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環境戦略コンサルタント

合同会社オフィス西田

チーフコンサルタント 

環境戦略アドバイザー。数々の多国間環境条約や、国連が提唱する2030年のための持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)を参照しながら、サーキュラーエコノミーなど企業として取るべき環境戦略や、環境対策を通じた長期収益構造の改善などをアドバイスしている。

かつて高度成長期には金太郎飴みたいだと言われた日本のカイシャですが、最近では個社の違いがだいぶ広がってきているように思います。

一か月ほど前にも紹介した例えですが、私は「仕事とはすなわち作業、経営理念とは朝礼で唱える念仏、新しい要求に出会うと思考停止してしまう」というタイプの会社を「昭和な会社」、反対に「仕事とはすなわち業務、経営理念は重要な判断の拠り所、新しい要求こそ創造的に考える」タイプの会社を「令和な会社」と表現しました。時々刻々とスピードを上げて変化する現代社会において、どちらが生き残れる確率が高いかは自明です。

昨今は、聞いたことくらいはあると言う人が多数を占めるようになった国連のSDGs(2030年のための持続可能な開発目標)についてもこれと相通じるものがあります。「昭和な会社」の典型的な反応としては「そもそもSDGsを知らない」という場合を除いて以下のようなものが目立ちます。
1. 難しい、あるいは何の役に立つのかわからないということで避けて通る
2. やっています、と胸のバッジを見せる(が、具体的な中身はなく、ウェブサイトにも関連する記述はない)
3. 「重要な課題なので」専門部署に任せるとしてCSR部やリスク管理部に丸投げ

これらのいずれもが、経営者自身の課題として正面から取り組めていないことを示しています。特に悲劇的なのが3.のパターンで、実際にとある財界重鎮の出身企業がこの状態だったこともあるため、現代の日本社会では残念ながら少なくない事例がこうなのだろうと見ています。

この場合、担当となったCSR部員は、SDGsを勉強すればするほど自社のありようと社会が求める理想との間にギャップがあることに気づいて行きます。そしてSDGsを理解すればするほど「専門部署に丸投げ」した経営判断が誤りであることに気づきます。彼または彼女にとって、それはおそらく空前の悲劇的体験(皮肉な場合は喜劇的ということも)に違いありません。たとえそれがどんなに素晴らしい業績を残している会社でも、2020年の社会においてSDGsを専門部署任せにするという判断がまかり通るわけですから。実績や社員はいざ知らず、経営トップは「昭和な」人たち、ということができるでしょう。

 本来、経営にとってのSDGsは、こんなぐあいです。
1) SDGsは、明確に経営課題である
2) SDGsに取り組むとは、未来を見ようとすることである
3) SDGsは金科玉条ではなく、あくまで変化の道しるべにすぎない

令和な会社のトップがSDGsに取り組むと、ごく自然と1)が出来、そしてその流れから2)が滑らかに始まります。それが3)の理解を促進し、日常の経営に無理なく反映できるようになります。

細かい話をすると、文書としてのSDGsは取っつきづらいです。それだけでなく、項目間の調整も取れておらず、抜け漏れや重複もそちこちに見られます。ロジカルな資料を洗練することに多大な労苦を費やすのが当たり前だった昭和の会社が文字面だけを見れば、議論することさえ憚られるような仕上がりの粗さが目立つでしょう。

たとえそうであったとしても、SDGsが本質的に求めているものは経営判断による責任の完遂であり、普段の業務では接点のない、しかしながら重要な社会課題への回答なのです。これは専門部署の担当者が責任をもって対応できる性質のものではありません。

同時にSDGsは、2030年へのコミットメント、すなわち未来をどう見るか、を遊びなく問い詰めて来ます。169もの異なる質問に対してつねに2030年を語る、と言う仕事は経営トップでなくて対応しえないもののはずです(最大限譲っても経営企画部止まりです)。その先にある答えとしての持続可能性は、会社にとって収益そのものですから、収益実現に関して最終的に責任を負う立場の人間=経営者こそが、その全身全霊をかけて読み解くべきものであるはずなのです。

「新しい要求こそ創造的に」対応することが習い性となっている令和な会社の経営トップは、たぶんワクワクしながらこの難しいパズルに取り組んでいることでしょう。正解は未来の収益となって返ってくるのですから、経営者としてこんなに楽しい課題もない、とさえ言えます。そして無事SDGsをクリアしたなら、その会社は確実にワンステージ先へと駒を進めることができるのです。え?ホントかって?

2012年にSDGsの議論が始まったとき、先行事例となったMDGs(ミレニアム開発目標)はまだ実施途上で、ゴールまで3年を残していました。その時点で見えていたさまざまな反省を生かしつつ、残りの3年議論を尽くして生まれたのがSDGsだったのですが、その中身が完璧でないことは上で述べた通りです(おおむね時間切れによるものでした)。案の定、国際社会からは疑問の声、不満の声が今も間断なく上がっています。

ゴールまであと10年、まさにフルスピードで走り出したSDGsですが、このような歴史を思い出すに、世界ではあと5年もすれば必ず「次」の話が始まるだろうと見ています。SDGsをクリアした会社にとってはワンステージアップ、乗り遅れた会社にとっては歴史からますます置いて行かれる流れが確定するのです。あなたは、経営者として進化する社会からの問いかけをクリアしますか?それとも歴史から置いて行かれることを選びますか?

 

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