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IKEAやニトリがどうして繁盛するのか?(1)

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

「吉岡先生、どうしてIKEAやニトリが繁盛すると思います?」

訪問先の経営者の方から尋ねられました。
この方は住宅業界ではありませんが、私と共通の話題として問いかけてくださったようです。

「身近で安価だったり、生活イメージを持って選べる業態だからではないでしょうか」 「コロナの影響で在宅時間が増えたことによる模様替え需要などもあると思います」 私はそう答えましたら、間髪入れずその方は「工務店がダメダメだからですよ」とバッサリでした。

一戸建てに長らくお住まいで、かなりのご予算を投じ何度か家に手を入れておられる様子で「建築工事以外のこと、近い将来のことからは逃げていくね。あの人たちは」「包括的に面倒見てくれるような人はどこにいますかね?」と、話しているうちにどんどんテンションが上がってきました。

「工務店がどうにも頼りにならないから、仕方なくIKEAやニトリに行くんですよ」 「まあ失敗しても諦められる値段だしね」

IKEAもニトリもモデルルームのしつらいや娘たちの部屋用の買い出しなどでお世話になっていて個人的にもすっかりお馴染みですが、そう言われてみれば確かにそうかもなと思ったのです。

 

↑王道のアイテム別陳列スタイル。ゆっくり座り込んで心ゆくまで選べます(ニトリにて)

 

↑子供の頃、近所の家具屋さんでもこの光景を見ました。通路両側のタンスをビルに見立てて、自分は電車になった気分で走り抜けるのが楽しかったものでした(ニトリにて)

 

IKEAとニトリでは比率こそ違えども、アイテム別陳列は現代でも健在です。
広大な店舗面積を活かして、迷路のような長い巡回ルートを歩かせて次々に生活シーン別のコーディネーションを見せていくIKEAの成功に学び、競合店舗でも「シーン別生活提案コーナー」に売り場の一部を割いているケースを多く目にするようになってきました。

 

↑徐々に強化されているシーン別生活提案コーナー(ニトリにて)

 

最近では家電量販店でもここはニトリさん?というような売り場が見受けられるようになりました。ネット通販の比率が拡大している家電商品の専門ではなく、生活全般の提案・販売拠点へと変身しつつあるのです。「ワンストップ化」ということも言えますが、プロはあてにしないで自分で選ぶ「ファストサービス化」へと業態が変化してきているように見えます。

 

↑ニトリ化していく家電量販店の売り場風景(ヤマダ電機にて)

 

↑『工務店キラー』として増殖していく家電量販店の一角(ヤマダ電機にて)

 

工務店あるあるなのですが、外構・造園などのエクステリアや家具・ファブリック・グリーンなどのインテリアの話になると「業者を紹介しますので直接どうぞ」とすぐに言ってしまう社長が誠に多いのです。さらには「うちが入ると経費がのっかるので高くなりますから」という駄目押し付きだったりします。

苦手だから避けて通る → 避けて通るから出来るようにならない → いつまで経っても出来るようにならないので恥ずかしいし絶対に、避けて通る。 といったスパイラルが伝承されていくのです。

こうして会社は業歴を、社員は年齢だけを重ねていく訳です。これは怖いことです。 地方の中小工務店とその関連店舗では、住設メーカーやVC(ボランタリーチェーン)の「少人数のスタッフでも売上げ拡大ができますよ!」との指導により不思議かつ安直なる新装店舗も誕生しています。

 

↑無人ながらも同時に4台の画面から売り込まれるリフォームショップ

 

↑5つのスタイル、5つのテイスト、2つのグレードのマトリックスから選ぶリノベーションメニュー

 

「直接どうぞ。うちの経費分安くなりますから。」などと言っておいても、実のところはきっちり紹介した業者さんからマージンを戻してもらってたりする事も慣例的にまだまだ根強く残っています。紹介だけして安いと思わせといて、実は自社の紹介料込みでお客様に買わせるパターンです。モノの価格情報が得られやすくなりましたのでバレやすくなったとは言え、工事をともなう分野ではまだまだ現役の商法です。

お客様が意識して払うのではない対価の受け取りかたでは、何年やっても高く買っていただけるようにはなりません。そのような商売では『価格決定権』を獲得できることはない事は自明の理です。

わざわざ自らの領域を『器』の範囲に狭めるのではなく、本物の工務店を目指す社長には住まい手の未来のために必要なすべてを任せていただいて、堂々と経費なり対価なりを払っていただける仕事をして欲しいものです。

自ら考え、安価な商品でいろいろ試す。

住まい手がこぞってそうしている時代に、つくり手が「インテリアは別です。詳しい人をご紹介いたします。」などと言っていては、これからのお客様に選ばれるはずがありません。そうしているうちに、日頃からお客様との接点が多い他業種に市場を奪われるかも知れません。

その結果としてその会社の衰退は避けられないと断言できます。目先の利益確保ばかりに目が奪われてしまい、ひたひたと進化する他業界の変身を見落としてはいないでしょうか?

本物のお客様は、任せられるつくり手を探しているのです。そういうお客様は既存のサービスレベルには満足していません。それ故に表面的なプロモーションには反応がなく、顕在化しないから見えにくいのです。もし、しっかりとした予算と工期とともに任せてくれるお客様と出会えない、せっかく契約になったのにお客様から任せてもらえないとしたら…それはつくり手の問題に起因していると考えるべきです。

あなたの会社は「器」づくりに専念している会社でしょうか?それとも、その「器」で暮らしていく住まい手の「未来」に積極的に関与しようとする会社でしょうか?

これからの時代に工務店が何を目指していくべきか?異業種ながらも住宅事業に参入する際にどのような戦略を取るべきか?家づくりの玉手箱では、そのような疑問に明快にお答えしています。
一流を目指す経営者の方なら、工務店・異業種は問いません。

 

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