友は選ぶものと知れ

今日は私の子どもたちに人間関係の機微を話しておこう。
第2話
【友は選ぶものと知れ】
私は昭和31年生まれ、現在69才だ。私が小学生のころ、昭和30年代後半から40年代前半の話。
当時、今から思えば、日教組が最も勢いがあったころのこと。私の小学2、3年生の担任女性教師がよく言っていた話がある。
ひとつは、「誰とでも仲良くしなさい」ということ。要は友だちは選んではいけませんということ。
ふたつめは、「少数意見を大事にしなさい」だった。ホームルームでなにか決めるときなど、多数決で決めた後、必ず言っていた気がする。
このふたつの言葉が、後々まで私を苦しめることになる。
誰とでも仲良くしなければと行動した結果、いろいろと大変な目にあった中学での出来事。
少数意見を大事にしなさいという言葉が、誤った経営判断に繋がった経営者時代。
子どものころに教師から言われた言葉がトラウマのように長く私の人生に影響を与えていた。そうじゃないのだと気づくまで本当に長い時間が掛かったものだ。
みんなにはっきりと言っておく。
友は選ぶべきものだ。
少数意見は参考にすればいい。もちろん、私は「人を差別しろ」と言っているのではない。誰に対しても礼節を持ち、思いやりを持って接することは人として当然である。
しかし、誰と親しく付き合うかは別の話だ。人生には限られた時間しかない。その大切な時間を誰と過ごすかによって、自分の人生は大きく変わる。
向上心のある人と付き合えば、自分も向上する。誠実な人と付き合えば、自分も誠実になろうとする。
愚痴ばかり言う人といれば、自分も愚痴が多くなる。他人を責める人と付き合えば、自分もいつしか責任を人のせいにするようになる。人は思っている以上に周囲から影響を受けている。
だから友は選ばなければならない。
『論語』に「益者三友、損者三友」という言葉がある。付き合えば益となる友が三つあり、付き合えば害となる友が三つあるという教えだ。
誠実な人。
正直な人。
知識や経験を分かち合ってくれる人。
そういう友は人生を豊かにしてくれる。
一方で、口先ばかりの人。
人をおだてるだけの人。
調子の良いことばかり言う人。
そういう人と付き合えば、自分まで道を誤ることになる。
これは経営者になってから、私は身をもって知った。経営者の周りには、実に多くの人が集まってくる。
耳あたりの良いことばかり言う人。
何でも社長の言うことに賛成する人。
そんな人ばかりを近くに置けば、会社は必ずおかしくなる。本当に会社を思ってくれる人は、時には耳の痛いことも言ってくれる。
だから友も、側近も、選ばなければならない。
そして、もう一つ。
「少数意見を大事にしなさい」という教えについても、私は長い時間をかけて考え続けた。
少数意見を無視してよいと言っているのではない。むしろ、少数意見の中に大切な気づきが隠れていることも少なくない。だからこそ、まずは真剣に耳を傾けるべきだ。
しかし、聞くことと、そのまま採用することは違う。リーダーは全体を見渡し、組織全体にとって何が最善なのかを判断しなければならない。一人のために百人が困る判断をしてはならない。
反対に、百人の意見だけを見て、一人の切実な声を切り捨ててもならない。その均衡を考え抜くことが、リーダーの役目なのである。
経営とは決断の連続だ。誰か一人を満足させることではなく、多くの人の幸せを実現するために決断する仕事だ。だから時には厳しい判断もしなければならない。その責任を負うのがリーダーなのである。
君たちもこれから多くの人と出会う。友人も、仕事仲間も、人生の師となる人も現れるだろう。だからこそ、誰と歩むのかを大切にしてほしい。
人を大切にすることと、人間関係に境界線を持つことは矛盾しない。誰にでも親切であれ。
しかし、人生を共に歩む友は慎重に選べ。
それが自分自身を守り、自分の人生を豊かにすることに繋がる。私は七十年生きてきて、そのことをようやく心から実感できるようになった。
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