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ハノーバーメッセ2026より 産業用ヒューマノイドはケンタウロス型が本命か?

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

前回、前々回に引き続き、ハノーバーメッセで得た情報から考察します。メッセでは、大量のヒューマノイドが展示されていましたが、場所が場所なだけに当然その大半は「産業用」です。この産業用のヒューマノイドと、現在ちまたで騒がれているヒューマノイドは大きな違いがあります。今回はそのお題です。

カンフーや獅子舞を踊り狂う、マラソンを人間より早く走る…。これは最近ニュースで話題となっています。登場するヒューマノイドはほぼ中国製です。これだけを見て「ヒューマノイドはすごいな」というニュースになってしまうわけですが、これを産業に使えると早合点するのは事実誤認です。というのも、これらのヒューマノイドは、人間の運動能力を真似ることができる「小脳型のヒューマノイド」だからです。私は脳科学者でも医師でも無いので、正確なことは言えませんが、人間を始めとする動物が持っている運動能力のうち、本能的な動作については小脳がその指令の役割を担っていると言います。

例えば人間の「歩く」「走る」という動作ですが、路面が荒れていて転びそうならまだしも、まったいらなところでのことなのであれば、何も考えずに本能だけで移動することができますよね。「転ばないように走る」とか「均一の速度で歩く」などの動作は、何も考えなくとも人間にできる行為です。

それと同じことで、カンフーや獅子舞を踊っているヒューマノイドは、人間の踊っているところを機械学習し、同じことができるように開発されているのです。

踊ったり走ったりだけができるヒューマノイド…、皆さん欲しいとは思いませんよね。全然実用的ではありません。極端に言えば、「投資を集めるための客寄せパンダ」と捉えた方が良いでしょうし、マーケティングツールとしての側面もあると思います。これらのヒューマノイドは身長も人間の平均よりも低いものが多く、人間用の工場設備の中で作業に使おうとすると、かなり限定的な使い方しかできません。

ここで「では、もっと人間と同じぐらいのサイズで二本脚のヒューマノイドにすればいいのでは?」と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、これも産業用としてはなかなか厳しいのです。二本脚で立って動き回るヒューマノイドは、そもそも姿勢の制御に莫大な計算リソースを使うわけで、その分だけ電力消費も大きく、バッテリー駆動時間が短くなります。連続稼働時間が短いということは、産業現場の労働力としてはかなり都合が悪いです。さらに、重量物を持たせると簡単にバランスを崩して転倒してしまうリスクがあります。転倒すれば本体の損傷リスクも大きいですし、現場で人間の作業者が「あれ、また転んだ」と気を遣いながら見ていなければなりません。これでは何のために導入したのかわからなくなってしまいます。

そこで、産業用としてきちんと考えられているヒューマノイドは、二本脚を捨てて「ケンタウロス型」、つまり半身半馬の形態を取るものが多いのです。実はこれ、決して目新しい発想ではありません。海外ではNASAの「Centaur」ロボットや、イタリア技術研究所(IIT)の「CENTAURO」など、産業用や災害対応用の「ヒューマノイドの最適形態」として早くから研究されてきた形態です。人間そっくりの上半身は装備されていますが、下半身は脚ではなく4輪で走行する、というのが典型例でしょう。四輪であれば、転倒しにくいですし、後ろに荷台スペースを作れば、そこそこの重量物まで台車として運搬可能となります。また、「上半身」に相当する部分を上下させるような構造にすることも簡単ですので、高いところのものを取ってくる、といった用途にも便利です。作業台の高さも、人間に合わせて作ったものに両腕と頭の高さを合わせることが可能なので、組立や検査などの用途でも便利です。

つまり、「産業用に特化したヒューマノイド」は、二本脚にこだわらず、ケンタウロス型になるのが必然的なのです。

こう考えると、そのようなヒューマノイドに任せるべきことのアイディアが、どんどん湧いてきませんか?例えば、部品ピッキング作業です。倉庫や工場内で部品棚から指定された部品を取り出し、自分の荷台に乗せて目的地まで運ぶ、という一連の流れが、ケンタウロス型なら単機で完結します。例えば、梱包作業です。重い製品を箱に入れる、緩衝材を詰める、テープで封をする、といった工程も、上半身の両腕と、安定した四輪ベースがあれば、人間より長時間、休みなくこなしてくれるでしょう。例えば、重量物の運搬作業全般です。人間がやればハードワークになりがちな仕事を、ケンタウロス型に代替えしてもらえるわけです。

ただ、四輪走行となるので、現場の床や通路のサイズには気を配る必要は出てきます。床面は十分に平滑でなければなりませんし、ある程度通路の幅も必要です。それでもたいていの現場では十分に対応できるのではないでしょうか?わざわざ二本脚で移動させるような必要性は思いつきません。

そして、ここが重要なのですが、ケンタウロス型ヒューマノイドは、二本脚歩行型に比べて圧倒的に技術的ハードルが低いのです。二本脚歩行はバランス制御という極めて難しい技術が必要で、これは今でも研究テーマです。一方、四輪走行であれば既存のAGV(無人搬送車)の技術がそのまま使えますし、上半身のロボットアームも日本の産業ロボットメーカーが何十年も得意としてきた領域です。つまり、ケンタウロス型は既存技術の組み合わせで十分に作れる、ということです。これは、二本脚歩行ヒューマノイドより圧倒的に早く実用化が進むはずだ、ということを意味します。何かの測定とか計測機器の数値を読んで回る、といった用途も、四輪の安定性があればすぐに実現可能でしょう。

このコラムでも何回か意見表明していますが、ヒューマノイドは夢の存在ではなく現実です。そして、産業用としての本命はケンタウロス型である、というのが私の見解です。たとえ初期は「遅い・精度が低い」といった不満があったとしても、今から使い続けることによってイノベーションを起こすことができる、というメリットが出てくると思います。速度や精度はおそらく短期間で飛躍的に向上するでしょう。その時になってはじめて検討を開始するのではなく、今のうちから「可能な仕事」に使い始め、ケンタウロス型ヒューマノイドをフル活用する現場に変えてゆく。これが日本の産業界復権の決め手になると私は思っています。ヒューマノイドを使い倒すためには、「データがロボットから見えるようにする」必要があります。その準備は諸外国に比べデジタル化が進んでいない日本企業にとっては生半可なものではありません。「ヒューマノイドが良くなってきたら使うことを考えよう」では競争に遅れてしまい、遅すぎるのです。

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