最適なコンサルティングを今すぐ活用する!

第78号:計画経営の大敵、「実施不全」を誘発する落とし穴

SPECIAL

1人粗利最大化事業づくりコンサルタント

株式会社ポリフォニアコンサルティング

代表取締役 

経営の最重要指標である「1人粗利」を極限まで高める手法の指導に特化した専門コンサルタント。徹底的に“数字”で先導する事業/組織設計による、1人粗利が「増えるべくして増える仕組み」を導入指導する専門機関。事業活動、組織活動をダイレクトに数字に接続していく「BLACKメソッド」を独自開発し、“勘やセンス”ではなく“科学と論理”による再現可能な1人粗利最大化構造を体系化。氏が関わった経営者からは「本当に1人粗利とお金が増えた」「実務感が半端ではない」「勇気ある意思決定ができるようになり経営が楽になった」「あくせくしないゆとりある経営を手に入れた」と絶大な反響が寄せられている。

「シライ先生、その仕組み作りは取り組めませんでした。管理職も忙しくしているものでして、後回しになっています・・・」工場隣の事務所でこう切り出されたのは、製造業を営むT社長のお言葉です。

価格交渉用の資料作り、シフト組みの改善、生産工程の可視化。今月取り組むべき課題として明確に設定されていたはずの項目が、何一つ進んでいない事実に、T社長はどこか申し訳なさそうな表情を浮かべています。

T社は、毎日あくせく動き回っているにも関わらず、一向に利益や時間にゆとりが生まれない泥沼の現状を打破しようとしています。

これまでの「行き当たりばったり」な成行き経営を脱却し、数字に基づいた計画経営へと舵を切ったばかりです。

1人当たりの粗利額、現預金残高、受注単価といった具体的な目標数値を掲げ、いよいよ組織全体で実行に移すフェーズにあります。

ところが、理屈では理解していても、実際の行動が伴わない「実施フェーズの壁」に早くも直面しています。計画を立てること自体に満足し、実行を現場の裁量に委ねてしまう甘さが、この躓きを引き起こす大きな要因です。

後回しによる実施不全に陥るのには、明確な理由が存在します。「目的や意義への理解不足」「タスク細分化の未実施」「チェック機能の欠如」などは、マネジメントの基本として語られる原因です。

しかし、これらの表面的な問題を解決しても、なお動かない組織には、より根深い「報酬不全」という落とし穴が潜んでいます。

「仕組みさえ作れば人間は機械のように動く」ことはありません。人間を動かす動機付けの構造、すなわち「報酬」の設計が不全を起こしている限り、どれほど立派な計画書も、机上の空論として埃を被ることになります。

報酬?給料や福利厚生の話?と思われた方もいるかもしれません。しかしここでいう報酬とは、給与体系や評価処遇のような大掛かりな話ではありません。日常のなかに潜む、密かな欲求に対する充足のあり方です。

報酬は3つの軸で考える必要があります。「精神的か物的か」「大きさ」、そして「時間軸」です。経営者の多くは報酬の「種類」や「金額の大きさ」ばかりを議論の遡上に載せますが、実行力を左右する決定的な要因は、実は「いつその報酬が発生するか」という時間軸の概念にあります。

この時間軸の設計ミスが、現場から「未来を変えるための行動」を奪い去っている事実に気づかねばなりません。

特に後回しの悪癖には、この「報酬発生の時期」が深く関与しています。T社が現在取り組んでいる「核となる提供技術の再設計」や「新たな生産工程の設計」は、極めて思考体力を必要とする重い仕事です。

これらは段取りや完了までの見積もりが不透明であり、いわば「遠い未来の成果のための仕込み」です。今日明日で結果が出るわけではなく、成果が出るかどうかも未知数な状態です。

人間にとって、いつ手に入るか分からない「不確実な報酬」のために、多大なエネルギーを割き続けることは、本能的に苦痛を伴う作業であり、これが実施を阻む高い壁となります。

人は、たとえ価値が大きくても「遠くにある不確実な報酬」より、価値は小さくとも「目の前にある確実な報酬」に強く引き寄せられる性質を持っています。

将来のために必要なはずの仕組み作りを後回しにし、慣れ親しんだルーティンワークや目先のトラブル処理に逃げてしまうのは、そこにある「終わらせた」という小さな達成感の方が、遠くの大きな成功よりも脳にとって魅力的だからです。

計画経営を推進し、将来の利益を生む仕組みを確実に構築するためには、この人間の性質を逆手に取り、後回しを物理的に防ぐ仕掛けを組み込む必要があります。日々の仕組み作りという行動そのものの中に、「小さな報酬」を感じられるポイントを随所に配置するのです。

数ヶ月後の賞与や昇進といった巨大な報酬を待つのではなく、もっと手前の、数時間から1日単位の極めて短いスパンで得られるフィードバックこそが、組織を動かすガソリンとなります。

遠くの星を目指すには、まず足元の街灯を一つずつ灯していくような、時間軸の設計が求められます。

それは、数か月後に手にする「手当」や「評価」といった大きな報酬である必要はありません。

「1日」や「半日」といった細かいラップタイムで、「ちょっとした達成感」「ちょっとした承認」という報酬を得られる仕掛けの方が、はるかに大きな推進力を生みます。その仕掛け作りのために、「数字」という武器を巧みに使っていくのです。

「神は細部に宿る」という言葉があるとおり、実施という日常管理は、この「短い時間軸」での「小さな精神的報酬」の設計があるかないかで、1年後・3年後の組織の姿に圧倒的な差を生むのです。

あなたは、未来において圧倒的な成果を出すために、今を動かす小さな仕掛けを組織に入れ込んでいますか?

コラムの更新をお知らせします!

コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。