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自宅木風呂の『外科手術』その1

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

自宅のお風呂は木風呂です。

お客様宅の新築祝に招いていただいて「君は入る権利がある。入って帰りなさい」と入らせていただいた時の感動が忘れられずに自宅でもお願いしてしまったのです。

正直、お手入れには自信がありませんでしたが、あまりこまめではない我々夫婦がなんとか維持できるようなら「お客様にも安心して薦められる」という職業的な興味もあってのことでした。

2010年に著書を発刊した際に3年目時点での検証内容をマニアックな写真とともに記しましたが、お客様はもちろん同僚からも大きな反響がありました。

自宅の木風呂の湯船はコンクリート土間に置いてあるだけなので、下駄の歯のようになっている足になる部分だけが常にコンクリートに接しているという造りです。だから夫婦2人で頑張ればいつでも持ち上げて全体の様子を確認できる訳です。

 

↑著書『家づくりの玉手箱』での木風呂の様子(入居して3年)

 

↑とりあえず、いつでも見れるようになってるから安心❤️していると、あっという間にそれから10年が経ち…

それからというものは、担当させていただくお客様宅の木風呂率がグンと上がってしまいました。受注単価は上がるものの「工期が延びる」「アフターメンテナンスのリスクが上がる」などという意見もあって社内では物議を呼びました。

工期のことはさておきアフターメンテナンスについては、少なくても先行している自宅の様子を共有することで、メンテナンス上お客様宅で大事に至るようなことは避けられると思っていましたので自分としては妙に安心感はあったのです。

湯船の中の角のところに異変を感じたのは、それから10年が経った頃でした。お風呂につかった時の右後ろの入隅のところがなんか黒ずんでいて、触ると「ぶよぶよ」する感じがしたのです。身に覚えのある感触です。

そうです。子供の頃オヤジのこだわりで入れた檜風呂の、あの断末魔のときと同じ感触です。お風呂につかって右前の隅が同じように「ぶよぶよ」になっていて、右足の親指でグイグイ押していたら「ぶにゅっ」と穴があいてドバーッとお湯が抜けて…悪夢の再現です。

 

↑13年6ヶ月経過後の自宅木風呂の湯船(コウヤマキ)の角っこに異変が!

 

慌てて妻と湯船を持ち上げてみましたところ、パッと見は「少し黒ずんでいるところが増えたかな」という感じでしたが、念のため黒ずみの多い下駄の歯のようになったパーツを外してみたのです。

 

↑湯船底の裏に取り付けてある下駄の歯にあたる棒状のパーツを外したところ

 

そうすると、下駄の歯が取り付いて接していた部分が真っ黒になっていて、恐る恐る押してみるとやはり「ぶよぶよ」のあの嫌な感じの弾力が。

 

↑下駄の歯が取り付いていたところがかなりヤバいことに

 

↑動画でご覧になるにはこちら

 

経年とともに傷みは来るだろうと下駄の歯にはゴム足を取付けて直接コンクリートに触れないようにしておいたのですが、コンクリート土間に近い部分の下駄の歯の半分くらいは腐りかけていました。

 

↑下駄の歯にゴム足を取り付けてかさ上げしていましたが歯の底がかなりきています

 

湯船の側板と底板の接しているところが1cm近く黒ずんでいましたので、マイナスドライバーでつついてみました。そうすると、先っちょがズボッと入りこんで大穴が開いてしまったのです。

 

↑湯船の側板と底板の境がフカフカ(黒い部分)に(右側が底板です)

 

これは一大事です。これを直さない限り、もうすでにお風呂にお湯は張れないことに気づいたのです。戦慄です。まさに恐れていた日が突然やってきたのです。早速、ホームセンターに夫婦して走りました。

 

↑外科手術用に準備した道具たち(いちばん右のハードなワイヤーブラシが○でした)

 

ホームセンターから帰り着くと、瀕死の湯船を外のデッキに運び出しました。”手術”の準備です。木風呂を採用していただいたお客様たちの顔が浮かびました。

やったことはありませんが、我が家の湯船の生命がかかっているのと木風呂先行者としての”責任”があります。

早速、取りかかりました。歯医者さんが虫歯を治療する要領でした。普段見ることのない部分を白日の下で触っていると発見もあります。木製の湯船というものは素材と水による湿潤の微妙なバランスで漏らないように作られていることがよく分かります。職人さんの微妙な加減というか塩梅というか、正直なところ「こんなんでよく漏らなものだなー」という印象でした。

 

↑ワイヤーブラシで腐った部分を削り落とした後のようす

 

↑釘を斜めに入れてありました(釘でとめてある事自体に驚愕しました)

 

悪くなりかけているところも含めて削るだけ削ったら、今度は詰め物で補修です。(このあたりも歯医者さん的です)

今回使ったパテは耐水性に優れ、実用強度までの硬化時間が短く、硬化後の容積変化がほとんど無いものをチョイスしました。少量パッケージしか売ってないのと値段が高いのには参りましたが、とにかく買い占めました。

 

↑詰め物はこれが○でした(値段は高いですけど)

 

↑詰め物充填完了(ほんと歯医者さんのようです)

 

↑大きな隙間もなんとか塞がりました

 

かくして、翌日には一旦お風呂はお湯を張れるようにはなりました。

しかし、これで終わるわけにはいきません。なんとしても今回の傷みのメカニズムを明らかにせねばなりません。お客様やアフターサービスのみんなに伝えなければ、またどこかの家で大惨事が起こることになるのです。

 

 

自宅木風呂の『外科手術』 その2 につづく

 

 

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