば、いったん役員に登用してから解雇する、
といった手法もありますが、社員からの見え方には配慮が必要でしょう。
どうしても退場させられない場合は、残留のダメージをいかに最小化するか、
一般的には、業務上の役割を限定して、他の社員との接点を減らす、が基本です。
そして、本人にも、その趣旨と報酬の減額を、明確に文書で発令すること。
はじめは、残留できてほっとする問題社員も、時間が経過すると、
組織の中で、徐々に居心地が悪くなってきて、変化が出てきます。
(窓際族を満喫する人も、ゼロではありませんが・・)
当然、報酬を減額しても、ムダな人件費にはなりますが、
経営者の意思決定と指揮命令の阻害要因を取り除き、
その他の社員たちを守るための、必要悪コストと見るべきです。
◆ 平凡な社員たちの笑顔を取り戻すことが、経営者の責任
経営者の言行不一致には、社員は敏感です。
経営者の意図に反する社員が、とがめられることなく放置されていると、
経営者の発言の重みは地に落ちて、信頼感もゼロとなります。
そして、社員の面従腹背が蔓延し、笛吹けど踊らず、に陥ります。
一方で、経営者が価値観や行動規範を示し、それに反する社員を許さない、
という断固たる姿勢を見せた瞬間、社員は経営者への信頼感を一気に高めます。
問題社員対応は、イヤな仕事ではありますが、
責任ある経営者にしかできない、大きな務めです。
そして、社員の笑顔を増やし、働きやすい会社をつくるため、
強い組織をつくるための、極めて投資対効果の高い方法でもあります。
問題社員対応は、どうしても放置される「聖域」になりがちですが、
実は、経営者の求心力を高める大きなチャンスでもあります。
当社が提唱する「世界標準のドミノ型組織」、強い組織でビジネスを成長させる、
にも直結する、重要なアクションです。
あなたの会社には、問題社員を放置しない仕組みがありますか?
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