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大切なのは、どうやって加工するかより、なぜ、この加工がしたいのか?

SPECIAL

商品開発コンサルタント

株式会社シンプルテックプラン

代表取締役 

商品開発コンサルタント。特に開発部門を持たずに売れる商品開発を実現する、独自の「デベロップレス」体制づくりに定評。いま全国の中小メーカー企業の業績躍進の新手法として、多くの企業から指導依頼が集まる注目のコンサルタント。

業績が頭打ちとなっていた、ある加工メーカーからの相談を受けた時のことです。初相談の日に、どんな仕事をされているのか聞いてみると、次のような回答が返ってきました。

「当社は、加工技術の高さが自慢です。先日も加工がとても難しい〇〇材の加工を頼まれました。〇〇材は、とにかく加工が難しいのです。しかも、とても小さな穴を開けるというのが指示でした。この材料に小さな穴を開けるのは特に難しいのです。それを当社では、××という方法で、様々な工夫をして加工できるようにしています。この××という方法は、これこれこういった特徴があり、通常は・・・」

ここから、この加工がいかに難しく、それをいかに創意工夫して克服し加工できるようにしているのか、この企業の技術力の高さのアピールが延々と続きました。そして、最後に「これが当社の特徴であり強みです。この強みを生かして、様々な難加工性材料の加工を受注しています。さらに加工を磨いて受注を増やしていきたいのですが、なかなか広がらないのです。」ようやく話が止まりました。結局、私が聞きたかった部分の説明は、最後まで無いままです。

この例に限らず、機械加工やプレス、溶接、熱処理など、商品や製品の一部の加工を「専業」にしている企業の方に、「どういった仕事をされているのですか?」という質問をすると、よくこの加工メーカーのような回答が返ってきます。徐々に熱を帯びながら、熱心に自分たちの加工技術がいかに優れているか、一生懸命に説明してくれます。しかし、肝心なことは全く説明が無かったり、有っても加工技術の説明と比べて、ものすごく説明時間が短かったりします。実は、これそのものが問題なのですが、そのことに気づいていません。

そして、こういう時には、必ず、次の質問をするようにしています。
 「ところで、なぜ、そんな難しい材料にそんな小さ穴加工をしなければならないのですか?

すると、冒頭の加工メーカーから返ってきたのは、次のような言葉でした。
「それは分かりません。先方が当社を頼って依頼してきたので、何とかその要望に応えようと、加工を工夫してできるようにしました。最初は、これこれこういう部分に課題があり、上手くいかなかったのですが、次にこういう対策をしてみたら、少しできるようになって、そこから、さらに・・・」再び話が延々と続きます。

自社の問題に気づいてほしくて質問したのですが、質問の意図すら伝わりません。これは、このメーカーが特別なのではなく、加工専業メーカーには本当によくあることなのです。

この加工専業メーカーに気づいてほしかったこと。
 それは、「加工する目的の大切さ」です。

どうやって加工するのか、それを考えるためには、まず、なぜ、この加工をしたいのか、加工の目的を把握しなければなりません。なぜなら、それが極めて重要だからです。そして、このことがわかっている企業に、どんな仕事をしているのかを訪ねた時の答えは、決まって、その目的から丁寧に説明し始めます。

「そうは言っても、加工指示通りに加工するのが仕事だろう」とか、「目的を知ったところで、結局、指示通りに加工するのだから同じでしょう」という反論があるかもしれません。

申し上げたいのは、たとえそうだとしても、加工に尽力する前に、目的を確認してほしいのです。それは、目的を確認した結果、実施すべき加工方法が変わるかもしれないからです。

この例で言えば、穴加工の目的です。なぜ、その穴加工をしたいのか、その目的は何かです。仮にその目的が、冷却水を通すための冷却穴だったとしましょう。この場合、目的は、「冷却」です。そうすると、冷却穴は、指示された大きさよりも大きい穴で良いかもしれないのです。ちょっとした穴サイズの違いで、加工性は劇的に変わるかもしれません。そういったことは、この加工メーカーにとっては常識ですが、加工メーカーに依頼してきた製品メーカーは知らないかもしれないのです。知らずに指示をしただけで、本当は、少しくらい大きくても良いかもしれないのです。この場合、この加工メーカーがとるべき行動は、必死に指示された大きさと精度で加工技術を磨くことではなく、最適な加工サイズを提案することです。依頼者と目的の共有ができていれば、これが可能になります。

分かりやすくするために、単純な例を示しましたが、本質的に同じことは、様々な状況で発生しています。

例えば、自動車エンジンの開発では、一昔前までは、ダウンサイジング(小型低排気量化)が主流でした。そのために、部品の小型化や加工精度の追求が進められていました。ところが、ある時を境にこの流れが一変します。逆にアップサイジング(大排気量化)が進められるようになりました。このとき、目的を知らずに盲目的にダウンサイジングに奔走したメーカーは、変化についていけず、開発が無駄になってしまいました。しかし、ダウンサイジング化するそもそもの目的を知っていれば、なぜ突然アップサイジングに変わったのか容易に理解することができたのです。そればかりか、将来アップサイジングに変わることさえ前もって予測できたのです。そのため、目的を考えたメーカーは、事前に対応しアップサイジングでの受注を獲得できました。一方で、目的を考えなかったメーカーは、ダウンサイジングの開発を続け、大打撃を受けることになりました。これなども、目的の大切さを示す一例です。そして、他にも似たようなケースは、気づいていないだけで頻発しているのです。

大切なことは、実現手段ではなく、その前に、目的です。目的があって初めて手段があります。そして、目的と手段は、必ずしも一対一ではありません。目的の達成手段は、様々にあるのです。本当に目的に照らして、この手段が最適なのか?まず、そこから考えなければなりません。そして、指示された加工が最適ではない場合は、最適な加工を提案することが求められます。提案した企業は、提案力のある企業として、逆に依頼先から喜ばれ信用されるようになります。指示通りに加工するメーカーより、指示とは異なる提案をした企業が喜ばれるのです。なぜなら、自分たちが気づかなかったより良い方法で目的を達成できるからです。

こうして、提案できる企業は、信頼され、受注を増やし、しかも変化に対応できるようになります。すべての始まりは、「目的」を考えたかどうかです。

もちろん、手段は大切です。手段が無ければ、目的を達成することはできません。ただし、考えている手段が目的を達成するための最適で唯一の手段とは限りません。指示されたからといって、盲目的に手段を追究するのは考え物です。その前に、目的を考えるべきなのです。

御社のその仕事の目的は何ですか?
 そこに、より良い達成手段、開発要素は隠れていませんか?

 

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