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「決まっていますか」──曖昧な方針が現場を迷わせる

SPECIAL

年商10億事業構築コンサルタント

株式会社ワイズサービス・コンサルティング

代表取締役 

指導暦18年、これまでに200社以上の実務コンサルティング実績を持つ経営コンサルタント。「10億円事業構築」に強みを持ち、直近5年では、導入後数年で年商数億が10億越えをした企業は20社以上と驚くべき成果を出している。

特殊部品加工業のM社長と製造部長が来られました。
私は、以前からM社の方針書は「具体性がない」と指摘していました。
今回は「来期の方針書ができたので見てほしい」とのご相談です。
 
 ページを開くと、そこにはこう書かれています。
『設備を止めないように整備・点検を徹底する』
 
 私は、その一文だけを取り上げて確認することにしました。
「製造部長、徹底するとは何を徹底するのですか?」
「・・・それですね・・」
 
 「整備や点検のタイミングは決まっていますか?」
「・・・」


問題が起きた時に確認すべきことは「決まっているか」

現場で問題が起きたとき、最初に確認すべきは一つです。
「それは、決まっていますか?」
 
 多くの会社では、問題の議論がいきなり「やっているのか、やっていないのか」へと飛びます。これは人に向かっていることを意味します。
 
 そこにいきなり行ってはいけません。
まず確認すべきは「それは、決まっていますか?」です。
 
 冒頭のM社でいえば、たとえば次のようなことです。
・年・月・週・日の整備のスケジュールは決まっているか
・その際に点検すべき項目やその手順は決まっているか
 
 これが決まっていないのに、「やっていない」は存在しないのです
決まっていないものは、実行できず、責めることもできないのです。
 
 まずは「決めること」。そこからすべてが始まります。

 

「強化する」「徹底する」は、何も決まっていない

目標設定が苦手な会社ほど、方針書に次のような言葉が並びます。
「強化する」、「徹底する」、「推進する」
 
 一見、意欲的に見えますが、実は何も“決まっていない”のと同じです。
「何を強化するのか」
「どの水準まで行うのか」
「誰が、いつまでに、どのように」
 
 これが書かれていなければ、それは方針ではなくスローガンです。
スローガンでは人は動けません。
「強化」、「徹底」、「推進」では、自分が何をすればいいのか全くイメージできないのです。
 
 その結果、管理者は動けず、現場は何も変わらない。そして、社長から責められた時には、「すみません、頑張ります」と答えることになります。

 

方針を「目で見える行動」にまで分解せよ

曖昧な表現は、行動レベルまで分解することで初めて意味を持ちます。
行動レベルとは、「目で見える」状態のことです。
 
 たとえば先ほどの一文なら、次のように分解できます。
 
 ・点検の種類:日常点検/週次点検/月次整備
・担当者:オペレーターが一次点検、整備担当が月次
・基準:稼働時間100時間ごとに必須
・管理方法:チェックシート記入+日報提出
 
 ここまで落とし込んで初めて、「徹底する」が“決まったこと”になります。
ここまで決めて、初めてそれは方針になり、やっとスタートを切ることができるのです。

 

問題解決は、三段階で考える

問題が起きたときは、次の順番で考えることになります。
1.決まっているか、決まっていないか
 
 決まっているのであれば、次に進むことができます。
2.その決まっていることを、やっているのか、やっていないのか
 
 やっている、でも問題が起きているのであれば次です。
3.そのやり方は、合っているか、合っていないか
 
 ほとんどの問題は、1の段階で止まります。決まっていないのです。
「社員がやっていない」ときは、「決まっていない」ことがほとんどです。
 
 決まっていると言っても、文章になっていないことが多いのです。
このコラムで何度もお伝えしている通り、口頭で言っているだけでは、それは「決まっていない」のです。

 

提言:決めることが経営である

経営とは、「決める」ことです。
・自社は何をする会社か。
・うちの事業はどうあるべきか。
・今後どのように成長していくのか。
その決めたことをまとめたモノが経営計画書です。
 
 そして、そこから部署ごとの方針に展開します。
たとえば、
「製造部は何を達成するのか」
「どのような仕組みをつくるのか」
これが方針になります。その方針に期限がつくと目標になります。
 
 組織とは、“変える機能”です。顧客満足や生産性の向上のために、いまのやり方を再定義することです。
仕組みとは、“定義すること”です。つまり「決めること」なのです。

 

まとめ:会社は驚くほど速く変わる

社内で使う言葉を、変えることです。
「強化する」、「徹底する」、「推進する」、この言葉を使っている限り、仕組化も組織化も進みません。
 
 それらを具体的にすることです。具体的になるまで質問をすることです。
「それは決まっているのか?」
決まっていないのであれば「何をつくる?マニュアル?管理表?」と詰めます。
 
 社長がそれを管理者に問いかけるのです。
すると、管理者もそれに倣い部下に問うようになります。
その結果、会社全体の“発想”が変わるのです。
 
 会社で使う言葉を変えることで、会社は、驚くほど速く変わることになります。
 

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