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Vol.6:生涯現役論

SPECIAL

「信託」活用コンサルタント

株式会社日本トラストコンサルティング

代表取締役 

オーナー社長を対象に、「信託」を活用した事業承継や財産保全、さまざまな金融的打ち手を指南する専門家。経営的な意向と社長個人の意向をくみ取り、信託ならではの手法を駆使して安心と安全の体制をさずけてくれる…と定評。

「御飯が美味しい間は大丈夫だ。まだ商売は続けるから。」と、80歳のT社長は、続投宣言です。検査を受けた大学病院の主治医から「難しい状況ですよ。」と言われた後だけに、家族も会社の人もびっくりです。

コロナ禍になる前のことです。弱音を吐かないT社長が、「お腹が痛い。」ということで、近所の掛かり付けの医師に相談したところ、大学病院を紹介されました。精密検査を受けた結果、複数の病気が見つかり、状況は芳しくありません。

ところがT社長は意気盛んです。「手術はしない。痛みだけとってもらったら、このまま仕事を続けるから。」とキッパリ。これには、家族も会社の人も何も言えません。さて、事業は大丈夫でしょうか。

実は、T社長の事業承継は実質的に完了しています。T社長は地方から東京に出てきて、一代で今の会社を立ち上げました。昭和の時代は順調に事業が拡大したのですが、平成になってしばらくすると、年を追うごとに停滞感が漂うようになりました。

T社長も60代の半ばをすぎて、銀行員の長男と話し合ったところ、会社を継ぎたくないと言われたそうです。それからしばらくして、配偶者を亡くしたため、T社長は悶々とした時間を過ごしたそうですが、元気なうちは絶対に働くという決意を固めたそうです。

それ以来、T社長は暖簾分けという事業承継を開始します。独立する社員が希望すれば、取引先を渡したそうです。独立する社員を応援して相互に協力する形なので、社員の補充は不要です。今では、嘱託の古参社員を中心にパートとアルバイトで仕事は回っています。

もし、T社長に何かあっても、取引先のことは、嘱託の古参社員が一時的に引き受けて、暖簾分けした社員がエリアごとに引き継ぐことが大体決まっていますので、経営承継の事前準備は完了です。

T社長のような自己完結型の経営者人生もある一方で、オーナー社長の引き時や後継者の決定は難しい問題です。ファミリービジネスの研究(ジェフリー・ソネンフェルド)では、オーナー社長の引退には4パターンあると分類しています。

<君主型>
優れた経営ビジョンにより、会社を成長させることもあるが、時代の変化と共にそのビジョンや役割が疑問視されるようになる。自分で引退を決断することがなく、クーデター、健康不良で退任する。会社の外部に対して挑戦するタイプ。

<将軍型>
新しいリーダーを育てておいて、結局その新しいリーダーに対立するようになることがしばしばある。会社にとってプラスなら退任するが、引退後に返り咲くことがある。会社内部に強い影響力を発揮するタイプ。

<大使型>
綺麗に引退して、後継者のサポートに専念する。職務に満足の意を表明し、誇りと喜びをもって引退する。退任後も後継者に継続的に助言するタイプ。

<知事型>
綺麗に引退して、会社との関係を断つ。経営者としての役割に執着しないが、引退後は別の職業に自分の役割を見つけるタイプ。

人生100年時代と言われる以上、生涯現役という生き方を選択するのは当然だと思います。ただ、オーナー社長の生涯現役の在り方についての答えは一様ではありません。上場企業のオーナー社長の中にも後継者を選んでは、ひっくり返している方もいらっしゃいます。

欧米では同族経営(ファミリービジネス)の研究が盛んです。しかし、世界で最も長寿企業(創業200年を超える企業)が多い国は日本です。日本には会社が長く継続していくための知恵がたくさん眠っています。

T社長の会社は残念ながら1代限りですが、沢山の起業の種を蒔いた経営者人生に見えます。オーナー経営者が生涯現役を貫くためにはどうすれば良いのでしょうか。オーナー社長の生き様が一様でないように、簡単な事とは思えません。

T社長は、自分がもし、事故、怪我、病気などにあったら、と考えて物事を決めたそうです。オーナー企業の最大のリスクは、オーナー経営者自身の生き方、考え方であるということを学ばせて頂きました。

オーナー社長の生涯現役の在り方は、どうあるべきなのでしょうか。実は、身近なところにヒントが転がっているかもしれません。

 

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