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社員定着率の悪化が止まらない製造業 その共通点とは?

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

製造業は日本を代表する業種ですし、規模の大小・種類の多様化などの点において、星の数ほどもある業種です。しかし人材採用難の今、社員の定着率低下という危機が静かに訪れています。私の感覚では、お付き合いいただいている製造業の社長から悲痛な声をよく聞くようになったと感じています。どうして製造業にばかりそのようなことが起きるのでしょうか?私の視点から見えるその根本原因は、ある意味構造的な問題ですし、昭和から引き継がれた旧態依然ともいえる社内体質にあります。今回は、ある意味ショッキングで、しかし製造業の方は多かれ少なかれ気が付いているリスクについて解説します。

・非合理的な仕事が放置されている

・いつまでたっても一人前になれない

・定着率の悪化は製造業でどうして発生しやすいのか?

 

非合理的な仕事が放置されている

これは、一見すると「どの業種にも起きうること」と思われるかもしれません。しかし、製造業の場合はことは重大です。社歴の長い会社の場合、どうしても古くから伝えられてきた仕事の進め方が今でも社内で幅を利かせています。たとえば、

 XXは現場のホワイトボードに書いておくこと

 この件については、XX部のYYさんに必ず連絡しておくこと

といった、何やら「社内の掟」のような位置づけで義務化されている仕事です。皆さんの会社にもあるのではないでしょうか?いや、このような「前後の脈絡もなく、決められた掟としてルールがある」という会社は本当に多いと思います。なぜこのような掟が発生してしまうのか?様々な原因が考えられますが、大別するとおそらく、「昔は社内のみんなに状況を知ってもらいたいから、だれの目にもとまりやすいホワイトボードに書いておいて、通りがかる都度見るようにしていた」とか「何か問題があったらYYさんが必ず裏方でフォローしてくれるから、耳に入れておかないといけない」などといったことから始まったのだと思います。

しかし、着目していただきたい。これらの行為について、その目的や結果が良くわからないことに…。ホワイトボードに書いた後、いったいどこで何が起きるのか?もしくは、どんな効果があるのかわかっている人は非常に少数でしょう。YYさんが耳打ちされた後何をするのかわかっている人はいないかもしれません。

当社のお客様でも、類似の事例は非常に多く、いつも問題になります。そして、業務を可視化してこれらの掟の目的などをあぶりだそうとすると、愕然とすることがしばしばです。例えば「ホワイトボードに書いてあるが、その情報をだれも使っていない(気にしていない)」とか、「YYさんにどんなことをしているのか聞いたら、連絡を受けてもトラブルでもない限り特に何もしていないという回答があった」など、他の社員が一生懸命に守ってきた掟が、まったく意味をなさないことも多いのです。これは無駄としか言えませんね。

さらに、若手が入社してきて、その掟を教えられたとき、どう思うか?ですが、ほとんどの場合「なんの意味があるのか先輩は教えてくれなかった」というネガティブな印象を持つはずです。それが何個か重なると「この会社、意味がわかんねぇ」という印象に変化してしまいます。こうなってしまうと、辞めるのは時間の問題ですね。

いつまでたっても一人前になれない

また、こんなことも多いはずです。「いつもと違う仕事が来て、普通の仕事の延長で処理していたら、特定の先輩社員から突然怒られた」とか「良かれと思って例外処理をやっていたら、先輩に叱られた」といったことです。または、入社してもう1年以上経過するのに「週に1回は経験したことがない仕事が降ってきて、先輩に聞かないと処理できない。でも先輩と相性が悪く、できれば話をしたくない。」というケースも多いと思います。

これらは、例外作業が多い・標準と例外業務の区別があいまいな企業でよく発生する事象です。例外的な作業をどう処理するのか、過去に特定の限られた社員だけで処理の仕方を決めてしまい、それが標準化されることなく特定の人の頭の中に入ってしまう、といった属人生がこれらの遠因となっています。

こうなってしまうと、いつまでたっても先輩に聞かないといけない、ということになってしまい、せっかくモチベーションをもって入社した人にとっては、大きくプライドを傷つけられます。これも離職を招く事態ですね。

定着率の悪化は製造業でどうして発生しやすいのか?

これらの事象は、製造業に特有といってもよいぐらい、様々な製造業で発生しています。その理由は「業務プロセスの長さと複雑さ」にあります。例えば卸売り業であれば「仕入れ、在庫、販売」という基本プロセスでビジネスを回すことが可能です。業務プロセスもあまり複雑化はしません。短くてシンプルな業務プロセスを効率よく回すことができれば、業務はスムーズに回ります。

ところが製造業では状況が様変わりします。基本業務も「仕入れ、製造、在庫、販売」という形に変化し、製造には時間がかかるので前後の業務との関係性も複雑化します。さらに、製造工程にはつきものの不良の発生といった事象もありますので、100投入しても100製品になりません。歩留まりの管理や、実績に応じた製品在庫計上などの処理が必要となります。つまり「製造業は業務プロセスが長い」ということになるのです。

したがって、熟練の従業員の頭の中にあるプロセスで回すことが多くなってしまい、前記のようなストレスフルな業務になってしまうわけです。

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これらを解決するためには、ある一定規模の会社になっている以上、業務プロセスの可視化と分析、業務改善のPDCA回転が必須です。業務をスマートなものとし、属人生を解消して誰でもヘルプに行けるようにし、残業や休日出勤、特定の人への業務負担集中を解消してゆかねばなりません。また、Z世代のモチベーションを維持し定着率を高くするためには、ソフトができることなら全部ソフトにやってもらう、というデジタル化が進んでいなければなりません。彼らはクリエイティブ能力の面においては、過去世代の人たちよりもずっと敏感で合理性を好む傾向にあると思います。そのような人たちに嫌われる業務をやっていれば、おのずから結果は見えている、というものです。業務プロセスの複雑化は、他の業種でも起こりえます。ぜひ、皆さんも業務をみつめ、今回取り上げたような不具合やら困りごとが発生していないか点検されることをお勧めします。

当社ベルケンシステムズ(株)では、業務可視化支援をはじめとする様々なコンサルティングサービスプランをご用意しております。ご興味があれば是非当社ホームページをご覧ください。

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