社員50人の壁・100人の壁、よくある3つのワナ
「気合いと根性」でここまで来た。——でも最近、なぜか前に進みにくい。
ビジネスの成長に伴い、どうしても社員を増やさないと回らない、
そんなタイミングがあります。
社員数が30人を超え、50人に近づく頃から、そして100人前後で再び、
会社は似たようなロードブロックに直面しがちです。
共通する原因はシンプルで、これまで、社長の個人技で回していた暗黙のルールが、
会社の“仕組み”として設計されていないこと、が散見されます。
昔は、学校の1クラスの規模は45人前後の頃もありましたが、今は減っています。
やはり30人を超えてくるあたりから、
先生も生徒全員に目が行き届かなくなってくるので、という理由です。
これは会社でも似ていて、30人を超えて50人近くなってくると、
社長直結のラインだけでは捌けず、初めての“中間層”が要になってきます。
その結果、役割の重複、業務指示の渋滞、会議の情報連絡会化、等の現象が起きます。
さらに、100人の声が聞こえてくると、部署内最適、部署間での軋轢、
顧客より内部優先の論理、といったことも表面化してきます。
業務のプロセスも、ビジネス規模の拡大とのアンマッチが発生するようになり、
創業時のメンバーからすると、お役所化・大企業病といった感覚になってきて、
社員の間でも、感覚や価値観のズレが目立ってきたりします。
<ワナ①>スーパーマン社長症候群(=意思決定のボトルネック化)
あらゆることに関して、最後はすべて社長が決裁する。
そのため、現場が「社長の好み」を忖度し、
判断と行動のスピードが落ちてしまうのは、よく見られる現象です。
もちろん、社長が全てのことに責任を負うのは当然ですし、
あれこれ任せることが正しいわけではありません。
ただし、権限移譲すべきことを徐々に定義して役割権限の設計を行ったり、
会議体とその役割・決定方針等を設計して、
それが社長の意思通りに着実に判断されるように、訓練を重ねていく必要はあります。
結果として、社長の出番を「健全な形」で減らすことにより、
社長は日常運営から、将来に向けた戦略の構想に、よりエネルギーを割くことができ、
さらなる成長と飛躍を呼び込むことにつながります。
<ワナ②>仕組み“単品”導入のバラバラ最適(=言行不一致の顕在化)
会社組織の拡大に伴い、さまざまな制度や仕組みの導入を進めたものの、
それらが断片的でバラバラに設計されたことで、
全体として有機的につながっていない、というケースもよく見られます。
組織と役割権限、意思決定の会議体、経営幹部の役割、役職と処遇、
評価制度と報酬設計、教育研修、等々・・・
一見別々の話のように見えても、必ずどこかでつながっているのは、
会社組織という「生き物」の面白さ、とも言えますが、非常に厄介です。
これらを、会社としての進むべき道筋や方針に合わせて、
一貫性を持った形で有機的に機能するよう、体系的な仕組みとして設計することが、
社長の個人技からの脱却を大きく支援してくれます。
<ワナ③>“空気は勝手に良くならない”の法則(=組織風土のなりゆき化)
会社や職場の空気に従えば、多くのことが「黙っていても伝わる」と思いがちです。
実際に、これまではうまく機能したのだから、あえて新しいことはしなくても、
みんなが空気を読んで、学んでくれればいい話、と思いたくもなります。
しかし実際には、組織拡大の環境下では、無言の同調圧力、そして面従腹背も増えて、
成り行きに任せていると、勝手に不健全な組織に向かっていくことがあります。
組織規模が拡大し、新しい人種が増えていっても、強みを維持できる組織は、
前述の構造や制度・仕組みを実装しながら、「職場の空気」「組織の風土」も設計し、
意図的にコントロールしています。
やや極端な例ですが、軍隊や宗教団体のような強い組織でも、
目的に適した風土を意図的にデザインし、個人をある意味では軽く洗脳して、
さらにそれを下支えする仕組みで回しています。
組織の風土は偶然の産物ではなく、社長の個人技でもなく、
意図的に実装していく設計物・構造物、という考え方が求められます。
以上3点、かなりざっくりとした話ですが、社員が50人・100人に近づく時には、
組織内の意思伝達や情報収集の方法、行動原理を刷新していかないと、
どこかでトップ1人へのしわ寄せが顕在化し、
領域によっては、組織の機能不全に陥ってしまうリスクをはらんでしまいます。
会社の成長で、大きな節目が来たと感じたら、
一歩引いて、冷静に組織の状況を見つめて、個人技の限界を越えるための、
組織統率・運営の仕組みを見直すべきタイミングを見極めることが、
会社が次のステージへ飛躍する、スピードの向上に直結することでしょう。
あなたの会社は、“個人技”から“仕組みの強さ”へ、次の飛躍への実装ができてますか?
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