業績の変動に機敏に対応する

親子経営企業の強みを活かすことでできること、2つ目のお話。
【業績の変動に機敏に対応できる】
オーナー経営者による経営のリスクについては多くの方が容易に想像がつくこことだろう。酷いケースでは企業不祥事として表面化し、場合によっては倒産、廃業に至ることがある。
ただ、企業不祥事を起こした経営者が代わることで経営が一新され、業績が回復するケースがある。例えば、父親である経営者が不祥事を起こしたけれど、後継者が経営者となり経営を立て直したということも結構聞かれる話である。
一方、大手企業はというと、サラリーマン経営者が経営することのリスク、プロ経営者が経営することのリスクが実は多くある。サラリーマン経営者のリスクのひとつは、組織が大きければ大きいほど組織の論理を優先させてしまうことだ。
言うなれば、「会社のため」というお題目を唱えながら、経営者が自分の保身、組織の保身に奔ってしまうことに尽きる。それ故に、初めは小さな不祥事であったものを、隠蔽することで表面化したときに大きな企業不祥事にしてしまう。
また、プロ経営者のリスクのひとつは、自分の評価、価値を最大限に高めることを目的とするため、社内でいろいろな軋轢を生じさせることにある。自分の手腕をアピールするため、多くの無理、難題を役員、社員に負わせてしまう。
一般に、大手企業で企業不祥事が起きたとき、結構長く回復に時間がかかってしまう。組織が大きければ大きいほど軌道修正に時間がかかる。まるで、大きな象が倒れたなら、起き上がるのが簡単ではないのと同じように。
一方、親子経営企業の場合、大手企業と違い時間と資金に余裕がない。よって、速やかに経営戦略を立て直し、経営刷新に早急に取り組む必要に迫られる。それができなければ市場から退場するしかないのだから。
勿論、すべての親子経営企業が企業不祥事、業績不振といった経営危機において機敏な対応がとれると言っているわけではない。当然、経営者の能力、資質次第であることは言うまでもない。
経営者、或いは後継者が経営トップとして、業績不振から立て直すため先頭に立って役員、社員を引っ張っていく。経営トップの必死で懸命な姿を目近で見た役員、社員が自ら進んで各自の役割を果たしていく。
そんなドラマのストーリーのような復活劇を、実際に多くの親子経営企業が成し遂げていることを私たちは知っている。
誰もが知る伊勢の名物「赤福餅」を製造販売している株式会社赤福という会社がある。多分に漏れず赤福も2007年、消費期限偽装という企業不祥事を起こしている。当時、全国で食品関連で産地偽装、消費期限偽装などの企業不祥事が相次いで起こっていた。
よくある消費期限偽装は、単純に消費期限を書いたシールを張り替えるというものだった。赤福の場合、消費期限が過ぎた商品を各店舗から回収し、餅は餅、餡は餡に取り分け、再び商品として再利用していた事件である。
よくよく考えてみれば、餅と餡はどちらも結構日持ちがするもので、そうは簡単に腐るというものではない。捨てるには勿体ないと考えた経営者が再利用していたのだろう。ただ、消費者としては許しがたい行為であるのは間違いない。
当時、経営をしていたのは70を過ぎた父親である会長だ。長男は社長とはいえ、実権のない社長であったようだ。不祥事をうけ、責任を取って会長が辞任した。それまで社長とはいえ実質なにもさせてもらっていなかった長男が社長として、ブランドが地に落ちた赤福の再建に取り組むこととなった。
赤福の長男は真摯に懸命に再建に取り組んだ。結果、世の中のみんなが驚くほど速く、業績を回復させることになった。詳細は省くが、実に見事な企業再建の例だ。
経営者が代わり、社員が変わり、会社が変わることは、すべての企業に起こる。ただ、同族企業であり、オーナー企業である親子経営企業の経営者は経営者の意思、意向を役員、社員に浸透させ、業務の遂行力を高めることが、大手企業経営者に比べると、条件的に優位であることは間違いない。
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