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工務店の『アフター』考(その2)

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

 

住まいの『アフター』考(その1)からつづく

 

 

施主として工務店のアフターを見ると

 

注文住宅を建ててから20年もの間生活していますと、色々と変わってくるものがあります。年齢・職業・家族構成などはもちろんのことですが、メンテナンスに関しての捉え方も大きく変わってきます。これは、おそらく多くの「住まい手」に共通することなのだと思います。担当させていただいた、入居後10年以上経つお施主様たちと話していてそう感じるのです。

いっぽう、多くの工務店側の担当者は引渡し時のマインドからそう変化はなく、この点で徐々に「ずれ」が生じてくるようです。具体的にはこうです。工務店側は「点検」や「工事受注」が現実には業績指標です。決められた通りに定期点検を行い、10年や20年という節目には出来るだけまとまった単位のメンテナンス工事を受注したいのです。

しかし、住まい手側は「予防と対策」を知りたかったり「問題解決」をしたいのです。また、それを最低限必要なコストで合理的に行いたい訳です。建築素材が必ずしも全て一律に損耗するわけではないことを身を持って知っているからです。

節目のメンテナンス工事では、デッキなど部分的に傷んだ箇所でも全面交換してしまったりすることも多々あります。車で言うと、前輪2本だけが摩耗しているのに4本とも交換するようなものです。こういうことを繰り返していると、数十年のうちに処分代・工賃・材料費ともに相当な無駄をすることになります。(業者さんは儲かりますが)病院に行くと、ひとつの症状に多くの種類の薬を山ほど処方してくれます。それが収益源だから無理もないのですが、根本は同じことかもしれません。

各家庭によって幅はありますが、新築後20年もすれば子供たちも巣立って在宅時間も徐々に長くなってきます。また、日頃の時間的余裕も少しずつ出てきますので、自分でできることは自分でしたいのです。これは、なぜでしょうか?より丁寧に頻繁にできるし、メンテナンスの「つぼ」と「コツ」がわかってくるからです。

これは決して「節約する」ということばかりではなくメンテナンスを「タイムリーに」「ていねいに」行いたいという心持ちです。住まい手も年を重ねて「成熟」してくると、家の健康も、体の健康も近い感覚になってくるのですね。

 

 

↑入居後20年超の「住まい手」は工務店に何を望む?

 

 

↑医療サービスになぞらえてみると

 

 

住まい手が「にっこり」する瞬間

 

自宅には、これまで多くの「見込客」の方々が見学にお見えになりました。晴れて新築をされ「住まい手」になった方々もご自宅入居後に、何度となく「再見学」に来られる場合も多く経験しました。自分の家が建ち「住まい手」になったんだからもう見なくてもよさそうなものですが、いったい何を見にこられるのでしょうか?

多くの方々は、収納をどうしているかなどの「暮らし方」とともに、実は自然素材の「傷み」への実際の対応などの「メンテナンス」について確認に来られるのです。何年か暮らしていけば、いつどのように「傷み」が出てきて、いかに対応すればいいのか?という疑問を持って見に来られるのです。

「住まい手」が「再見学」される際に、心底「にっこり」される瞬間がいくつもありました。それは、安堵の表情といいますか「見込客」時代とはまた違って爽やかなものです。その表情は、このようなやりとりの際に現れるのです。

 

住まい手「吉岡さんちはとっくに10年以上経ってますけど、大規模修繕みたいなのされましたか?」

吉岡「いいえ。実はそういった類の工事はやってないんです」

住まい手「へー。そうなんですね。でも、そこまで傷んでないですよね?」

吉岡「傷んでいるところは傷んでるんですけど。後に影響の大きいところは即時対処していますが、それほど危なくないところは放置してます。。。」

住まい手「傷んでても実際にはそれほど気にならないもんですね。危ないところと危なくないところがあるんですね?」

吉岡「そうです。デッキや塀みたいな場所で一部分だけ交換するのだと自分でもできますし、そのうち交換してないところとも馴染んでくるのが自然素材の良さでもあります」

住まい手「定期的に全体を交換しなくても別にいいんですね」

吉岡「のちに影響を拡げてしまったりしないところなら、交換範囲や時期はご自身で幅を持って選択できます。まとめてプロに頼むか、セルフで「ちまちま」と頑張るかも選択ですね」

住まい手「吉岡さん「ちまちま」のやり方教えていただけますか?うちはそっちがいいです♡」

といった感じのやりとりの時です。さらに、

吉岡「自宅の場合は、出来るだけ「ちまちま」とセルフで頑張るかわりに、便利になるプチリノベーションをやってます。思いついたらすぐ。収納を増やしたり、新しい居場所をつくったりして」

住まい手「わー。それいいですね♡」

といった話をよくしています。ここで「住まい手」さんは身をのりだす訳です。

 

 

↑「住まい手」はこういうときに「ほっと」する

 

 

 

↑「住まい手」はこういうときに「うなずいて」くれる

 

 

 

↑「住まい手」はこういうときに「身」をのりだす

 

 

 

「元にもどすアフター」と「もっと良くするアフター」

 

自宅に遊びに来られる「住まい手」の皆さんは、ほぼ全般にアフターメンテナンスに対して「元にもどすアフター」のイメージを持たれています。先ほどの会話の様子のように、収納を増やしたり、新しい居場所をつくったりする「もっと良くするアフター」のお話をすると、多くの方と盛り上がることができます。モチベーションが違うのですね。

以下のチャートは「元にもどすアフター」と「もっと良くするアフター」それぞれの状態をグラフで視覚化してみたものです。通常、入居後年数が経ってくると多くの「住まい手」はこのような「元にもどすアフター」のパターンが多いかと思います。

 

 

↑「元にもどすアフター」のイメージ

 

 

①在宅時間:入居後、年数が経過するとともに次第に在宅時間が増えてきます。
②維持状態:工務店の定期点検や勧めで行うメンテナンス工事で「現状復帰」的にモノとして入居時にもどす対応が取られています。
③いごこち:その割には子育ての「後遺症」も含め自宅の居心地は低下ぎみになったままです。

 

 

 

↑「もっと良くするアフター」のイメージ

 

 

①在宅時間:入居後、年数が経過するとともに次第に在宅時間が増えてきます。
②維持状態:出来るだけ「ちまちま」とセルフで、自分でできるところは頑張って建物の消耗を遅らせます。(結果的に大規模修繕の総額を圧縮したり、実施時期を先送りできる場合もあります)
③いごこち:収納を増やしたり、新しい居場所をつくったりして「もっと良くするアフター」を都度頑張るので、いごこちは増していきます。

 

 

 

かくして「もっと良くするアフター」で盛り上がった「再見学」を終えて、「住まい手」の皆さんは笑顔で帰って行かれるのです。

 

 

 

住まいの『アフター』考(その3)につづく

 

 

 

 

 

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