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改善活動を社員に任せるために必要なこと

SPECIAL

工場の自動化経営コンサルタント

株式会社さくらブルー

代表取締役 

 社長不在でも社員だけで現場が回る仕組み構築により、社員だけで利益を出す「工場経営の自動化」のノウハウを提供する、経営コンサルタント兼2代目工場経営者。工場経営の傍ら、がんばる中小工場経営者向けに、経営コンサルタントとして工場経営の指導を行う。「工場経営の自動化」により、現場は社員に任せ、次のビジネス展開に専念する経営者を多数輩出。

「社長が口を出さず、現場の社員に予算を持たせて任せたらどうですか?」

これは社長になりたての頃、5S活動のコンサルティングを受けていた時にコンサルタントに言われた言葉です。

期が変わる頃には、目標とする売り上げを設定し、それにかかる費用を想定し、設備導入があるならその額、何人か採用するのであればその年収×人数、その他、様々な取り組みにどのくらいの予算を確保できるのか、経営者の立場であればある程度設定することでしょう。

しかし、それほど費用がかからない活動として代表的な5S活動などについては、特に設定されない工場もちらほらみられます。予算内でするというより、改善を進めていくうちに必要なものはその都度買う、という感じ。

どれくらいの規模感で改善が行われるのか、これまでの実績をイメージしたとき、掃除道具や備品の購入程度で終わっていることが多いと、社長には予算を確保しておこうという感覚はないかもしれません。

それが問題なのかと言えばそうではありません。

ある工場の社長から、こんなことを聞きました。

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5S活動を社員に自主的に実行してもらおうと思い、半年間の活動で50,000円の現金を渡したそうです。使いやすくしないと改善も進まないと思ったので最初から渡したとのこと。

最初は〇〇を購入して倉庫の〇〇をした、△△を購入して生産ラインに△△を設置した、などの活動内容の報告があり、確認すると確かに新たに購入したものが設置され、作業しやすそうになっているのを見て、改善に取り組んでくれているんだなとホッとしたそうです。

しかし、次第に報告がなくなり、なにか新しいものを購入した様子もない。

そろそろ半年経つので、精算をしようかと経理の事務員さんから現場に声をかけたところ、数日後に数十円のお釣りといくつかのレシートが返ってきましたが・・・

そのレシートを見ると、確かに現場で使いそうなものだけど、5S活動で買うか?と思う様な備品や消耗品が購入されていて困惑。疑いの目でレシートの確認が始まり、購入の日付を見ると、8割くらいが事務員さんに精算しようと言われた後のものばかり。

改善の取り組みがされていないのは薄々感じてはいましたし、それをキチンと管理していなかった私が悪いのですが、お金が改善のために使われたのではなく、余っているお金使わないと損とばかりに慌てて購入したというのがすぐにわかりました。

やっぱり改善してもらえてなかったんだとがっかりした以上に、こんなお金の使い方ってアリ?とさらにがっかり。

社員のこの行動に、なにか言ってやろうか!(怒)と思ったものの、自分の管理に関してもツッコミどころが多すぎて言える立場じゃない・・・(泣)

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状況イメージできましたでしょうか?

社長の心境お察しいたします、と言ったところです。

改善活動は行われず、お金も意図した使い方がされず。

これはある工場の一例ですが、何かを「社員に任せる」ということと「社長が口を出す」ということのバランスが悪いとこのような結果になる、というわかりやすい例ではないでしょうか。

「社員に任せる」というときに、とても重要なことがあります。

それは「社員の能力を知る」ことです。

この例では「知る」の言葉を、「受け入れる」と言い換えた方がいいかもしれません。

余ったお金を、使わずに返してしまうくらいなら、他に必要なものを買った方が得、とそのような判断をする社員の「お金の使い方に関する一般常識」がないのは明らかです。その常識のなさを受け入れた上でお金を渡さなければいけません。いやその前に、この社員にお金を渡してはいけません。

やらせてみないとわからないから、ということもあるかもしれません。だからドブに落としたと諦めのつく50000円の設定ではあったようです。

そしてお金の使い方を除いた改善活動の成果についても、当然経営改善につながるはずもなく、「改善活動はやらなければいけないから」という製造業のしがらみともいえる思い込みで行われています。

チリつもで、小さな改善をコツコツ続けていかなければ経営改善に結びつかない、という考えもあるようですが、チリが積もるまで待てる財務状況であればそれでよいです。

また、掃除のひとつもできなければ製造なんかできない・・・という考え方もありますが、いくら掃除機をうまく使えるようになっても生産技術が身に付くことはありません。

経営改善につながるほどの改善に関する知識や技術を、社員が持ち合わせていないこともわかっているはずです。

結果的に、現場の社員による改善活動は、その能力も持ち合わせていない上に、意思に反して強制的に行う活動になっている、ということです。

しかし経営をしていく上で、改善そのものはやらなければいけません。業務の生産性向上はもちろん、設備の停止時間は少なくしなければいけませんし、過剰在庫は減らさなければいけません。

社長は様々な経営課題に対して、現場の社員のみなさんはどんなことならできるのか、どんなことからしてもらえばいいのか、これを実行するには簡単な○○から始める、できるようになったら難易度が少し高い△△をやってみる、のような道筋を考える必要があります。

社員の能力が低ければ、その程度の難易度の低い改善しかやってもらうことはできません。社長はまずは、それを受け入れなければいけません。

次第に社員の能力が上がれば、社長の意に反するような意見を言うようになるかもしれません。それを受け入れ「正しい対応」をしなければいけません。

それがなければ、社員が社長の意図する方向に動くことはありません。

例の工場の社長は後悔しておられました。

お金を渡した社員と飲みに行ったことがあるそうです。社長が「今日は私が全部出すから!」と言ったとたん、メニューに載っているすべてのデザートを頼んだそうです。食いっぷりは見ていて気持ちよかったそうですが、遠慮のかけらもない。この時に気付くべきだったと・・・。

社員の能力を受け入れ、正しい対応ができていますか?

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