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経営者は会社の使命を語れ

SPECIAL

親子経営コンサルタント

ビジネス・イノベーション・サービス株式会社

代表取締役 

オーナー社長と後継者のための、「親子経営」を指導するコンサルタント。みずから100億円企業を築くも、同族企業ならではの難しさや舵取りの大変さで苦しんだ実体験を指導。親から子へ失敗しない経営継承の極意として「親子経営」を伝授する。

経営者は会社の使命を語れ

今日は私の子どもたちに経営の話しをしておこう。
第2話

【経営者は会社の使命を語れ】

 経営者には使命がある。同じように会社にも使命がある。何を目的として自分の会社があるのかということだ。あるいは何をするために自分の会社があるのかというでもある。その使命というものを明確にする必要がある。

そのうえで、自社の使命を社員のみならず広く知らしめねばならない。会社によっては使命でなくミッションと明示している場合もある。会社の使命は社員が共感できるものであって欲しい。

社員が使命を常に意識することで、社員のパフォーマンスが向上するものであればなおいい。経営者も人の子である。日々いろんなことが起こる。上手くいくことばかりではない。経営に悩むこともあるだろう。

そんなとき、ふと、自社の使命を思い起こす。自社の使命を果たすのが、経営者としての自分の使命だと思い至る。経営者が自らを整えることができる。そんな会社の使命であればなおいい。

私は長い間、経営者として会社を経営してきた。今になって強く思うことがある。会社は、ただ儲けるためだけに存在しているのではないということだ。もちろん、利益は必要だ。利益がなければ会社は続かない。

社員の給料も払えない。取引先への支払いもできない。税金も払えない。設備投資もできない。だから利益を上げることは、経営者の大切な責任である。

しかし、利益は会社の目的そのものなのだろうか。私はそうは思わない。利益は、会社が使命を果たし続けるための条件なのではないかと思う。

会社には、お客様がいる。社員がいる。取引先がいる。地域社会がある。そして、その会社を必要としている人たちがいる。その人たちにとって必要な会社だからこそ、会社は存在し続けることができる。

だから経営者は、時々立ち止まって考えてほしい。「なぜ、この会社を経営しているのか。」「この会社がなくなったら、誰が困るのか。」「自分たちは、世の中に何を提供するために存在しているのか。」この問いに答えられる会社は強い。

反対に、この問いに答えられない会社は、目先の売上や利益だけを追い掛けるようになる。売上が落ちれば慌てる。競合が新しい商品を出せば、それを真似する。流行っているからと新しい事業に手を出す。

そして、いつの間にか「自分たちは何をしたい会社なのか」が分からなくなってしまう。私はこれが経営の怖いところだと思っている。

会社は、何かをし続けるために存在している。だから使命が必要なのだ。そして、その使命は社長室の壁に飾っておくだけでは意味がない。額縁に入れて立派に掲げても、社員が誰も覚えていないのであれば、それはただの飾りでしかない。

経営者が何度も語る。

朝礼で語る。

社員との面談で語る。

新入社員にも語る。

事業を決めるときにも語る。

人事を決めるときにも語る。

「この判断は、我が社の使命にかなっているのか。」そう問い掛ける。そこまでやって初めて、使命が会社の中に根付いていく。

私は、経営理念や使命というものは、社員を縛るためのものではないと思っている。社員が迷ったときに、判断するための道標になるものだ。現場の社員は、経営者が思っている以上に毎日いろんな判断をしている。

お客様から無理な要望を受ける。納期を守るか、品質を優先するか迷う。売上を取るために、多少無理をするかどうか悩む。そんな時に、「我が社は何のために存在しているのか」という使命があれば、判断の基準になる。

これは非常に大きい。経営者がすべての判断をすることなどできないからだ。社員一人ひとりが、会社の使命を理解し、その使命に沿って判断してくれる。そこまでいけば、会社は経営者一人のものではなくなる。組織として動き始める。

私は親子経営企業のコンサルタントとして、多くの会社を見てきた。後継者に「あなたは、この会社を将来どうしたいのですか」と尋ねることがある。

すると、「売上を伸ばしたい」「会社を大きくしたい」「父親の会社を守りたい」という答えが返ってくることがある。

もちろん、それも大切なことだ。しかし、その先をもう一度考えてほしい。「なぜ大きくしたいのか。」「何のために守るのか。」そこまで考えてほしい。

会社を大きくすることが目的になってはいけない。会社を守ることが目的になってもいけない。その会社で、何を実現したいのか。誰を幸せにしたいのか。世の中にどんな価値を提供したいのか。そこに使命がある。

そして、使命を語るのは経営者の仕事だ。社員に「頑張れ」と言うだけでは、人はなかなか動かない。「何のために頑張るのか」を伝えることが大切なのだ。

人は、意味のある仕事であれば、苦しい時にも頑張ることができる。自分の仕事が誰かの役に立っていると分かれば、誇りを持つことができる。だから私は、経営者にはもっと自分の言葉で使命を語ってほしいと思っている。

立派な言葉でなくてもいい。格好のいい言葉でなくてもいい。社長自身の人生から出てきた言葉であればいい。

社員は、社長の言葉そのものより、その言葉に本気の思いがあるかどうかを見ている。経営者自身が使命を信じていなければ、社員の心には届かない。経営者が使命を忘れれば、会社もまた迷い始める。

 だから君たちに伝えておきたい。経営に迷った時には、目の前の数字だけを見るな。自分は何のためにこの会社を経営しているのか。この会社は何のために存在しているのか。そこに立ち返ってほしい。

使命とは、会社を前に進めるためだけのものではない。経営者が迷った時に、自分自身を正しい場所へ戻してくれるものでもある。

会社の使命を語ることは、自分自身の使命を語ることなのだ。だから経営者は、社員に向かって何度でも語ればいい。「私たちは、何のためにこの会社をやっているのか。」

その言葉を語り続けることもまた、経営者の大切な仕事なのである。

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