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40年続いた会社に、何も残っていなかった理由:事業承継の準備

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年商10億事業構築コンサルタント

株式会社ワイズサービス・コンサルティング

代表取締役 

指導暦18年、これまでに200社以上の実務コンサルティング実績を持つ経営コンサルタント。「10億円事業構築」に強みを持ち、直近5年では、導入後数年で年商数億が10億越えをした企業は20社以上と驚くべき成果を出している。

建設業を営むM社長(58歳)が相談に来られました。
創業40年、地域ではそれなりに知られた会社で、M社長は2代目です。
そして最近、息子さんが入社しました。
 
 少し間を置いて、M社長はこう言われました。
「自分が、まだ案件を持っているんです。取引先も、判断も、段取りも……」
 
 さらに、ぽつりと続けられました。
「創業して40年。会社として、何もないことに気づいてしまったのです。」


誤解:長く続いた会社には「何か」が残っている

多くの社長は、無意識にこう思っています。
 
 長く会社をやってきたのだから、会社には何かがあるはずだ。
引き継げる“重み”や“蓄積”があるはずだ、と。
 
 しかし、引き継ごうと考えた瞬間に、その幻想は崩れることになります。
・社長の人脈で取れている仕事や仕入れ
・言語化されていない段取りと勘
・何でも社長に判断を仰ぐ社員
・社内にあふれる「昔からこうやってきた」という慣習
 
 これらは、確かに歴史によって得たものです。
しかし、会社の資産ではありません。

 

原則:仕組みとは、再現性と効率性である

仕組みとは何か。
私は、次の二つだと定義しています。
 
 再現性:誰がやっても、一定の結果が出ること。
 
 特定の人が「できる」ことではありません。普通の社員でも、経験の浅い社員でも、決められた通りにやれば、一定の成果が出る状態です。これが再現性です。
 
 再現性があるから、人に教えることができます。「感覚」ではなく、「手順」として伝えられるからです。
 
 そして、再現性があるから、改善することができます。同じやり方をしているからこそ、どこが悪いのか、どこを直せばいいのかが見えるのです。
 
 効率性:今、10人でやっていることを、8人で回せること。
 
 楽をする、手を抜く、という話ではありません。ムダな確認、二度手間、社長判断待ちを減らすことです。
 
 効率性がある会社では、人が増えても混乱しません。仕事が増えても、疲弊しません。
 
 逆に、効率性のない会社は、案件が増えるほど、社長が忙しくなり、人を入れるほど、現場が荒れていきます。

 

仕組みがない会社では、何も積み上がらない

再現性がなければ、教えられません。
効率性がなければ、改善できません。
 
 つまり、仕組みのない会社では、教えることも、改善することもできない のです。
 
 それは、毎回その場しのぎで、毎回同じ失敗を繰り返し、毎回社長が出ていく会社、ということです。

 

積み上がる会社と、消えていく会社

仕組みがある会社では、経験が積み上がります。
 
 ・大きな損害が出た
・契約に不備があった
・クレームが発生した
・「今後はこうしよう」と皆で決めた
――その結果は、御社に残っているでしょうか。
 
 若い社員の態度を注意しました。
「こういうことをはっきり伝えることは大事だ」と思いました。
 
 それは、次に入ってくる社員に伝わるでしょうか。
そして、その時に社長が同じことを言うことになるのでしょう。
 
 多くの会社には、「仕組み」がありません。だから何も残りません。
だから、経験は毎回リセットされるのです。
 
 人が変わるたびに、同じ説明をし、同じ注意をし、同じ失敗を許すことになるのです。
 
 仕組みがある会社では、一度の失敗が、次の成功の材料になります。
仕組みがない会社では、一度の失敗が、ただの苦い思い出で終わります。

 

継ぐべきものは、三つ

会社として継ぐべきものは、大きく三つです。
 
 事業モデル:顧客に必要とされ、競合に勝てる事業モデルであること。「社長個人」でなく、「会社のもの」となっている状態です。
 
 仕組み:社長や一部の優秀な社員しかできない業務がなく、並みの社員でも活躍できる状態がつくられていること。
 
 組織:社長ではなく、管理者が中心となり、事業や仕組みの改善サイクルが回っていること。管理者が入れ替わっても、そのサイクルが止まらない状態です。
 
 この三つの状態にあって、初めて「会社」と言えます。
これこそが本当の資産です。だからこそ、継ぐことができるのです。
 
 お金、土地、株の対策ももちろん必要です。
しかし、それ以上に、この三つを次に継いであげたいのです。

 

会社の歴史と、会社の強さに相関はない

年数を重ねても、仕組みを積み上げなければ、会社は強くなりません。
歴史は、放っておくと「属人性」に変わります。そして属人性は引き継げません。
 
 冒頭のM社長は、引き継ごうとした瞬間に、その事実に気づきました。
――会社として、何も残っていない。
 
 20年前、自分が会社を継いだときの苦労がよみがえります。
そして、愕然としました。
あの時から、本質的に何も変わっていないことに。
 
 経営者として、この20年、何をやってきたのか。
その問いに直面したときのショックは、小さくありませんでした。
 
 あの面談から、2年が経ちました。
M社長は、こう言われます。
「今までの40年よりも、この2年間のほうが、会社に積み上げることができました。」
今では、社内の多くが、社長を介さず、仕組みで回るようになっています。
 
 その横で、息子さんも頷きます。
「危うく、父と同じ苦労を、私がするところでした。」
 
 一同に笑いが起きました。

 

まとめ:継ぐ者のために、残す責任がある

会社の歴史は、自然に「強さ」にはなりません。
意図して作ったものだけが、資産として残ります。
 
 社長の判断、経験、人脈。それらは価値あるものですが、型にしなければ、次の世代には引き継げません。
 
 継ぐ者は、会社を「受け取る」だけではありません。
前の世代が残したものを、すべて背負って経営することになります。
 
 だからこそ、今の社長には責任があります。
顧客に選ばれる事業モデル、並みの社員でも回る仕組み、改善を続ける組織。
この三つを、未完成のまま渡してはいけません。
 
 継いだ者がその後を担うのは当然です。しかし、継いだその瞬間にそれがあるかないかでは、雲泥の差なのです。
 
 歴史を、課題のまま渡すのか。
それとも、資産に変えて未来に渡すのか。
 
 まだ時間はあります。
その時間を、歴史でなく、資産を残すために使いましょう。

 

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