廃棄物を「利益」に変える経営
「西田先生、それは重要な視点だと思います。」
知己の大学研究者と、廃棄物削減に関する問題意識について議論していたときに先方がもらしたコトバです。廃棄物削減の先にある収益性改善を可視化する、私が考えていたのはそんな取組みをどうやったら経営者に上手く伝えられるか、ということでした。
製造業でもリサイクル業でも、あるいはレストランや飲食でも、およそ現場を持っているビジネスでは日々そこで生まれる廃棄物を処理しています。そこで発生するコストは当然の経費として処理されてゆき、売上と総原価との差異が損益として追求されてゆきます。
この考え方にどこか間違いがある、というわけではありません。でも、サーキュラーエコノミーの考え方に立ち、廃棄物として失われている価値に気づくとき、そこには新たな収益機会がはっきりと見えてくるのです。
前回、LCAの実施によって見えなかった収益機会が見えてくる、というお話をしましたね。今回はその収益機会を数値として可視化する手立てのお話をします。
まず考えていただきたいのは、皆さんの会社で廃棄物のために年間いくらのおカネを使っているか、ということです。
廃棄物処理費は業種や工程によって大きく異なりますが、売上高に対して数%程度の負担になっている企業は決して珍しくありません。仮に売上10億円の会社で、廃棄物に関連するコストが売上の2%だとすれば、それだけで年間2,000万円です。
「それなら、2,000万円を半分にできれば1,000万円儲かるという話ですね」
そう考えたくなりますが、実は話はもう少し面白いのです。なぜなら、捨てているものには「捨てるためのおカネ」だけでなく、「そこまで作るために使ったおカネ」も含まれているからです。
製造業であれば、廃棄物になる原材料を買った代金があります。それを加工するための電気代や燃料代、人件費もかかっています。飲食店であれば、食べ残しや調理くずの処分費だけでなく、仕入れ代金や調理に要したエネルギー、そこに投入した人手もあります。
せっかくおカネをかけて作ったものを、最後にはさらにおカネを払って捨てているー
そう考えると、廃棄物は単なる「処理費」ではないことがお分かりいただけると思います。廃棄物とは、会社の中で生み出した価値の一部が、売上になることなく外へ流出している姿でもあるのです。
実はここに収益機会があります。少し見方を変えてみましょう。会社に入ってくる原材料やエネルギーを入口から追いかけて、それがどの工程を通り、最終的に製品として売上につながったのか、それとも廃棄物として外へ出ていったのかを分けて考えます。
そして、廃棄物になった側にも、それまでに投入された原材料費、エネルギー費、加工費などを割り当ててみるのです。
すると、今まで「廃棄物処理費」という一つの経費項目にしか見えていなかったものが、全く違う姿で見えてきます。
たとえば100万円分の原材料を投入し、そのうち10万円分が最終的に廃棄物になっていたとします。その10万円には、すでに加工のためのエネルギーや人手も投入されています。さらに最後には処分費までかかります。
つまり経営上、本当に注目すべきなのは最後の処分費だけではない、ということです。「売上にならなかった10万円分の原材料に、会社はいくらのおカネを追加投入していたのか?」→まさにこちらを見なければいけないのです。
逆に言えば、その流出を減らすことができれば、原材料費が減り、加工に必要なエネルギーや作業も減り、最後の廃棄物処理費まで減ります。しかも多くの場合、これは売上を一円も増やさずに実現できる利益改善です。そう、ここが大切なのです。
1,000万円の利益を新しい売上から生み出そうとすれば、粗利率20%の事業なら5,000万円の追加売上が必要になります。新しい顧客を探し、営業を行い、製造やサービス提供を増やして、ようやく得られる利益です。
ところが、これまで価値として認識されていなかった「捨てていたもの」から同じ1,000万円を生み出せるのであれば、経営者から見た景色はずいぶん違ってくるのではないでしょうか。
サーキュラーエコノミーというと、どうしても「環境のためにリサイクルをする」という話に聞こえがちです。でも経営という視点から見ると、私は少し違う捉え方ができると思っています。
会社の中を流れているモノとおカネを一緒に追いかけ、「価値を生まないまま外へ出ているもの」を見つけ、それをできるだけ価値に戻してゆく。その結果として廃棄物が減り、環境負荷が下がり、同時に会社の利益も増える。
こう考えれば、サーキュラーエコノミーは環境対策であると同時に、立派な収益改善策でもあるわけです。
そして今、この取り組みを以前とは比べ物にならないほど簡単にしてくれる道具が登場しています。そうです、AIです。
これまで、このような分析を本格的に行おうとすると、工程ごとにデータを集め、表計算ソフトなどに入力し、原材料やエネルギーの流れとコストを突き合わせる必要がありました。分析そのものよりも、データを集めて整理することに手間がかかる、という会社も少なくありませんでした。ところがAIを使えば、この部分を大幅に省力化できます。
日々の原材料使用量、製造量、不良品や端材の量、電力や燃料の使用量、廃棄物量、処理費など、すでに会社の中に存在しているデータを整理し、工程ごとのモノとおカネの流れを見えるようにする。そして「どこで、いくらの価値が失われているのか」を継続的に追いかける。
ここにAIを組み込めば、従来は担当者が時間をかけて集計していた作業を短時間で処理し、異常値や改善余地の大きな工程を抽出することも可能になります。
「今月は廃棄物が3%増えました」というだけではありません。
「その3%の増加によって、原材料費、加工費、エネルギー費、処分費を合わせて利益がいくら失われたのか」という経営のコトバに翻訳して示すのです。ここまで見えれば、現場の改善活動も変わります。
「環境のためにゴミを減らしてください」と言われるのと、「この工程のロスを半分にすると年間500万円の利益改善になります」と言われるのとでは、受け止め方がまるで違うはずです。
経営者にも、工場長にも、現場の担当者にも同じ数字が見える。改善すれば、その成果が翌月の数字に表れる。それをAIが継続的に追いかけてくれる。
こうなれば、廃棄物削減は一時的な環境活動ではなく、日々の収益管理の一部として会社に定着してゆきます。
社会に良いことをすれば、企業の負担が増える。環境対策とは、利益を削って取り組むものである。そんな時代は、そろそろ終わりにして良いのではないでしょうか。
捨てていた価値を見つけ、それを利益に戻す。利益が増えるから、さらに環境負荷を減らすための投資ができる。そして、その取り組みが企業の新しい競争力になってゆく。
私はそこに、サーキュラーエコノミーが企業経営にもたらす、とても大きな可能性があると考えています。
どうです?直ちに現場で実践してみたくないですか?ご興味を持たれた経営者の方は、ぜひ当社までお問い合わせください。
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