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問題社員を「変える」か「替える」か──辞めてもらうことも経営である

SPECIAL

年商10億事業構築コンサルタント

株式会社ワイズサービス・コンサルティング

代表取締役 

指導暦18年、これまでに200社以上の実務コンサルティング実績を持つ経営コンサルタント。「10億円事業構築」に強みを持ち、直近5年では、導入後数年で年商数億が10億越えをした企業は20社以上と驚くべき成果を出している。

「彼には、辞めてもらいました。」
不動産業を営むT社長は、静かにそう言いました。
 
 その社員については、1か月前に相談を受けていました。
部下や業者に対して強い暴言を繰り返し、社内外からの不満が募っていたのです。
長年在籍していたものの、態度も業務のやり方も変わらず、組織の足かせとなっていました。
 
 私は言いました。
「大変でしたね。」
 
 するとT社長は少し微笑み答えました。
「そうでもないですよ。これでスッキリしました。むしろ、もっと早く決断すべきだったのです。」


問題社員への二つの選択

問題のある社員に対して、社長の選択は二つしかありません。
「変える」か「替える」か。
非常にシンプルです。
 
 「変える」を選ぶのであれば、その本人に明確に伝えることです。何を、どのように改めてほしいのか。伝え方を工夫し、改善の機会を与えます。
 
 一方で「替える」を選んだのであれば、速やかに行うことです。ただし、逆恨みされないようにきちんと手順を踏み、関係者への根回しもしておくことです。
 
 その見極めの基準は、態度と基礎能力です。
態度が悪い、素直さがない、協力的でない──こうした姿勢が続く場合。
あるいは、何度教えても覚えられず、基礎能力が決定的に不足している場合。
このときは、残念ながら「替える」しかありません。
そこに「素直さ」がなければ猶更です。

 

辞めてもらうのは社長の責任です

もちろん、一度採用した人を辞めさせるのはつらいことです。本人にとっても遠回りをさせてしまったという後ろめたさが残ります。
 
 しかし、我々の会社は少人数で成り立っています。誰か一人の態度が悪ければ、その負担は周囲に広がり、組織全体の信頼関係が壊れてしまいます。
それを放置すれば、多くの社員が迷惑を被り、やがて社長自身の信頼も失墜します。

 

「首を切らない経営者が偉い」という誤解

かつて私が所属していた経営者団体でのことです。ある上層部の経営者が、大きな講演イベントでこう語りました。
「世界的な不況のときも、私は一人の首も切らなかった。」
会場は大きな拍手に包まれました。
その後、この会では「首を切らないことこそが経営者の責任である」という空気が広がっていきました。
 
 しかし、これは全くの誤りです。
会社も一つの社会です。それ以上に、会社は「目的を持った一つのチーム」です。そこには、必ず守ってもらわなければならないルールや秩序があります。必ず「替えなければならない場面」が訪れるのです。それを避けては通れません。

 

仕組みで「替える」を減らす

ただし、そんな辞めさせる社員をつくらないために社長がやるべきことがあります。
・募集で、そのような人がよってこないようにする
・採用時に「入ってはいけない人」をしっかり見極める
・訓練プログラムを整備し、早期に不適格者を判断できるようにする
・評価制度と面談で、態度や成果を継続的に確認する
こうした仕組みを持てば、「替えざるを得ない人」を最小限にできます。
 
 そして、今回のT社の対象者は、仕組みを整える「前」に採用した人でした。
仕組みの整備が進んでいくほどに、その不適合さが際立ってしまったのです。

 

提言:社長は淡々と替えるという判断をする

経営者にとってつらい決断ですが、辞めてもらうこともまた経営の一部です。
それを放置すれば、より多くの人が苦しみ、やがて会社全体が崩れてしまいます。そして、お客様や業者様の期待に答えられなくなります。
 
 だからこそ、正しい採用と訓練の仕組みを整えましょう。
そして、必要なときには勇気をもって「替える」決断をしてください。
正確に言えば、感情に流されず、淡々と「替える」判断を下すのです。
 
 その姿勢こそが、残る社員に「この社長は信頼できる」という安心を与えるのです。
 
 
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