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ワンマン社長と「多様性」その4

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

 

ワンマン社長と「多様性」その3 からつづく

 

 

人によって見える色は違っている

 

色とは眼に入った光の情報をもとに脳が作り出す「感覚」で、人は最大で 360nm ~830nm の範囲の波長の電磁波を光として認識することができます。個人差はありますが波長の異なる光は異なる色として知覚され、540nm の光は緑、580nm は黄色、660nm は赤として認識されます。

しかし、緑の光と赤の光を適当に混ぜると黄色として認識されることから、人の知覚は光の物理的な性質を区別しているのではないようです。

例えばリンゴを見た時、光源からの光はリンゴに当たり長波長の光のみが反射して眼に入るのでリンゴは赤く見えます。蛍光灯や電球といった異なる波長分布の光を発生する光源の下では、リンゴから眼に届く光の波長分布は著しく異なるそうですが、私たちにはリンゴは同じように赤く見えてしまいます。

このような「色の恒常性」は、眼から入った光が脳で調整されてから色として認識されている証とされています。「知覚」が、必ずしも実態を現しているとは言えないのです。

私たちが色を他人に伝える際には、自分の知覚した色を「色名」に置き換えて表現します。しかし、色認識の出発点である眼と脳で個人差があるとしたら、同じ色名でも違う色を指していたり、同じ色を見ていても違う色名で表現したりということが起こり得ます。

私は大学卒業後、子供服の企画の仕事をしていました。あの頃、何回やり取りしても糸や布地の色が色見本どおりに染め上がってこなかったのは、こういった人による色認識の齟齬が原因の一端であったのかもしれません。

現行の色覚検査では、日本人男性の 5%が「色覚異常」であり、残り 95%は色覚に異常がないと診断されています。学校などで色覚検査を受けましたが、十分にその検査について説明を受けていない私たちにとっては、色覚には正常なものと異常なものの 2つしかないという誤解を生んでいるのです。

実際には、色覚に異常なしと診断された人の中にも、少し違った色覚を持つ人が多く含まれています。また、その中でも色の感じ方は感じにくい色・程度などで多くのバリエーションが存在するとのことです。実は色覚は人の個性のひとつで、多様なのです。

 

 

多くの人が同時に見る色の代表として「虹」があります。日本では虹の色は7色とされています。しかし、世界的には2〜8色とかなり幅があるそうです。これは、教育・言語・文化による影響もあると思われ、本当にそう見えているのか?は不明ですが、確かなのは各自の「常識」が違うということです。

「ジェンダーの平等」といったことが頻繁に言われる世の中ですが、視覚の男女差にも一定の傾向があるようです。同じ色を見ていても、見え方(認識)に違いがあるのです。

下の画像の色を全て見分けることができる人は、4人に1人ぐらいいるそうです。20色以下に見える人が約25%、20〜32色という人が約50%、33〜39色という人が25%いるそうです。ということは、この画像の色数は39色あるというのが正解なのかもしれませんが、そう見える人は25%と少数派です。しかもその人たちは、ほぼ女性なのだそうです。

 

 

↑これ、何色に見えますか?

 

 

カラーユニバーサルデザインとは

 

 

現代社会では、様々な製品・WEBサイト・印刷物など、ほとんどのものがカラーです。しかし、実際の色の見え方には個人差があり、人によっては一部の色の組み合わせが区別しにくく、不便さを感じるケースがあります。このような色覚の多様性に配慮して、より多くの人に利用しやすい製品やサービスを提供するという考え方を「カラーユニバーサルデザイン」と呼びます。

個人的にも小学生の頃に学校で検査を受けて以来、ほんの一部の人以外はみんな全員同じ色は同じに見えているものだと信じていました。人の個性というものは、私たちが認識している以上に多岐にわたる分野で存在しているようです。

現在では、学校での色覚検査は行われていないそうです。 2003年度に学校保健法が改正されたからです。それ以降ほとんどの小学校で色覚検査が実施されず、現在の若い人の多くは色覚検査を受けたことがありません。

しかし、確率的にはほぼ1クラスにひとりの割合で色覚異常の子供がいる計算になります。その子たちが成長し、いざ受験や就職という場面で初めて自分の色覚異常を知ることになっています。その段になって非常に困惑し、進路の変更を余儀なくされる事例が少なからず報告され始めているそうです。

そのため学校保健安全法が再度一部改正され、2016年度より希望すれば色覚検査を受けられるようになっているそうですが、希望者はほとんどないようです。差別やいじめを助長してしまわないよう法律が改正されてきたのかもしれませんが、本人が認識できないままに大人になってしまうのが現状なのです。

 

↑色覚検査のチャート、ちょっと懐かしくないですか?

 

 

より多くの人に認識しやすい色の表示についてまとめられています↓

 

●東京都カラーユニバーサルデザインガイドライン

 

 

 

社長は誰でも分かる表現を

 

 

人類のテクノロジーの進歩は、目覚ましいものがあります。しかし、自分以外の他人がどう見えているのか?それぞれの人がそれぞれどのように見えているのか?は、実は最近分かるようになってきたようです。ようやく、脳の計測技術が進歩して、仮説の検証ができるようになってきたからです。テクノロジーの進歩は、まだまだ偏っているのです。

「目の知覚」のようなことは、ひょっとすると他にもたくさんあるのではと思わされます。言語・読み書き・一定以上の教育水準と、日本人は特にみんな全員同じ「基本」を持っているという感覚はどうも間違っていそうです。

私自身や周りの人の経験の中でも、社長の口から「なぜ?何のために?何を?どうやって?どのように?」というようなことを分かるように聞いたことがありません。書いたものを見せてもらったことも、そう言えば記憶にありません。直接聞いても、分かったような分からないような話だったり、逆質問されてしまったり。。。そうしているうちに、そういうことには触れなくなっていった気がいたします。

「社員が思うように働いてくれない」と漏らされる社長は多くいらっしゃいますが、こうも考えられます。社長が四六時中考えている大切な指示でも、相手にはぜんぜん「知覚」できていないとしたら。。。「社員全員と阿吽の呼吸で会社経営ができた」と言うような話もまた、聞いたことがありません。

もし、そうだとすると相手にも「知覚」できる手段を講じなければなりません。「分からないやつがいけないのだ」などと言ってはいられないのです。社長には、「翻訳業」みたいな役割が必要なのです。日本語が通じるからと言って、意味が分かっているかどうかは別問題だからです。

「なんでオレがそこまでやらなければいけないのだ」という声が聞こえてきそうですが、それは会社とご自身が責務を全うするために必要なことなのです。なぜなら、そういった意思疎通の齟齬は、貴社とお客様とのあいだにも必ず影響しているはずだからです。社長の行動の向こうに、結果としての「業績」が待っているのです。

 

 

 

社長は、ついつい他の人に対しても「自分と同じ考えである」ことが思考の前提がになってしまっていませんか?人の性格の「変えられる部分」と「変えられない部分」の区別をされていますか?

 

 

 

 

 

 

 

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