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ラスベガスの新交通システムに乗ってみた話

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

前回のコラムに引き続き、米国視察で気がついたことをお伝えします。今回は2021年にラスベガスで運行開始した地下トンネルの中をEVで移動するThe Loopに乗ってきましたので、その話題でお送りします。

The Loopは、著名実業家のイーロン・マスク氏が旗を振る会社「The Boring Company」が手がける運送サービスです。Boring Companyはその名の通り、ホームページを見る限りはとにかくトンネルを掘る事業をメインとしている様ですが、日本のそれをイメージするとおそらく誤解します。とにかく直径が12フィート(約3.6メートル)と小さいのです。直径が小さい分、掘り進める機械のサイズも小さいですし、地質にも依ると思いますが大きなトンネルに比べると掘り進む速度も単位長さあたりのコストも大型のトンネルよりも格段に有利なはずです。次の写真は現地に飾られていたボーリングマシンです。

 

そのトンネルをラスベガスの街中様々なところに掘り進め、その中にテスラを走らせて、一大地下ネットワークを作りましょう、というのが、The Loopの完成像の様です。

今回私はラスベガスで開催された展示会「CES」に視察に行ったわけですが、この展示会は非常に巨大であることもあり、会場間の行き来などに非常に大きな支障を来します。例年開催されていますが、市内至る所で渋滞が起こるため、シャトルバスもそれに巻き込まれますし、モノレールも何年か前に開通しましたが輸送力に限りがあり、しかもあまり便利なところに駅が作れなかったこともあって、それほど便利ではありません。そこにThe Loopが登場し、しかも展示会の開催期間内は一部無料でサービスされていました。

次の写真は、いわゆる「駅」です。一台の車には複数の人が乗る、ライドシャア方式ですが、乗る場所と降りる場所は駅に決まっており、自由度はありません。当然ですが狭いトンネルの中で降りる人も居ませんし、人が歩くと車は通れません。

まるで、普通の駐車場とか道路の路肩に見えますが、これでも駅です。また、この展示会に合わせて手配されたのかどうかわかりませんが、車種も色も様々で、統一感は全くありません。次の写真は乗っているところです。

私はひとりで後席に乗りましたが、アメリカ流であれば助手席に乗るべきだったかもしれませんね。運転手の目線の先には白い壁のトンネルが続きます。前述の通り、トンネルの直径と車のサイズにそれほど大きな差はありませんので、少し圧迫感を感じるほどですし、現段階では自動運転ではないので、操作を誤れば壁にぶつかりそうです。

出している速度もそれほど速くはなく、おそらく30~40KM程度のスピードしか出していなかったと思います。しかし、全く渋滞することがありませんので、目的地にはスムーズに到着しました。

The Loopはまだ完成形ではなく、工事はどんどん進んでいますし、許認可の問題がクリアできれば自動運転に切り替わるとのことです。一方通行のトンネルの中を定速で進むことが前提なので、自動運転化への安全面・技術的なハードルはかなり低いはずです。いまのところ良く解らないのはトンネル内での火災や事故に対してどのような対応ができるのか、です。当然色々と考えているはずですが、そんなハードルを越えて自動運転に対応する時期も近いと思います。

また、注目するべきはこのトンネルのサイズです。冒頭申し上げた通り、必要最低限の直径しか無いので、単純な地層の土地なのであれば非常に短期間の工期で開通してしまうと思います。

デマンドがあればそこにトンネルを掘る

これがThe Boring Companyの考え方なのでしょうし、その方針に則りThe Loopをラスベガスに建設したのではないかと思います。また、The Boring CompanyはEVを走らせる為だけにトンネルを掘るのではなく、歩道にしたり車椅子専用にしたり、と小型トンネルとしての様々な提案をしています。運送手段の会社ではなく、穴を掘るサービスを提供する会社、というわけですね。

今後の発展に注目すべきだと思いました。

 

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