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信頼で高単価受注を勝ち取る ~信頼で、高価格でも受容される理由を作る回路②~

SPECIAL

トラスタライズ=信頼を対価に変えるコンサルタント

トラスタライズ総研株式会社

代表取締役 

企業の「信頼を対価に変える」専門コンサルタント。独自の「トラスタライズ手法」を用いて、見えない信用や信頼を、目に見えるカタチに変え、対価へと変えることで多くの経営者から注目を集めている。企業経営において社会・顧客双方の価値の創出が求められる時代にあって、「信頼」を切り口に、顧客企業が売上・利益を向上させられる手法の研究・提言を行っている。


「品質も悪くない。誠実にやっている。サステナや脱炭素にもできる限り取り組んでいる。
それでも最後は、どうしても価格の安い方に流れる」

信頼や誠実さを大切にする会社・経営者であればあるほど悩みがちなこの問題。直近の当コラムでも、信頼を実利に変えるためにはいくつかの「回路」を意識して整理する必要がある、というテーマを取り上げています。

今回は2つめの回路として、「価格アップ」に焦点を当てます。この回路②で扱うのは、主要顧客に価格だけで判断されがちな状況や、価格が安いだけの競合が幅を利かせているといった中で、どうすれば信頼を「高い価格でも受容できる理由」に変えられるのか、という問いです。


■なぜ、低価格の壁を越えられないのか

よいものを作っている、よいサービスを提供している、会社として真面目に誠実に取り組んでいる。しかしその価値が伝わらず、価格交渉が難航してしまう。

このような場合、あなたの会社や製品・サービスに価値がないものではなく、価値の置きどころや伝え方がズレているケースが少なくありません。

品質、誠実さ、サステナビリティ、社会貢献・・・
信頼につながる要素は数多くありますが、いずれも放っておくと、「良いこと」「安心材料」というレベルで止まってしまい、肝心な価格への反映が限定的なものになりがちです。そうなると、そのような善い取り組みが追加コストとなり、やがて廃れてしまいます。

それを防ぐには、なんとかして価格アップにつなげる必要があります。つまり、「信頼から価格への変換」です。回路②では、その可能性を次の視点で順番に考えていきます。


第1候補:まず、直接的な実利に変えられないか

最初に検討すべきは、信頼が直接的な実利に変わらないか、という視点です。

ここで重要なのは、「価値があること」そのものだけではなく、
価格差をどこで回収できるかが具体的に見えることです。

例えば、

  • 設計・診断・要件整理に時間をかけている
  • 工程やチェックを通常より多く入れている
  • 経験者しか対応させていない

といった話は、売り文句としてよく聞かれます。しかしこれを「当社の製品は品質が高い」で止めてしまうと、価格の話に効いてません。

実利として認識してもらうには、

  • その設計があることで、後工程の手戻りがどれくらい減るのか
  • 初期判断が正確になることで、やり直しや追加対応がどれくらい避けられるのか
  • 結果として、顧客側の工数や調整負荷がどれくらい下がるのか

といった「顧客側で起きる変化」に置き換える必要があります。

サステナや脱炭素も同じです。
それ自体を売りにするのではなく、

  • 特定の顧客や案件で、参加条件・評価条件として実際に効くこと
  • それに対応していることで、選択肢から外れずに済む案件があること

といった形で、「実際に得られている実利」に変換できるかどうかがポイントです。
ここまで落とせると、信頼が価格差の説明に使える材料になります。


第2候補:実損リスクを減らす要素として整理できないか

直接的な実利が弱い、あるいは言い切れない場合には、次の方向性での説明の道を探ってみましょう。その可能性のひとつが、他社ではなく自社を選んでもらうことによる「実損リスクの軽減・回避」です。

顧客が高い価格をためらう理由は、「高いから」だけではないかもしれません。通常、価格が高くなればなるほど、「失敗したときのリスク」は大きくなります。

あなたの会社や製品・サービス信頼が信頼に値し、その結果多少の高価格も妥当であると思ってもらうためには、この「失敗した時のリスク」が小さいことを示すのも1つの手です。

  • 想定外が起きたとき、どう扱われるのか、保証はあるのか
  • 条件がズレた場合、どう合意し直すのか
  • 追加費用や責任の境界が、どこで切られているのか

といった点を、事前に整理して明確に伝達できれば、リスクが小さいことを価値ととらえてもらえる可能性があります。

例えば、

  • 現場条件が変わった場合の再見積りルール
  • 仕様変更が出たときの判断フロー
  • トラブル発生時の初動(対応者・時間・範囲)

こうした点が整理されていると、
顧客は「価格は多少高いが、最悪のケースは回避できる」と判断できます。

また、基本姿勢として不正など顧客を裏切る行為をしない、ということを示すためには、サステナや脱炭素に力を入れていることも、一定の効力を持つでしょう。

ブランドの確立された大企業であれば、裏切りによるイメージの失墜のダメージは大きいので、意図した裏切りのリスクは非常に小さいといえます。しかし、名前の知られていない中小企業が、紹介などもなく新規に取引をしようとする場合には、社会に貢献しようとする姿勢を明示することは、相手に信頼感を与える一助にはなりえます。

取引に際し、すべてのリスクをゼロにすることはできませんが、いざ発生したときのダメージを減らせることがわかっていれば、価格差は「保険」に近い意味を持ち得るのです。


第3候補:非財務的な価値を、顧客の方針に接続する

上記でもなお価格差を説明しきれない場合、次に試すべきは非財務的な価値の視点です。

ただし、世間一般でいうような非財務的価値をそのまま伝えるという話ではありません。
重要なのは、顧客企業がすでに掲げている社会的な約束や方針に、自社の製品・サービスを購入頂くことで貢献できるという考え方です。

特に大企業の場合、その多くが調達方針、ESG方針、サステナビリティ方針といった形で、
「こういう会社と付き合いたい」「こういう姿勢を大事にしたい」という基準を、すでに外部に示しています。

しかし、実際に交渉にあたる購買担当者が日常的にそれを強く意識しているとは限りません。だからこそ、

  • 相手企業の社会的な約束や方針のどの記載に
  • 自社の取り組みが
  • どう適合し、どう貢献できるのか

をこちら側が具体に示せると、相手側に価格以外の検討軸を1つ増やすことができるかもしれません。逆に言えば、これを無視することはその担当者にとってのリスクになりえます。

例えば、多くの大企業が方針として掲げている脱炭素の取り組みであれば、

  • 対象範囲(どこまでか)
  • 定義(何をやっているのか)
  • 対象範囲(どこまでの取り組みなのか)
  • 効果(どれぐらいの効果があるのか)
  • 改善(今後さらにどのように良くなっていくのか)

こうした点を明確に伝えることで、仮に他社も同じような訴求をした際にも違いを出すことができます。


■直接言い切れない価値は、顧客側での検討に持ち込む

ここまで述べた3つのポイントは、信頼を高価格の理由として返還するための着眼点です。できればいずれも定量的に、顧客側の金銭的価値に置き換えて伝えるのが望ましいのですが、現実には、こちらから断定的に言えない場面も少なくありません。

たとえば、

  • 本当にどこまで実利が出るかは、条件次第で変わる
  • どれだけリスクを減らせるかは、起きてみないと分からない
  • 非財務の価値は、感じ方や評価軸が企業ごとに異なる

こうした場合、効果の伝達は難しいですし、無理に言い切ろうとすれば信憑性を損ねてしまいます。

そんなときは、シミュレーションの話や他社事例でもよいので、自社製品・サービスを利用することで、これだけの効果があった、ということのみを示すようにします。そして、顧客自身が自社のケースを検討してみようと思える状態をつくることを目指します。

具体的には、

  • 他社事例や過去事例を示し、同じ条件ならどうなるかを想像できるようにする
  • 数値や前提条件を開示し、顧客側でシミュレーションできる材料を渡す
  • 判断に必要な論点を整理し、「どこを比べればよいか」を明示する

要は、見た目の価格以外の点を顧客の検討のテーブルに載せることが大切ですので、上記のような検討に顧客が興味を持つ状態をぜひ作っていきたいところです。


■それでも価格だけを見る顧客を、どう捉えるか

ここまで整理しても、なお「価格だけ」を基準にする顧客は存在します。それ自体を否定する必要はありませんが、自社にとって本当にその顧客との取引に軸を置き続けるべきかは冷静に捉える必要はあります。

価格のみで判断する顧客は、短期的な取引には向いていても、長期に共存共栄を図るパートナーになりにくいケースが多いのも事実です。

その場合、

  • 今すぐに無理に分かり合おうとしない
  • 時間をかけた価格交渉の余地を残す
  • あるいは、価値観を共有できる新たなパートナーを探す

といった選択肢を、経営判断のひとつとして持っておくことも重要でしょう。

 

信頼は、それだけでは価格アップにはつながりません。しかし、実利、実損回避、方針への適合といった点を通して整理されると、「それでも買うべき理由」として意味を持ち始めます。信頼と高価格との間の変換を、具体的ロジックをもって積み上げていくのが、信頼から実利を得るためのカギといえるでしょう。

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