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第64号:現場仕事と社長業の板挟みを突破するには?

SPECIAL

高収益・高賃金企業づくりコンサルタント

株式会社ポリフォニアコンサルティング

代表取締役 

中小企業ではハードルが高いとされる社員1人粗利3千万円、平均年収1千万円越えの本気で儲かる組織になるための土台作りを指導。会社の「価値」に注目し、価格ではなく、組織全体で価値を高め・守り・売っていく仕組み作りで注目を集めている。これまで150社以上の様々な業種の中小企業を支援する中で、中小企業の業績・資金繰り・人材確保などの経営問題の背景には、「一見相反する会社と社員の利益双方を引き上げていく経営の仕組み」が欠けていることを発見し、その仕組み作りのノウハウを体系化。

「シライ先生、現場が忙しくて手を付けられていません」

製造業を営むA社長がコンサルティング中に発したお言葉です。限られた人数で回さなければならないうえ、社員の突然の欠勤や長期休暇などで手が回らない・・・。

A社長は、社長としてすべきことが進められていない現状に焦燥感を抱いています。

現場に入らなければ仕事が回らない。しかし現場に入ると社長業ができない―。非常にもどかしいというか、ある意味、最も根深い”鶏と卵の関係”が色々な現場で起きている、というのが人手不足時代の実情だったりします。

仕事を前に進めるには社長が現場に立つ必要がある。しかし現場に立つと、社長にしかできない仕事が止まる。その板挟みの中で毎日時間だけが過ぎていく。

ここに対する解は、実は1つしかありません。それは社長が現場を離れることです。

「離れたら現場が回らない」という声が聞こえてきます。事実、回らないでしょう。最初は必ずそうなります。しかしそこで社長が戻った瞬間、板挟みの現状がこれから先も続くループを繰り返すことになります。

ここで考えるべき問題は、「現場員が欠如することによる損失」と「社長の仕事が止まる損失」のどちらが大きいのか?という問いです。

目先だけを見れば、今日捌くべき仕事が止まるのは損失でしょう。もしかしたら顧客との信頼に傷がつくという可能性もありますので、将来的な損失に繋がる可能性もないとは言えません。

一方で社長の仕事が止まる損失は、目先の損失に比べて認知しにくい性質です。これを可視化するには、そもそも社長の仕事とは何か?を明らかにしておく必要があります。社長の仕事は、大きく次の3つです。

  • 数字をつくる
  • 独自の価値をつくり、市場をつくる
  • 仕組みをつくる

他にも経営理念を実現するとか、マネジメントをするとか色々でしょうが、実務として重要なことはこの3つでしょう。

”数字をつくる”とは、将来の1人粗利、ウリモノの価値と価格、販売量、社内コスト構造、経常利益、現預金水準と資金配分をどのようにしていくかを設計することです。

その計画値に対して、実際に現場の動きがどのように数字を動かしているかをチェックし、数字をダイレクトに動かす意思決定をすることです。

”価値をつくる”とは、ウリモノを他所に無い独自のものとして仕立て上げていき、独自の市場を形成することです。

何が他所と違うのか、自社の独自の価値観や能力は何か、それらをどんなカタチでウリモノとして昇華するかを考えることです。

そして自社の独自性を理解してもらい、大きな対価を支払うだけの価値がある会社だと認知する共感者を増やし、独自市場をつくることこそ未来の1人粗利の源泉です。

社内や現場にいては、それは絶対にできません。1人粗利を増やさない仕事で現場が埋め尽くされているならば、社長が現場に入ろうとも一向に豊かさは得られません。

”仕組みを作る”とは、社長の生み出すこれらの構想を限られた社員数で回せるように、社内の業務を標準化し、流れを組み替え、習慣を書き換え、技能向上の仕組みを構築することです。

1分1秒が粗利という価値の対価に繋がる動きになるよう、組織の力学を変えるのです。

この3つの実務が止まる損失を考えて欲しいのです。

ウリモノの粗利が10%上がり、社内処理能力が10%上がったら、それだけで1人粗利は120%、経常利益は3倍4倍になります。さらに、これを毎年続けていったらどうなるか?数字上は4年で1人粗利が倍になります。

つまり、社長が現場に張り付く損失は何千万、何億円にもなると言っても決して過言ではありません。

誰かこの代役を務められる人がいるならいざ知らず、もし片腕と言える人間すらいない状態なのであれば、誰もこの3つをやる人は社内にいないことになります。

だからこそ、現状板挟みを打破するには、まず社長が現場から離れていくと決めることなのです。

しかしそうはいっても、現場で自分の代わりがいない―そう思うかもしれません。しかし実は、社長が現場に入り続けているということ自体が、社員の能力発揮に蓋をしているのです。その状態で組織が均衡しているのです。

強い組織の特長は、上位者が抜けると一般社員から上位者が自然に生まれてくる設計を施している点にあります。だから、強い組織は管理職が育つのです。

”力がない人間”と”発揮していない人間”は、表から見ると同じに見えても実は全く違います。多くの場合、力がないのではなく、力を発揮できる環境がないのです。

社長が現場を離れていくときは、その「力を発揮できる環境を正しく用意すること」が絶対条件となります。

ここが板挟み状態から抜け出せるかどうかの大きな分岐点であり、力の入れどころです。自分がすべきことをご理解なさったA社長は仰います。

「まず毎日1時間、現場から離れるようにします。作りかけの書を書き上げて、2週間後には幹部社員に伝達の場を設けようと思います。」

それは単なる意気込みではありません。現場を離れる「時間」を確保し、何をつくるのかという「対象」を明確にし、いつ・誰へ渡すのかという「締切」と「相手」を定めた意思決定です。

このように少しずつ、しかし確実に、本質を外さず仕組みを積み上げていくことが、やがて1人粗利が大きく増加し、社員が力を発揮し、社長が市場を創造していける組織へと変わっていきます。

あなたならどうしますか?今日の時間は、1人粗利を増やす方向に使えていますか?

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