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資産防衛のためのリスク管理

SPECIAL

「信託」活用コンサルタント

株式会社日本トラストコンサルティング

代表取締役 

オーナー社長を対象に、「信託」を活用した事業承継や財産保全、さまざまな金融的打ち手を指南する専門家。経営的な意向と社長個人の意向をくみ取り、信託ならではの手法を駆使して安心と安全の体制をさずけてくれる…と定評。

1.加山雄三さん

年末の紅白歌合戦で、「永遠の若大将」加山雄三さんの雄姿を拝見しました。
紅白出場が決まった後のインタビューで、「始まりがあれば、終わりがある」と答えておられていたのが印象的でした。

できれば、生涯現役でありたいと願う人は少なくありません。しかし、人生の晩年ともなれば、思わぬ事故や病気、認知症など意図しない出来事が起きます。加山雄三さんも病気となり、リハビリを超えての復活でした。

最後まで元気いっぱい、といきたいところですが、そうは問屋が卸しません。オーナー社長ともなれば背負っているものが重いですから、何事も事前準備が肝要です。やったほうがいいとおもいながら、やらないことの一つに相続対策があります。

何らかの動機や事情がないと、相続対策に積極的に取り組むことはないのでしょうか。ところが、お金の絡む相続税の対策となるとスイッチが入る人が多いです。

相続税の対策のひとつに不動産投資があります。2015年に相続税が改正されたのも後押ししました。しかし、潮目が変わっています。節税を目的とした不動産の取得は、相続税評価が適用されない危険性があります。(前回のコラム)。

今回も相続税評価が認められなかった事例を題材にします。

2.タワーマンション節税

この案件は、被相続人(亡くなった人)が、亡くなる直前にタワーマンションを購入した事例です。

相続人は、時価より評価が低くなる相続税評価額で申告したのに、税務署が認めなかったのです。平成19年に相続があった事例ですので、15年以上前のことです。(国税不服審判所平成23年7月1日裁決)

問題点は、相続税評価額と時価の乖離だけでなく、不動産の購入時期や売却時期など、色々とあります。中でも、個人的に注目したい点があります。それは、被相続人(亡くなった人)の意思能力に関する税務署の事実認定です。

被相続人は、7月に病院に入院し、8月にタワーマンションを買って、9月に亡くなっています。税務署は、8月の時点で、被相続人に契約を締結する能力がなかった、と主張しています。

もっとも、被相続人(亡くなった人)が直接契約したわけではありません。相続人が代理人として、不動産の売買契約をしています。被相続人が相続人に委任状を書いて代理人とする時点で、被相続人の意思能力がなかった、と税務署は事実認定しています。

 

3.対応策

人生の晩年には、怪我や病気、認知症などのアクシデントが起こりえます。このアクシデントを想定して、どう対応を取っておくか、ということです。

言い換えますと、健康寿命(男性72歳)と平均寿命(男性81歳)を目処として、その間の資産管理をどうするか、というテーマです。上記のタワーマンション節税も、この期間の資産管理期間の問題といえます。

簡単に整理すると、72歳までは資産運用の期間、81歳までは資産管理の期間、それ以降は資産承継の期間となります。この資産運用、資産管理、資産承継をオールインワンで対応できるのが信託という仕組みです。

近年では、不動産の有効利用でも、信託活用スキームが盛んに用いられるようになりました。委託者である親の資産を、子供が受託者として管理、運用するのが一般的です。

親が認知症になっても、子が財産を管理しているので、自由に運用できます。つまり、親の金銭を原資として、子が収益不動産を取得して、管理することができるのです。親の意思能力の問題が生じることなく、実質的に親が不動産を取得することが出来ます。

収益不動産の場合、借入れや契約の管理などの負担が出てきます。これらは、高齢の親でなく、子が対応するので意思能力の問題が生じません。資産の管理期間の問題がクリアされることになります。

さらに、信託では財産を誰に承継するか決めておくことができます。収益不動産子を管理している子供を相続人にすると信託契約で決めておけるのです。後継者が決まっている資産は、資産運用、資産管理、資産承継を信託だけで出来てしまうのです。

 

4.まとめ

社会の不透明さが増す中、思わぬ事故や病気、認知症などに備えたリスク管理が必要です。オーナー社長の場合、家族のことを考え、会社のことを考え、税金にも配慮しながら…と、普通の人より何倍も大変です。人生を俯瞰して、資産運用、資産管理、資産承継のトータルデザインを考えるときに、信託という手段があります。

事業承継、相続対策など、信託を活用できる機会は沢山あります。しかし、信託というのは、道具に過ぎません。いつも信託がベストとは限らないのです。他の手段と比較、検討する為には、様々な専門家に確認を取りながら、トータルでコーディネートする必要があります。

信託を使って資産の管理をする場合でも、家族に任せるか、プロである信託銀行や信託会社に受託者として任せるか、で全く違った結果となります。

今は時代の転換点です。節税も大切ですが、本質的に必要なことは資産を守るためのリスク管理ではないでしょうか。そのときに、信託は、有力な手段の一つになりうると、確信しています。

本日の結論は、「税金に捉われ過ぎず、資産防衛のためのリスク管理をした方が良いですよ」という話でした。

 

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