人を変えようとする経営がうまくいかない理由
「結局、辞めちゃったんですよ。となりの芝生は青く見えたようで…」。先日、経営者との雑談ででてきた一言。以前から、有望な社員が辞めるといい始めた…というお悩みは聞いていましたが、成り行きに任せていたところ転職を決意してしまったとか。残念なお話しではありましたが、他方、「きっと帰ってくるな」という気持ちも湧いてきました。
以前であればありえなかった「出戻り」。ところが最近は、いったん辞めて外の世界を見てきた人のほうが、元居た会社の良さがわかるといった認識も広まっており、「出戻り」歓迎の風潮も感じています。なので、このケースもきっとこうなるだろうな、と思った次第。
でも、そうであったとしても、留意しなければいけないのは、転職を考える理由が会社のなかにあったという事実。ここにスポットを当てずに成り行きに任せていると、また同じ現象が発生する可能性は大いにあります。よってそこに放置してはいけない問題があるということです。
多くの場合、この手の話は「本人の問題」として片付けられがちです。忍耐力が足りない、覚悟が足りない、最近の若い人は…といった具合に。しかし、少し冷静に考えてみると、同じような理由で人が辞めていく会社と、そうでない会社があるのも事実です。
ここで考えるべきは、「人が変われば解決するのか」という問いです。
もし本当に人の問題であるならば、人を入れ替え続ければ組織は良くなるはずです。ところが現実はどうでしょうか。採用しても定着しない、定着しても活躍しない。このループに入ってしまっている企業は少なくありません。
つまり問題は、人そのものではなく、その人が置かれている環境、すなわち「構造」にある可能性が高いということです。
もう一歩踏み込むと、人はそんなに簡単に変わるものではありません。外部環境や経験によって行動が変わることはありますが、価値観や思考のクセのようなものはそう簡単には変わらない。研修をやったから、面談をしたからといって劇的に変わるのであれば、世の中に人材の悩みは存在しないはずです。
それでも私たちは、つい「人を変えよう」としてしまいます。指導する、叱咤する、動機づける。もちろんそれが必要な場面もありますが、それだけで組織の問題が解決するケースは多くありません。
ではどうするか。
発想を逆にします。「人は変わらない」という前提に立つのです。
そうすると、やるべきことが見えてきます。人に依存しない形で成果が出るように、組織の構造を設計するという発想です。
例えば、
・誰がやっても一定の成果が出る業務プロセスになっているか
・判断に迷ったときの基準が共有されているか
・個人の善意や頑張りに依存していないか
・役割と責任が曖昧になっていないか
こうした構造が整っていない状態で、「もっと主体的に動いてほしい」と言われても、それはなかなか難しい話です。
逆に、構造が整っている組織では、人が多少入れ替わっても大きくは崩れません。むしろ新しく入った人がスムーズに立ち上がり、早期に戦力化していきます。これは特別な人材がいるからではなく、仕組みがそうなっているからです。
ここで重要なのは、構造をつくることは「人を大切にしない」ということではない、という点です。むしろ逆です。人は変わらないという前提に立つからこそ、その人が無理なく力を発揮できる環境を用意する。そのほうが結果として、人も組織も健全に成長していきます。
冒頭の話に戻ります。もしその社員が戻ってきたとしたら、以前と同じ環境であれば、同じことが起こる可能性は高いでしょう。逆に、構造が変わっていれば、その人の見え方も、行動も、結果も変わってくるはずです。
人を変えようとするのか、構造を変えるのか。この選択は、組織の未来を大きく左右します。
さて、あなたの会社では、「人」に原因を求めていますか。それとも「構造」に目を向けていますか。
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