親子関係だけでなく兄弟姉妹の関係もまた厄介だ

今日は私の子どもたちに人間関係の機微を話しておこう。
第6話
【親子関係だけでなく兄弟姉妹の関係もまた厄介だ】
親子の関係が厄介なのは、これまで幾度も話している。それには理由があるという話もしたことがある。もう一度簡単に話しておこう。
それは親と子の間に確執ができることが多いからだ。ではなぜ親子の間に確執ができるのか。究極的な話をすると、親が我が子に執着するからだといえる。親が我が子を自分の所有物だと思い、自分とは違う人格を持った他者だと思えないからだ。
ところで、私のように親子経営企業のコンサルタントをしていると、親子関係だけでなく、もうひとつの厄介な関係が問題となることがある。
それは、兄弟姉妹の関係だ。兄弟姉妹にもいろいろな理由から確執ができることがある。兄姉が弟妹を慈しみ、弟妹が兄姉を慕う関係ができておれば、なんの問題もない。現実には兄弟姉妹が互いになにかを競い、奪い、争うことが多い。
親子関係、兄弟姉妹の関係はこのようにとても厄介である。
私はこれまで、親子経営企業を数多く見てきた。そこで気づいたことがある。兄弟姉妹の確執というものは、表面に出ている問題だけを見ても、本当の原因は分からないことが多いということだ。
子どもの頃からの積み重ねがある。「あの時、兄だけ褒められた「妹ばかり可愛がられていた」「自分はいつも我慢させられた」「兄だからという理由で、何でも任された。」そんな小さな出来事が、長い年月をかけて心の中に積もっていく。
そして大人になり、会社の経営や財産、親の介護など、現実的な問題が出てきた時に、それまで心の奥にしまっていた感情が一気に噴き出す。だから厄介なのだ。
会社の問題を話しているはずなのに、いつの間にか子どもの頃の話になっている。経営の話しをしているのに、「兄さんは昔からそうだった」という話になる。私はそんな場面を何度も見てきた。
兄弟姉妹とは、それほど長い時間を共有してきた関係なのだ。だから、簡単には割り切れない。
他人なら、「嫌なら付き合わなければいい」で済む。しかし兄弟姉妹となると、そう簡単にはいかない。親がいる。家がある。会社がある。財産もある。
そして何より、同じ親から生まれたという事実が一生ついてくる。だから私は、兄弟姉妹だから仲良くしなければならないとは、あえて言わない。仲良くできれば、それに越したことはない。
しかし、それ以上に大切なのは、互いを一人の人格として尊重することだと思っている。兄は弟の人生を支配してはいけない。弟は兄の人生を羨み続けてはいけない。
姉は妹をいつまでも子ども扱いしてはいけない。妹も姉に対して、いつまでも過去の不満を抱き続けてはいけない。
それぞれが、それぞれの人生を生きる。そのうえで、困った時には助け合う。それくらいの距離感が、案外ちょうどいいのかもしれない。
そして、親子経営ではもう一つ大切なことがある。兄弟姉妹を会社の中で平等に扱うことと、公平に扱うことは違うということだ。
能力も経験も役割も違う者を、単純に「兄だから」「弟だから」と同じように扱えば、かえって不公平になることがある。大切なのは、それぞれに相応しい役割と責任を与えること。そして、その理由をきちんと説明することだ。
現実に私の顧問先の1社に兄が副社長、弟が社長という会社がある。先代である父親がそうすることを決断したのだ。兄弟それぞれの性格と能力の違いを考慮した上でのことだ。まさに苦渋の決断であったことだろう。
親が説明を怠れば、兄弟姉妹は勝手に想像する。「親は兄の方を評価している。」「どうせ私は期待されていない。」そんな思い込みが、やがて確執へと変わっていく。だから親もまた、子どもたちを一人ひとりの人格として尊重しなければならない。
幸いなことに私の顧問先では、兄弟が互いの能力の違いを認め合い、互いのポジションでの役割と責任を上手く果たし合っている。特に兄が弟の能力を素直に認め、譲る気持ちを持てたことが大きい。
親が兄弟姉妹を比較しないこと。これも大切だ。「お兄ちゃんはできるのに、お前は……」「妹の方がしっかりしている。」そんな言葉は、親にとっては何気ない一言でも、子どもの心には長く残る。
人間関係の難しさは、言葉にした側と受け取った側で、その意味がまったく違うところにある。だから君たちには、兄弟姉妹だから分かり合えると思わないでほしい。兄弟姉妹だからこそ、言葉にして伝える。
感謝しているなら、感謝していると言う。悪かったと思うなら、素直に謝る。それだけでも、関係は大きく変わる。
家族だから何を言っても許される。家族だから分かってくれる。それは、実は一番危険な考え方なのかもしれない。家族であっても他人である。他人であるからこそ、敬意が必要なのだ。
私は親子経営の仕事を通して、このことを何度も教えられてきた。親子も兄弟姉妹も、近過ぎるからこそ難しい。だからこそ、相手を自分の思い通りにしようとしないこと。
相手の人生は相手のものだと認めること。そして、血のつながりに甘えず、互いを一人の人間として尊重し認め合うこと。
これが家族の人間関係を壊さないために、私が君たちに伝えておきたいことなのである。
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