最適なコンサルティングを今すぐ活用する!

「なぜそうするか」が会社を動かす

SPECIAL

循環経済ビジネスコンサルタント

合同会社オフィス西田

チーフコンサルタント 

循環経済ビジネスコンサルタント。カーボンニュートラル、SDGs、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー、社会的インパクト評価などへの対応を通じた現状打破と成長のための対案の構築と実践(オルタナティブ経営)を指導する。主な実績は、増客、技術開発、人財獲得、海外展開に関する戦略の構築と実現など。

 「西田先生、このご提案ならウチはぜひやってみたいと思います。」提案を見た社長が電話の向こうで力強く宣言してくれました。

 

 社長の意思決定は重いものです。最終的にはそれが会社の命運を決めるのです。「何をどうする」が決まればとりあえず仕事は動きます。結果として儲かることが社長に課せられた責務です。

 

 でも儲けが不十分だったら?あるいは市場がだんだん縮小する流れにあったら?

 

 社長がすべきことは明快です。「何をどうする」を工夫して、儲けを伸ばすことです。違う何かを見つける、違う「どうする」をやってみる。結果として儲かることが実現できればそれで良いことになります。

 

 ポイントは、その工夫にみんなが同意してくれるかどうかです。儲かれば良い、では通らないこともあるかもしれません。

 

 ここで社長が語るべきは「なぜそうするか」になります。経営哲学ともいえるこのナラティブが強ければ強いほど、社内のまとまりは強固になります。現実の事例として、怒りのナラティブで誰に対しても事業の重要性を語ることしかしないスタートアップの社長がいます。同社は年率二桁の成長を実現しています。

 

 そう考えると「なぜそうするか」を真剣に探すことから始めるのが重要だということが見えてくるはずです。市場に、顧客に、そして社会に選ばれる何かを提供するビジネスには必ず理由があることを、しっかり肚落ちさせられたなら、ビジネスの成功確率はぐっと上がります。

 

 他方で経営者の皆様とお話ししていると、「何をするのか」「どのようにするのか」については、具体的に説明できる方が多くいらっしゃいます。

 

 新しい製品を開発します。新しい市場に進出します。営業方法を変えます。設備を導入します。大学と共同研究を始めます。こうした方針は、比較的言葉にしやすいものです。

 

 ところが、「なぜそれをするのですか」と尋ねると、答えに詰まってしまうことがあります。

 

 もちろん、「売上を伸ばすためです」「利益を確保するためです」という答えでも、経営上は間違っていません。企業は利益を上げなければ存続できませんし、雇用を守ることも、新しい投資をすることもできません。

 

 ただし、それだけでは社員や取引先、顧客の心を十分に動かせない場合があります。

 

 市場が拡大している時代であれば、売れるものを作り、効率よく供給することで会社は成長できました。しかし、市場が成熟し、似たような製品やサービスが増えた今は、価格や性能だけで明確な違いを示すことが難しくなっています。

 

 そのような時代に問われるのが、「なぜ自社がその事業に取り組むのか」という理由です。

 

 社会のどのような課題を解決したいのでしょうか。顧客にどのような未来を提供したいのでしょうか。自社の技術や経験を、何のために役立てたいのでしょうか。

 

 これらの問いに対する答えが、会社のナラティブになります。

 

 ナラティブという言葉は、一般には「物語」や「語り」と訳されます。ただし、ここでいうナラティブは、会社の歴史をきれいに説明するだけのものではありません。

 

 自社がどこから来て、何を大切にし、どこへ向かおうとしているのか。その一連の流れを、社員や顧客が納得できる言葉で示すものです。

 

 強いナラティブを持つ会社では、社長の意思決定が社員に伝わりやすくなります。

 

 たとえば、これまでとは異なる市場へ進出するとき、社員の中には不安を感じる人もいるでしょう。「なぜ今までのお客様を大切にするだけではいけないのか」「なぜ慣れない技術に挑戦する必要があるのか」といった疑問が生じるのは当然です。

 

 そのときに社長が、「市場が縮小しているから仕方なく新しいことをするのです」と説明しただけでは、社員は前向きになりにくいものです。

 

 一方で、「私たちが培ってきた技術を使えば、これまで解決できなかった社会課題に応えられます。その市場には困っているお客様がいて、私たちが役に立てる余地があります」と語ることができれば、受け止め方は大きく変わります。

 

 同じ新規事業であっても、「追い込まれた結果の挑戦」から「自社の力を社会に役立てる挑戦」へと意味が変わるからです。

 

 冒頭で触れたスタートアップの社長は、社会に対する怒りを事業の原点としていました。なぜ、この不合理が放置されているのでしょうか。なぜ、困っている人がいるのに、誰も解決しようとしないのでしょうか。自分たちが動かなければ、この状況は変わらないのではないでしょうか。そのような強い問題意識が、社長の言葉を通じて社員に共有されていました。

 

 怒りというと、否定的な感情に聞こえるかもしれません。しかし、その怒りが誰かを攻撃するためではなく、社会をより良く変えるためのエネルギーとして使われるのであれば、会社を動かす大きな力になります。

 

 社員は単に売上目標を達成するために働いているのではありません。自分たちの仕事によって、これまで放置されていた問題を解決しようとしているのです。

 

 その意味が共有されているからこそ、会社はまとまり、年率二桁の成長を続けることができているのでしょう。これは、スタートアップだけに当てはまる話ではありません。

 

 長い歴史を持つ中小企業にも、必ず「なぜこの会社が存在しているのか」を説明する材料があります。創業者が解決しようとした顧客の困りごとがあったはずです。地域の産業を支えてきた経験があるかもしれません。長年積み重ねてきた技術や、社員が大切にしてきた仕事への姿勢もあるでしょう。それらを丁寧に掘り起こしてゆくと、新しい事業に取り組む理由が見えてきます。

 

 社会課題やSDGs、脱炭素、サーキュラーエコノミーといったテーマについても、考え方は同じです。流行しているから取り組むのではありません。取引先から求められたから、仕方なく対応するのでもありません。

 

 自社の技術や事業を通じて社会課題を解決し、その結果として新しい顧客を獲得し、利益を生み出してゆくのです。

 

 社会に良いことをすれば、企業は利益を上げてはいけないということではありません。むしろ、利益が生まれる仕組みにしなければ、取り組みを長く続けることができません。

 

 社会に必要とされ、顧客に選ばれ、会社にも利益が残る。この三つが重なる事業を作ることが、経営者の仕事ではないでしょうか。

 

 その出発点になるのが、「なぜそうするか」という問いです。すぐに立派な答えが見つからなくても構いません。まずは社長自身が考え、自分の言葉で語ってみることが大切です。

 

  • なぜ、この事業を続けているのでしょうか。

 

  • なぜ、今この課題に挑戦するのでしょうか。

 

  • なぜ、自社でなければならないのでしょうか。

 

 その答えが社員の心に届き、顧客にも納得してもらえるようになったとき、会社の取り組みは単なる商品やサービスの提供ではなくなります。

 

 そこには、社会から選ばれる理由が生まれます。「何をどうするか」は、経営を動かすために欠かせません。しかし、「なぜそうするか」がなければ、その動きは長続きしないかもしれません。

 

 会社の未来を決める新しい一手を考えるときには、手段や数字を検討する前に、まずその理由を深く掘り下げてみてください。

 

 強い「なぜ」は社員を動かし、顧客を引き寄せ、会社の進む方向を明確にします。そしてその先には、社会に良いことを実践しながら、ビジネスとしてもしっかり成功する道が開けているのです。

コラムの更新をお知らせします!

コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。