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現場の疲弊は”構造のせい”か“関係性のせい”か?

SPECIAL

マインドポジション経営コンサルタント

株式会社アトリオン

代表取締役 

マインドポジション経営コンサルタント。社員と顧客の心に占める貴社の位置づけ―「マインドポジション」をアップし、業績向上を目指す仕組み構築のスペシャリスト。30年にわたる中小企業のブランディングと組織開発の経験を背景に、マインドポジション経営実践プログラムをオリジナル開発。時代に合わせて組織を刷新したい経営者や、2代目、3代目社長、社員の力を引き出して社内の体制を再構築したい経営者に高く評価されている。新しい切り口に基づく事業の見直しと組織の再開発を通して業績の2ケタ成長を実現するなど、持続可能な企業の成長に向けた力強い支援に定評。株式会社マインドポジション経営研究所代表取締役

「また一人、会社に来なくなっちゃったんですよ」。とある企業に勤める友人が、雑談のなかでぽろっと言いました。そういえば、この手の話、最近どこでも耳にします。会社を休みがちな人がいる、長い休業を経てやっと戻ってきたと思ったら、また姿を見せなくなる。そして退職してしまう――。珍しい話ではなくなっています。

ハラスメント防止法の施行もあり、人間関係に起因するトラブルが表に出やすくなり、解決の道筋が用意されるようになりました。それ自体は前進ですが、問題の根っこは解決されないまま。くすぶり続けた火種が、また別のかたちで現場を疲弊させています。

現場が疲弊する背景には、必ずと言っていいほど「構造的な問題」があります。今回は、その構造に目を向けます。

まず挙げたいのが「過重労働」。昔のような“無茶ぶり”型の過重労働は、さすがに減ってきましたが、厄介なのは本人も上司も気づかない“意図しない過重労働”です。

特に多いのが、組織の仕組みや仕事の進め方そのものが、負担を増やす原因になっているケースです。

たとえば――

  • 社長や管理職への依存度が高い。現場は自分で判断せず、上の顔色を見て動こうとする。
  • 指示待ちが常態化し、期限直前に仕事が一気に押し寄せる。

結果として短期間で業務を詰め込み、過重労働になります。

さらに深刻なのが、指示や方針がコロコロ変わる会社です。経営環境が変化する今、トップの意思決定が揺れること自体は理解できます。でも現場からすれば、「せっかくやったことが無駄になる」体験が積み重なり、徒労感が募ります。「どうせまた変わるんだろう」という諦めが広がり、モチベーションはみるみる落ちていきます。

次に挙げたいのは、役割や責任の線引きがあいまいなことです。

“できる人”のところに仕事が集中する。逆に“抱え込む人”が仕事を止めてしまう。中小企業ではよく見られる光景です。本人は「自分がやらなきゃ」と必死に頑張っていますが、組織全体で見れば極めて不健全な状態です。知らないうちに負担が偏り、気がついた時には、誰かが倒れている…そんなケースも珍しくありません。

厚労省の調査によれば、2018年から2022年にかけて「休業または退職のあった事業所」の割合は約6.7%から13.3%に倍増。1か月以上の休業者が出た事業所は直近3年間で約10%にのぼります。

人材不足が課題のいま、現場の疲弊は会社にとって致命傷です。さらに怖いのは、疲弊は連鎖するということです。一人が倒れれば、周囲にしわ寄せがいき、また一人、そしてもう一人と疲れていきます。

こうした現場の疲弊を「もっと頑張れ」「気持ちで乗り切ろう」という精神論で済ませてはいけません。

必要なのは、「個人の頑張り不足」ではなく「組織の構造問題」として捉え直すことです。構造に手を入れなければ、同じことが何度でも繰り返されます。

とはいえ――
経営者やリーダーならこう思うでしょう。「そうは言っても、無理を承知でお願いしなければいけない時がある」と。

それは事実です。納期が厳しい案件、会社の命運をかけた大きなプロジェクト、突発的なトラブル…。現場に一時的に負担をかけてでも突破しなければならない時は、必ずあります。

このとき鍵になるのは、“日頃どれだけ関係性を築けているか”です。

普段から

  • 判断の理由を伝え、
  • 役割を明確にし、
  • 負担が偏らないよう気を配り、
  • 声を拾って改善につなげているか。

その積み重ねが、いざというときに「よし、一緒にやろう」と現場が腹をくくれる土台になります。

「今のやり方で、現場は力を発揮できているだろうか?」
「難題が押し寄せた時、全員で力を合わせられるだろうか?」

そんな問いを、自分に、そして会社に向けて、ぜひ一度投げかけてみてください。

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