CO2の値段
去る5月28日に参議院を通過したGX推進法により、来年度から大手企業に対してCO2の排出枠を設け、超過分に相当するカーボンクレジットを市場で購入したり、削減分を販売したりすることを新たに義務付けられることになりました。
該当する企業は、年間に直接排出分、すなわち自社で燃焼させた化石燃料等に起因する排出量(いわゆるスコープ1)が10万トンを超える企業ということで、現状では概ね300~400社程度が該当するのではないかとされているようです。
さて、市場におけるCO2の値段はどのくらいになると見込まれているのでしょうか?ビジネスに関わる新たな市場ということで、高い関心をお持ちの方もいるのではないかと思いますが、現状で他の市場に比べて高い価格を予想する向きは少ないようです。
その理由はいくつかありますが、①高価格を維持しているヨーロッパでは、自身が定めた排出枠の取引による削減量の達成しか認めないため、価格が高止まりしやすいこと、②日本では、排出枠の計算根拠が排出目標とリンクしておらず、枠が緩めの水準にとどまるとされていること、③日本では、一定品質が担保されれば外部のクレジットを売買することも認められており、供給が絞られる展開にはなりにくいことなどが指摘されているようです。
具体的な予想としては、日本エネルギー経済研究所による試算値として、トン当たり単価で「28〜50年度までの平均で2174〜2745円」くらいと言う数字があるようです。欧州での取引価格が現在70ユーロ、11000円とちょっとくらいなので、それに比べるとだいぶ安い価格が予想されているようです。
他方で、今回の備蓄米放出によるコメ市況もそうでしたが、市場の思惑みたいなものが影響する要素があるのではないかという考え方も成り立つのではないかと思います。メロンの初物にご祝儀相場が立つように、カーボンも何らかの因縁があるタイミングで大きく値を上げる場面が出て来るのかもしれません。
ちょっと前まで5㎏で2000円と少しで買えていたお米も、備蓄米の随意契約が実施される前までは4000円台、どうかすると5000円近くの価格がついていた例もあるようなので、それに例えて言えばトン当たり5000円を超える価格が付くこともあながち「なくはない」状況なのではないかと思われます。私がそう見る理由は、取引されうる対象(いわゆる「玉」です)の供給が何と言っても少ないことにあります。買いたい人はいっぱいいても、実際市場に出回って来るCO2排出量が少なければ、おのずと価格は上がるはず、と見ています。
さて、御社には排出量の供給余力がどの程度備わっているのか?一度実情を可視化してみるのも良いかも知れません。関連するお問い合わせは、ぜひ当社までお寄せください。nishida@officenishida.biz
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