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新しい儲けのコンセプト「サーキュラリティ」とは

  環境戦略 西田純 SPECIAL
西田純 SPECIAL

環境戦略コンサルタント

合同会社オフィス西田 チーフコンサルタント 西田純

環境戦略アドバイザー。数々の多国間環境条約や、国連が提唱する2030年のための持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)を参照しながら、サーキュラーエコノミーなど企業として取るべき環境戦略や、環境対策を通じた長期収益構造の改善などをアドバイスしている。

毎週、ビジネスの環境戦略についてコラムを書き出してから今日で52週が過ぎました。一年が52週間なので、ちょうど丸一年に渡って毎週書き続けたことになります。この間、当コラムを応援してくださった方々には改めて御礼申し上げたいと思います。

そんな記念すべき回のコラムで取り上げるのは、ちょっと野心的に新しいコンセプトである「サーキュラリティ」という単語です。英語でつづるとCircularityとなります。辞書で引くと、「(論旨などの)循環性、円形、環状」という訳語が見当たります。要するに「丸いこと」という意味なのですが、サーキュラーエコノミーに引っ掛けて言うと「循環の輪、または循環のさせやすさ」というような意味がにじみ出ます。これが何を意味するのかと言うと。

たとえば飲食店で提供されるビールを例に考えてみましょう。鮮度が重要なビールという商品を運び、新鮮なうちに消費され、空になったら瓶が回収されるその商流(リユース)は、長く貯蔵されることのある各種調味料の瓶に比べて速度の面でサーキュラリティが高いということができます。昨今は、樽生ビールを提供する店が多いですが、瓶ビールもそれなりにシェアを有しています。瓶の場合は当然、運搬中に割れるなどして廃棄されるものも出て来ますが、ガラスなので素材として再生することができ、再び新品のビール瓶として利用されるようになるわけです。リユース商流のサーキュラリティに加えて、リサイクル素材としてのサーキュラリティもあるというふうに言えます。樽の場合は瓶ほど破損するリスクは高くないと思われます。瓶に比べると樽の寿命も長そうです。

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ビール瓶のように、まずはリユースしてそれがだめなら素材としてリサイクルする、というような流れが複合的に重なっていればいるほど、構造的に全体のサーキュラリティが上がります。このサイクルがわかっていれば、よりリユースしやすい商流とはどういうものか、よりリサイクルしやすくするには何を工夫すればよいかという、流通面の改善で収益を追求することができるようになります。具体的には取引先を巻き込んだバリューチェーンの整備と拡大がそれにあたります。取引先とのコミュニケーションを通じて回収頻度と回収コストの組み合わせについて最適解を探したり、より集めやすいモノの置き方を工夫したり、という現象として表れてきます。その結果として運びやすくリユースしやすい樽生ビールが普及したと言えるのかもしれません。

同じように食品も、まずは鮮度が良い素材として提供され、売れ残ったものが加工品になり、最後は肥料として長い目で見たリサイクルに回るというように、構造の面で複合的なサーキュラリティを考えることができます。素材→加工品→肥料という流れを複合的なバリューチェーンとして整備する、という取り組みはまだあまり事例が多くないと思いますが、それぞれの段階において需要先をしっかりと確保することで、確実に収益源となってくれるのです。

パソコンも、ビジネスユースのリース品などは規模の面でサーキュラリティが高いと言えます。大手のコールセンターなどでは何千台という同種同齢同用途のパソコンが、モデルチェンジによって計画されたタイミングで一斉にリース落ちしてくるのです。このリユースやリサイクルをあらかじめ考えておくことで、きわめて資源効率の高いモデルを構築することが可能になります。これと同じことがたとえばクルマで実現出来たら、すごいことになると思いませんか?

携帯電話なども現在は端末をユーザーが買い取るモデルが中心ですが、いずれそのうちCaas(Communication as a Service)みたいな形で、ユーザーのデータはすべてクラウド上に保管され、端末をサービス事業者が保有して、ある日一斉にモデルチェンジする、みたいなビジネスモデルに変わってゆくのではないかと思います。そうすることで希少金属の回収効率は飛躍的に上がるはずです。

このように考えると、サーキュラリティを儲けにつなげるにはいくつかの要素があることが判ってきます。①(速度)一つ一つの循環の輪が滑らかに回るようにすること、②(構造)重合的な連環の輪を形成し、それぞれが収益をあげられるようにすること、③(規模)全体観を持って循環の輪を維持管理し拡大できること、などがそれにあたります。それぞれの循環の輪は一見するとあまりつながりがないようにも見えますが、たとえば量的な安定供給など、相互に影響する要素が必ずあります。全体観を持って、というのはそういう部分の調整ができること、という意味でもありますね。

あと1か月ちょっとで2020年、節目の年がやってきます。サーキュラリティに注目して、ぜひ資源循環を儲けにつなげる年にしようではありませんか。

環境ビジネスのためのグローバル戦略
西田純

環境戦略コンサルタント

合同会社オフィス西田チーフコンサルタント

西田純

執筆者のWebサイトはこちら https://swbs.smrj.go.jp/

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