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家訓として後継者は長男と決めている

SPECIAL

親子経営コンサルタント

ビジネス・イノベーション・サービス株式会社

代表取締役 

オーナー社長と後継者のための、「親子経営」を指導するコンサルタント。みずから100億円企業を築くも、同族企業ならではの難しさや舵取りの大変さで苦しんだ実体験を指導。親から子へ失敗しない経営継承の極意として「親子経営」を伝授する。

家訓として後継者は長男と決めている

 

拙著『親子経営の教科書』(マネジメント社)の出版の際、5社の親子経営企業で取材の機会を得ることができた。5社のケースから親子経営企業の経営エッセンスを読み解いた。今日はその第3話。

【家訓として後継者は長男と決めている】

 これは一つのケースとしての話。昭和以前の封建主義制度ではと思われるかもしれない。実際、私の顧問先親子経営企業では、次男が社長だという会社が結構ある。私の個人的意見を言うなら、できる者がすればいいと思っている。

このケースでは、現在3代目社長まで長男が経営者になっている。自然とそうなったという会社が多いだりうが、このケースでは家訓として、長男が後継者となると決められている。さらには、次男以下の身内親族は会社に入れないとも決められている。

創業者の祖父がそう決めたようだ。相続の際、株式はすべて長男に相続させている。長男以外の子息、息女には会社の株式以外の資産を当て不満が出ないよう配慮されている。このケースの場合、先代の社長の弟の話が面白い。

先代の弟は父親の方針で自社に入ることを認められず、他社に勤めることになった。ところがその会社の待遇が悪く、給与が少なくて困っていると相談を受けた。自分の会社に来ればいいと言いたかったが、先代が残した家訓に逆らえず、知人に弟を託した。

結果として紹介され再就職した会社が大きく成長することになる。そしてとうとう上場にまで至る会社となった。結果としてその弟は、大手上場企業の代表取締役まで登り詰めることになったという。

また、当代である三代目の弟も独立して仕事をしているようだ。幼い頃から、長男は後継者として育てられている。次男以下の子どもたちは、幼いころから、家業としての会社は長男が継ぐものとして育っている。

このケースでは、世によくある、お家騒動の芽を始めから摘んでいるのだといえるかもしれない。一方で、長男の出来が万一、悪ければどうするのだろうかと危惧せぬでもない。ただこのケースでは、これまでのところ上手くいっているようなので大きなお世話といったところだろう。

 一見すると、この「長男承継・他の子は入れない」という家訓は、時代に逆行しているように映るかもしれない。だが、経営という観点から見れば、これほど極めて合理的な仕組みはないといえる。

第一に、後継者問題で迷わない。迷わないということは、社内に無用な期待や憶測を生まないということだ。兄弟間で「自分にもチャンスがあるのではないか」という空気が漂えば、それだけで組織は不安定になる。

第二に、長男本人の覚悟が違う。幼いころから「お前が継ぐ」と言われて育つことの意味は大きい。逃げ道がないということは、同時に腹が据わるということでもある。経営とは、最後は孤独な決断の連続である。

もっとも、私は「長男でなければならない」と主張しているわけではない。能力主義で選ぶというのも一つの正解だ。ただし、その場合には公正な評価軸と、家族全員が納得するプロセスが必要になる。そこが曖昧なまま「できる者がやればいい」と言えば、かえって禍根を残す。

この家訓のもう一つの特徴は、「入れない」という決断である。多くの親子経営企業では、兄弟を会社に入れることが家族の情として当然視される。役割と責任が曖昧なまま身内親族が増えれば、組織は必ず緩む。創業者はその危うさを見抜いていたのだろう。

興味深いのは、会社に入れなかった弟たちが、外の世界で力を発揮している点である。家業という温室から出されたことで、厳しい競争にさらされ、自らの力で道を切り開いた。その結果として、大きく成長する企業の経営者にまで登り詰めている。

つまりこの家訓は、長男だけを縛るものではなく、他の子どもたちの可能性も広げているとも言える。会社を守る仕組みであると同時に、家族それぞれの人生を尊重する仕組みでもあったのではないか。

では、長男の出来が悪かったらどうするのか。これは確かに大きな問いである。しかし私はこう考える。家訓とは、制度であると同時に文化である。長男が継ぐと決まっているからこそ、周囲も本気で育てる。本人も逃げずに鍛えられる。

 親子経営において最も避けたいのは、曖昧さである。誰が継ぐのか、いつ継ぐのか、どんな覚悟で継ぐのか。この問いに対する明確な答えがある企業は強い。このケースは、その一つの極端な形であろう。

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