年功序列を好む若者増加と寄らば大樹現象の行方
「自分の意見が通らないから会社を辞める」「希望の部署に異動できないから転職する」――ここ数年、20代の若手からはそんな愚痴をよく耳にしました。ところが最近、風向きが大きく変わっているようです。
――新入社員の過半数が「年功序列」を望む。
先日、新聞でこの見出しを目にして、思わず頭が真っ白になりました。
「年功序列」や「終身雇用」といえば、かつては日本型雇用の美徳とされつつも、時代が変わるにつれ「若手が活躍できない仕組み」の象徴のように扱われてきました。ところが、再びそれを歓迎する若者が増えているというのです。
いったい何が起こっているのでしょうか。
出所はパーソル総研の調査です。2019年と2025年を比較すると、若者の価値観が「成長志向」から「生活優先志向」へと大きくシフトしていることが浮かび上がります。
以下は、2019年を100とした場合の2025年の数字。
- 仕事を通じて成長したい 91.1
- やりがいのある仕事がしたい 92.5
- 自分の可能性が広がる仕事がしたい 92.4
こうした成長志向の数値が軒並み低下する一方で、
- 勤務場所に融通がきく職場で働きたい 128.6
- 働くことはお金を得るための手段に過ぎない 117.1
と、生活優先の数値が大きく伸びています。
2019年といえばコロナ禍前。以来、学生時代をオンラインで過ごした世代は、仲間と競い合う経験や、共に苦労して達成感を味わう経験が少なかったのでしょう。その代わりに学んだのは、生活を守ることの大切さです。だからこそ「安定志向」や「寄らば大樹」に惹かれるのも理解できます。
ただ、ここに企業としての課題があります。コロナ前の若者は「成長意欲あふれるがゆえに簡単に転職してしまう人材」でした。いま増えているのは「安定を重視し、会社にぶら下がりたい人材」です。どちらも扱いが難しいのですが、後者の方が厄介かもしれません。仕事にモチベーションの源泉を持たないからです。
これは一過性の現象なのか、それとも大きなトレンドの兆しなのか。今後を見極める必要があります。ただ一つ言えるのは、会社側が手をこまねいていれば、若手だけでなく中堅社員までもが「生活防衛志向」に飲み込まれ、組織全体の活力が失われてしまうことです。
だからこそ、経営者や人事は社員の眠っている好奇心や「働くことの面白さ」を呼び覚ます仕掛けを持つ必要があります。これは新人だけでなく、日常に慣れすぎた中堅層にも当てはまります。
社員の意欲を引き出す手を打ち続けることができるかどうか。これがこれからの企業の競争力を大きく左右します。
御社では何か取り組まれていますか。もしまだ何も…というのなら、手遅れになる前に一歩踏み出しましょう。
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