地盤・看板・顧客・取引先・与信・人脈が引き継がれる

今日は親子経営企業の強みを充分に活かした経営スタイルにはどのようなことがあるのか、第3話をお届けする。
【地盤・看板・顧客・取引先・与信・人脈が引き継がれる】
親子経営企業には経営者なら誰もが羨む経営資源が多くある。後継者にとっては初めから在るものなので、それらが自社の大切な経営資源だと意識していないかもしれない。起業家、創業者からすれば、喉から手が出るほど欲しいものばかりだ。
まず一つ目は、地域に根ざした「地盤」、業界での実績という「地盤」が代々引き継がれることになる。創業から長い年月が経つと、会社がある地域が企業にとってのいわゆる「地盤」だといえる。
地域には顧客がいる。取引先がいる。地元の従業員、社員がいる。経営者の身内親族がいる。経営者の友人、知人が多くいる。時の流れとともにそれらの関係が網の目のように広がっている。まさに、地域に根差した「地盤」といえるものだ。
また、長年の経営実績の積み重ねが、業界における確固とした「地盤」を創り上げている。例えば、建設業界のリーダーであるとか、地元観光業界における老舗であるとかいった立ち位置がすでに出来上がっている企業がある。
これら地域に根差した「地盤」、業界での築き上げてきた「地盤」、などによる得難い経営地盤が親子経営企業には存在する。
次に、親子経営企業には長年の経営実績による輝かしく、誇らしい「看板」がある。特に、老舗企業の「看板」には長年にわたる顧客からの信用と信頼に裏付けされた伝統と格式が備わっている。
世界に100年以上の歴史を持つ企業は約8万社あると言われている。そのうち、約3万3千社が日本企業だそうだ。なぜ、日本企業にそれだけ多くの老舗企業があるのだろうか。私が思うに、商いで最も大事な「信用」というものを日本人は特に意識し守ってきたからではないだろうか。
昔の商人はお店の「看板」に傷がつくといって、不祥事を決して起こさないよう十分に気を付けていたものだと思う。限られた地域だけで商いをしていたお店は、地域の顧客の信用を第一に考えていた。そんな彼らからすると、昨今日本でよく起きる企業不祥事など考えられないことだろう。
続いて、親子経営企業には長くご愛顧いただいているたくさんの「顧客」がいる。起業した経営者が一番欲しいものは顧客だ。起業したての経営者のみならず、経営者なら今以上の顧客を常に求めている。
これから会社を継ごうとする後継者には、ありがたいことにすでに多くの顧客がいる。親の代からの顧客、さらには祖父の代からの顧客までいるかもしれない。長年買い続けてくれている顧客ほどありがたいものはない。
また、親子経営企業には商品を仕入れたりサービスを提供し続けてくれるている「取引先」がある。これも企業したばかりの経営者からすれば羨ましいことだ。新しい会社が取引先を見つけることは簡単なことではない。
長年地域で経営し続けているからこそ、地域の取引先が付き合ってくれている。また。地域の取引先は同じような親子経営企業であることが多い。同じ親子経営企業同士ということでの繋がりも確かにある。それこそ、親の代、祖父の代からの取引先というのもあるだろう。
さらに、親子経営企業には一長一短には得られない金融機関、取引先の自社に対する「与信」がある。これも起業したばかり経営者には痛いほどよく分かる話。起業して金融機関に取引口座を開くだけで一苦労してしまう。
まして、金融機関からお金を貸してもらうなど夢のような話なのだ。同様に、取引先に商品を売ってもらおうとすると、これも簡単にはいかない。当然、初めは現金を求められる。それも仕入れる前に全額払って欲しいと言われるだろう。
相手が一流といわれる大企業なら、現金があっても即取引とはならない。初めての取引では門前払いを受けることになる。企業としての実績、企業としての業績が問われる。金融機関、取引先ともに自社の「与信」があっての取引となる。
そして最後に、親子経営企業では父親、祖父の代から代々引き継がれている「人脈」という得難い資産がある。父親の「人脈」、祖父の「人脈」というと、一見、なにやら煩わしそうと思うかもしれない。
向こうからすると、友人知人の息子であり、孫となる。若い後継者を可愛がってやろう、引き上げてやろうとするのが自然である。誰も、若い後継者を虐めてやろう、ましてや貶めてやろうとは思わないものだ。
後継者からすると、人生の、仕事の大先輩である彼らから教えられること、学ぶことは多くある。積極的に後継者から進んでお会いしに行くべき方々である。後々、彼らが後継者にとって得難い「人脈」となるのは間違いない。
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