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『働きもの』の玄関

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

意識していなかった「場所」

 

毎年師走になると、家に入ってくる物も出ていく物も多くなってきます。今年のうちにと買い込んでしまう物、今年のうちにと処分する物が、出たり入ったりします。

我が家の場合はどちらかというと入ってくる方が多いようで「別になくてもいいようなもの」が年々徐々に幅をきかせていきます。そういう点では「断捨離」などとは縁遠い家庭であり、ものに囲まれた暮らしをしています。そういう物の多さが、これから建てるお客様のこころの「安堵」に繋がってきたことも本当のところなのです。

「なくてもいいかもしれないけど気に入ってる物は、新しい家に持ってきていいんですね!」などとキラキラと真顔で確認される方とも、これまで数え切れないほどお会いしてきました。「好きな物に囲まれて、気持ちが上がるのなら、それはそれでいいんですよ」と話していると、どんどん前向きになっていかれる方をそれこそ数多く見てきました。みなさん「綺麗に住まなければ」という『同調圧力』に少なからず負担を感じておられたのだと思います。

私たちは物がだんだん増えていく性質を持った夫婦でしたから、可能な限りの収納余力を自宅には確保しました。「そこにそんなに物を入れます?」と言われながらも、少しでもスペースが見つかれば物が入るように考えました。そういった場所の紹介を著書「家づくりの玉手箱」でもご紹介しています。

特に「玄関スペース」にある階段収納は、本を読まれてから自宅にお見えになる方なら、必ずといっていいほど実物を見るのを楽しみにされている場所です。「あ。」「ここ、おふとんですよね❤︎」とか言ってカメラを構えられるので、引き出して中のおふとんをお見せするとパシャパシャ連写されたりして。

 

↑書籍「家づくりの玉手箱」で紹介された『階段収納の実力』

 

じわじわ現れる『隠れた才能』

 

階段下の収納はかなりの収納量で20年来生活していてずっと助かっています。そこは、我々夫婦にとっては狙いどおりでした。最近になって収納量というよりも、そのスペースの広さと自由度が「使える」ことに気が付きました。今頃?という感じもありますが、どうやら「先入観」というものが邪魔をして気づきを遅くしているようです。

営業マン時代にはオープンなプランを目にして「どうやって生活したらいいか分からない…」などとおっしゃるお客様に「こうしておいたほうが暮らしながらの変化や、今は思いもよらないような使い方にも対応できるのです」などと話していたのですが、いざ自分が生活してそのことを「実感」するのに20年を要したことになります。あらためて感心したことに、思いもよらないような使い方にも確かに対応しています。その一端を画像でご紹介します。

 

↑大物の荷造りの際には『隠れた才能』を見せる「玄関スペース

 

↑DIYでの本棚組み立ての図(これまで大きい物は、外で組み立てていましたが中でもできることに今頃気づきました)

 

↑何泊かの出張準備はいつも階段利用です(それぞれの段に分けて置いて、忘れものしないよう指さし確認します)

 

↑出しっぱなしにしていても、ここなら意外と上り降りの邪魔にはなりません

 

↑ずっと座りっぱなしで腰が痛いときには、しばしここで立ち仕事です

 

↑スペースが縦にも横にも広くて大きい資料整理がはかどります

 

改めて考えてみますと玄関まわりには物が出たり入ったりする量も多く、昔の家には大きな土間があったりして様々な事がそこで出来たり、そこに物が置かれたりしていました。農作業など様々な活動が各家庭にあった時代はそれがあたりまえでしたが、現代では「寝泊まりする」ということに住まいの機能が集約されていったように思います。結果として、戸建てもマンションも持ち家も賃貸も同じように人が出入りして靴を置いておくだけの「玄関スペース」がスタンダードになってしまったのですね。

ある意味「ホテルライク」です。

 

 

置いてみなくちゃ分からない

 

シンケン時代は、たくさんのお客様とたくさんのプラン打合せをさせていただきました。中には土地が売れてしまったり変更になったり予算オーバーでプランを見直したりで、2度3度再提案させていただくこともありました。

その際に、プランを考えている社長が下書きしている最中に、思いもよらない場所に思いもよらないものを書いてみる場面に何度となく出くわしました。その時は、冗談でやってみているのかなと思って見ていましたが、いま思えばまんざら冗談でもなくその家族の10年後、20年後を想像しての「自由度」に対する「確認作業」であったのかもしれないと感じています。

鹿児島に引っ越してきてから、ずっとお世話になってきた無印良品のソファとお別れする前日のこと。2階のリビングの定位置から、1階に持って降りて和室でしばらく使ってみたりもしました。これまで何も置いてなかった畳の上にソファがあると、古民家カフェのようでした。いよいよ明日が頼んでいた粗大ゴミ引き取りの日という時に「玄関スペース」に移動しました。

すると意外な場所にもしっくり置けてしまったので、また座ってみたりしました。これが、また新鮮な目線を生み出します。想定外のいごこちで、妙に落ち着くのです。社長はこういった状況を「予見」していたのだと「確信」する瞬間でした。「先入観」というもので、このような気づきをもたらすのに20年もの時間が必要になってしまうのか、とも思いました。

いよいよ粗大ゴミ回収の当日になって、出勤前に外に持ち出しました。最後にもう一回とばかりに腰を下ろしてみると「あー。ここもええ感じや。」あまりのいごこちに一瞬、捨てるのやめようかなんて思ったりしました(笑)外に古いソファが置いてあってゆったり座れるのもいいものです。海外でよく見る光景のひとつ、たまに日本でもお店の軒先などで見かける、思わず座ってみたくなるあの感じです。

 

↑長年活躍した無印良品のソファとのお別れの日にここに置いてみました

 

↑座ってみると、意外とよい感じで(一瞬、捨てるのやめようかとも)

 

↑翌朝回収してもらうのに外に持ち出して、再びなごりを惜しむ図(ここもまたよい感じなのでした)

 

住宅の提案というものは誰しも経験済みの分野ですから、ある意味でわかりやすいはずのものです。一方では、現在多く見られる実例やそれぞれの経験からくる「先入観」が正しいかどうがは別の話です。鹿児島に来てからは業界のなかでも「異端」とされていた「作法」に20年近くの時間をかけて慣れ親しんできましたが、今ではその「異端」が「王道」に思えて疑うことはありません。

「住まい手がその家でどのように暮らしていくのか?」は、未来のことで誰にも分からないことではあります。それゆえに、できるだけどのようにでもなるように。どのように暮らしたとしても、心健やかなように。そういう「視点」は確かにあると確信します。また、そうなるためには「家を建てる前に何をしなければならないのか?」も20年の歳月と『働きもの』の玄関 が教えてくれたように思います。

 

 

社長の会社では、設計段階で様々な生活の在り方を図面上でイメージされていますか?また、感性した住まいに椅子やテーブルを持ちこんで居場所としての価値を確認されていますか?

 

 

 

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