自分の足跡を残せ

 

人に寿命があるように、経営者には「経営者寿命」があります。経営者寿命というのは、経営者として正しい判断・決断ができる期間のことを言います。人の年齢とは無関係ですが、当然、年を取れば判断力・決断力が鈍ってきますので、そういう意味では関係があるといえます。

先日、当社のセミナーにお越しになったのは、大企業のサラリーマンの方でした。サラリーマンといっても大企業の部長職の方ですので、中小企業の社長くらいの権限はお持ちです。

その部長が当社のセミナーを受講した目的は「ショールームを活性化したいので、そのためのヒントを得たい」です。

当社のセミナーは少人数で開催しています。したがって、途中途中で対話を交えて講義を進めることができます。その対話の中で、この部長が話したのは「広すぎるショールームを持て余している」「もっと小さくてもいいのではないかと考え始めている」ということでした。

もちろん縮小するというのは一つの手ではありますが、大企業にはそれにふさわしい大きさのショールームが必要です。「たった２坪でもできる！」とは謡っているとはいえ、それは資金力のない中小企業のためのものであって、大企業にはそれなりのショールームが必要と考えています。

さて、ショールームを活性化する方法ですが、この企業はショールームイベントを定期的に開催し、集客につなげています。逆に言うと、イベントを開催しなければ集客できません。そして、ご多分に漏れず「飲み食い・景品」での集客です。それが悪いとまでは言いませんが「だから活性化しないのですよ」と申し上げておきました。

部長はこの古臭いやり方を、何とか変革したいとお考えです。しかし、ビジネスの構造的な問題があって、サプライチェーン企業の協力というか、教育というか、変革というか、そのあたりが必要になってきます。

その部分の変革の仕組みがまず先に必要であり、その仕組みづくりには相当な時間と努力が必要となります。もちろん自社のショールームをどのように作り直して、それをどのように活用するのか、それも含めると壮大な事業変革になりそうです。

一方、この事業変革には懸念もあります。一部長の立場で、もし失敗したなら責任問題になります。もちろん、事前に取締役の方々にプレゼンし、稟議書にハンコをもらってから実行に移すでしょうから、それが安全策と言えばそうです。

しかし、もし失敗したなら、サラリーマン人生も失敗に終わってしまうかもしれません。そういうリスクもあるということです。

もし、リスクを取りたくなければ、今のままおとなしくしていればいいでしょう。冒頭にお話しした通り、何かヒントを得たいといって当社のホームページからセミナーに参加を申し込みしたのですから、部長には大いなる野心はあるでしょう。

「こんなことはおかしい」
　「こんなことをやっていても無駄だ」
　「今やっていることを変えたい」

例えば、こんな風に思っている改革精神旺盛な方は大勢いるでしょう。しかし、現実的にはその立場になかったり、足の引っ張り合いで実現できなかったり、時間的にできなかったりで、あきらめてしまう方もいるでしょう。また逆に、サラリーマンですから安全を考える方もいます。そういう人をたくさん見てきました。

そういう人でも、若いうちはまだエネルギーがみなぎっていますので、いつかチャンスがあればと思っています。しかし、40歳台を過ぎ、50歳代に入ると役職定年も見えてきます。

正式な定年はまだもう少し先だと思っても、役職定年になってしまえば「俺は何ができるの？」状態になってしまいます。経営者寿命が尽きてしまうのと同じです。

意欲のある人は、自分の足跡を残したいと思っています。その意欲があればサラリーマンであったとしても、会社に、または所属する部署に足跡を残すことは可能です。もしかしたら、その功績が認められて役員になれるかもしれません。

これまでの古い慣習やしきたりを破って、新しい仕組みを作るのです。それがきっと、その人が残した足跡になるはずです。

もしあなたがサラリーマンであったとしても、勇気をもって新しい扉を開いてください。その扉は自分の身の回りのあちこちにあります。足跡を残せるか残せないかは、その扉に気が付いて、実際に開くか開かないかの違いです。

人間の能力に、それほど大きな差はありません。差がつくのは、やったかやらないかだけのことです。意欲があるならチャレンジしましょう。サラリーマンの経営者寿命は、そんなに長くはありませんよ。

当社は、意欲のある皆さんのチャレンジを応援します。