お金を守る2代目社長の借入戦略
同族会社の社長は、先代から事業を引き継ぐ際、事業だけではなく取引先との関係性も引き継ぎます。もちろんその中には、金融機関との関係性も入っています。
しかし、多くの社長が陥るワナがあります。それは、「先代の時代に築いた良好な関係が、自動的に自分の代でも続く」という思い込みです。
金融機関によっては、担当者や支店長が年に2回以上代わることもあります。融資の決裁権を持っている支店長クラスも、2年ほどで代わることは珍しくありません。
ですから、どんな支店長に当たっても、どんな担当者が来たとしても、万全の体制で資金供給ができるように、美しい決算書作りを社長はすべきなのです。
その上で、借入をする上で、社長が持っておくべき、一番大事な考え方があります。
それは、銀行借入は、本来「自己資金を貯めるための時間を買うもの」という考え方です。銀行借入は本来、前向きな投資のために、戦略的に活用するものであることを、忘れてはいけません。
金融機関の担当者は、社長の財務に対する理解度と、会社の財務体質をよくよく意識して見ています。例えば、決算書の説明を求められた時、単に「今期は売上が増えました」と答えるだけの社長と、
「今期は売上が増えましたが、資金繰りを考慮した粗利率の改善や、受発注の見直しをしました。その結果、自己資本比率が〇%向上し、債務償還年数が〇年になりました。」
と具体的な数字で説明できる社長とでは、担当者の評価は全く異なります。
また、担当者との面談では、単に融資の相談をするだけでなく、自社の財務戦略や5年後、10年後のビジョンを語ることも不可欠です。もちろん数字で具体的に・・・です。
金融機関の担当者は、社長の経営に対する考え方や、財務に対する姿勢を常に観察しています。
「お金が足りなくなったら借りればいい」という場当たり的な考え方なのか、それとも「会社にお金を残すための明確な戦略を持っている」という計画的な考え方なのか、数回の面談で見抜かれてしまうのです。
さらに重要なのは、良い時だけでなく、厳しい時も正直に報告することです。業績が悪化した時にこそ、早めに相談し、改善計画を示すことで、担当者からの信頼を得ることができます。
信頼関係とは、テクニックではなく、社長自身が財務と真剣に向き合い、その姿勢を一貫して示し続けることで築かれるものなのです。
多くの社長は「お金がない」と嘆きますが、実は「お金がない」のではなく、「お金の使い方を間違えている」ことが大半です。
経営者にとってのお金とは、「会社の未来を創るための選択肢」です。お金があれば、新規事業に挑戦できます。設備投資ができます。優秀な人材を採用できます。お金があれば、守りの経営だけでなく、攻めの経営判断ができるようになるのです。
逆に、お金がなければ、どんなに良いビジネスチャンスがあっても、実行することができません。常に資金繰りに追われ、目先のことしか考えられなくなってしまいます。
経営課題の99%は「お金」があれば解決できるのです。そして、金融機関との関係においても、この視点が最も重要になります。
しかし、財務を理解していない社長は、「資金不足の穴埋め」として借入を考えてしまいます。これでは、いつまで経っても借入依存から抜け出せません。
経営者として大切なことは、5年後、10年後を見据えた財務計画を持つこと。そして、その計画を実現するために、「今、融資を受けるべきかどうか」「どんな条件なら融資を受けても問題ないか」を、社長自身が判断することなのです。
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