第86号:受注型事業において、高価格拡販に必要な「見込み型発想」とは?
「シライ先生、自分たちで売上をコントロールできるって、大きな安心材料ですね」こう仰るのは、設計業を営むR社長です。
卓越した技術力でこれまで造形設計を行ってきたR社長は、ここ数年、売上が安定しなくなっていることに危機感を覚えています。
発注元の拠点移動や方針の転換などの影響を、ここ数年とくに色濃く受けている状況です。仕事の中身自体は絶えず品質向上を図っているものの、それが市場に接続されていないような感覚を覚えています。
これはR社に限らず、多くの「受注型事業」が経験することです。
受注型事業とは、事前に「売りモノ」の仕様と価格が決まっていない形態の事業で、加工業や設計業など数多くの業態があります。
対比になるのが「見込み型事業」です。これは事前に「売りモノ」の仕様と価格が決まっている形態の事業で、完成品メーカーやそれを扱う小売業など、これまた多くの業態があります。
高価格化はどちらの事業形態でも狙うことができますが、特に受注型事業を運営される経営者にとって、押さえておかなければならないことがあります。
1.顧客から見た高価格化の条件
顧客が高価格を受け入れる最も根本的な条件は、その売りモノが「独自市場を形成しているかどうか」です。要するに、「ここは他とはこう違うよね」と認識されていることです。
価格決定のメカニズムはただ1つ、需要と供給のバランスです。ある「市場」のなかにいる買い手と売り手の数的バランスで、価格は決まります。
極端な話、もし世の中の会社が皆同じものを提供していたら、価格は限界まで下がります。逆もまたしかりで、提供している会社が1社しかなければ価格が上がります。
つまり、どんなモノや技術を提供していようとも、高価格で儲けるご商売に変えていきたければ、「独自の市場作り」をしなければならないということです。市場作りとは、別の言い方をすれば、独自の顧客を創造する、ということです。
と申し上げると、「市場作りなんて大手さんがやることではないのか?」とお感じになる方も多いのですが、そうではありません。重要なことは、「大きな市場をつくること」ではなく、「独自の市場をつくること」なのです。
「設計業」や「加工業」という大きな単位で市場を括れば、それは大手さんには適わないでしょう。発注元からは他の同業と比較され、受注価格や受注量も安定しなくなります。
しかし、「自社がやってきた取り組みや考えてきたこと」をもとに市場を作る(独自性をもって発注元顧客を創る)のであれば、大きな市場にはならなくとも、独自の市場になる可能性は高いわけです。発注元から「R社でなければならない理由で発注される」状態です。そして、これこそが高価格を顧客が受け入れる条件だということです。
しかし、ここで問題になるのが、受注型事業という業態そのものが、こうした「独自市場作り」を難しくしやすい構造を持っている、という点です。
2.受注型事業ゆえの、独自市場の作りにくさ
ここで、先ほどお話した受注型事業の特徴を思い出してください。「事前に売りモノの仕様と価格が決まっていない」のが受注型事業です。事前に売りモノの仕様と価格が決まっていないということは、売りモノが発注元との協議を経て決まるということです。
つまり、受注型事業での市場開拓は、事前に詳しく説明できる売りモノがない状態、いわば「透明の売りモノ」を売っているのと同じで、一言で言えば、見込み型事業に比べて非常に拡販しにくいうえ、容易に価格低下圧力にさらされやすいのです。
なぜなら、受注型は本質的に「引き合い後の打ち合わせを経て売りモノ(仕様や価格)が決まる」という性質ですので、引き合いが来るまで「我が社の売りモノ」の説明をしにくいからです。
これは「見込み型事業」と対比して考えて頂くと、よく分かると思います。見込み型事業であれば、予め「価格」「仕様」「形」の決まった売りモノがあります。
つまり、この売りモノは「こんな時に活用できます。こんな効用があります。こんなオリジナリティがあり、お値段はいくらです」という“説明”を、売りモノを見せたり体験してもらったりしながら説明できるのが、見込み型事業です。
要するに、見込み型事業は、売りモノを、お店、展示場、WEBといった媒体を通じて広く説明することが容易な形態だということです。顧客も、それを買うかどうかの判断を容易にでき、買うための細かい打合せややり取りをすることも殆どなく、買う手間も少なく済みます。
受注型事業が販売計画を立てにくく、計画的な受注が難しい理由は、この根本的な売りモノの性質の違いから来るのです。そして、「待ちの姿勢」や「発注元の都合に左右される」ということになりやすく、自社で受注をコントロールしにくくなるのです。
3.受注型事業を、見込み型事業のように仕立てる
では、受注型事業が、受注計画を立て、計画に基づいて一定確率で受注を確保していくにはどうしたらよいか?
それは、「見込み型事業のエッセンスを現在の受注型事業に取り入れること」です。相対的に売りやすさに分がある、見込み型事業の特長を付け加えるのです。
受注型事業が独自の市場作りをしにくいのは、事前に売りモノが定まっておらず、広範な説明ができない点にあります。これを、見込み型事業の如く、「仕様や価格が付いた商品であるかのような売りモノ」として、広く説明できる状態にしていくのです。
この違いは、営業資料の考え方にも現れます。受注型事業をなさる会社の多くは、「会社案内」を作成しています。受注型の性質上、会社の生産体制や信用度といったもののアピールが重要になるからです。
しかし、見込み型事業を営む会社は、「会社案内」に重きを置いていません。代わりに、「商品カタログ」を重視します。顧客も、会社そのものより商品の方に興味があり、重視しているからです。
受注型事業の場合、商品が見えません。もちろん、R社が設計や加工をすることで具体的なモノは生まれますが、それは「発注元の商品」であり、自社の商品ではありません。
しかし、R社にも商品として見せられる要素はあります。それは、R社の持つ技術や対応力、思想や拘りといった、事業の中で蓄積された有形無形の資産です。
問題は、それらが商品として見えておらず、商品として説明できる状態になっていない、ということです。つまり、顧客から見て「事前に選べる状態」にまで整理されていない、ということです。
それを、自社の技術や拘りに、あたかも「価格と仕様」が付いていて、「商品カタログ」や「WEB販売」で展開しやすいような形に整えられており、顧客が「なるほど、それは他所にはないね。では1つください」と言えるような形として展開できるようにしていくこと。
これにより、見込み型事業が商品流通をさせるが如く、市場に対して「説明可能な商品」を流し込むことが可能となります。
つまり、「発注元企業の都合」で受注計画が絵に描いた餅になるのではなく、見込み型事業のように「こういう活動をすると、こういう確率で売れていく」という再現性ある科学的な活動が可能になるのです。
厚利安定化を目指すには、絶えず価格に納得して頂ける顧客に、自社の顧客構成を入れ替えていく必要があります。
受注型事業で利益と現預金目標を達成していくには、既存販路の収益構造の他に、このような「見込み型展開による高粗利での拡販の収益構造」を二階建て式に組み込むことで、会社全体の粗利を徐々に上げていくことが可能です。
今回は「受注型事業」の厚利拡販のポイントをお伝えしましたが、「見込み型事業」においては、「受注型事業」のエッセンスを取り入れることで、厚利拡販を加速させることが可能です。これはまた別の機会にお伝えします。
貴社も、高粗利型の新たな収益構造と、これを実現する高粗利拡販の仕組みを手に入れませんか?
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