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経営者の覚悟が試されるジョブ型雇用

SPECIAL

銀行活用で新規開拓コンサルタント

株式会社結コンサルティング

代表取締役 

銀行活用で新規開拓の仕組みづくりを行うスペシャリスト。31年間の銀行員経験で、法人4,000社以上を担当、審査部担当者としての企業審査は1,000社超の実績を誇る金融のプロフェショナル。
売上が倍増した雑貨メーカー、バックメーカー、新事業を立ち上げた化粧品メーカー、更には海外進出に成功した事例など、累計で100社以上のビジネスマッチングを成功に導いた実績を持つ。

「最近、頻繁にジョブ型雇用という言葉を聞きますが、どういう点に注意して対応すればいいのですか? もちろん、髙窪さんの本業ではないことはわかっているのですが、元銀行員ということでわかる範囲で教えていただきたいのですが・・・」──とある経営者の方からのご相談です。

これまでのコラムでも何回かお伝えしていますが、元銀行員だからということで、専門外のことについてもご相談をよく受けます。その中で、筆頭格なのが、労務管理や賃金制度です。

今回のご質問を受けて、経営者としてのジョブ型経営取組の前提となる留意点について、私なりの考えをお伝えしました。

まず、ジョブ型雇用はそもそもどのようなものなのでしょうか。

日本経済団体連合会が2020年3月31日に公表した、採用と大学教育の未来に関する産学協議会・報告書「Society 5.0 に向けた大学教育と採用に関する考え方」では、次のように記載されています。

「ジョブ型:特定のポストに空きが生じた際にその職務(ジョブ)・役割を遂行できる能力や資格のある人材を社外から獲得、あるいは社内で公募する雇用形態のこと。ここでいう「ジョブ型」は、当該業務等の遂行に必要な知識や能力を有する社員を配置・異動して活躍してもらう専門業務型・プロフェショナル型に近い雇用区分をイメージしている。欧米型のように、特定の仕事・業務やポストが不要になった場合に雇用自体がなくなるものではない。」

「各企業は、「メンバーシップ型」のメリットを活かしながら自社の経営戦略にとって最適なかたちで「ジョブ型」を組み合わせた「自社型」の雇用システムを確立している。社員の能力と希望によって、両者の雇用区分を相互転換できる仕組みも導入されている。ジョブ型雇用の活用がさらに拡がった結果、メンバーシップ型の社員とジョブ型の社員双方から経営トップ層に登用されるなど、複線型の制度・キャリアパスとなっている。」

上記のように、日本では現状、欧米型のジョブ型とは違う雇用システムが構築されています。

つまり、世間一般の認識である、解雇が容易で企業と個人の個別交渉の米国型や、労働者の保護が手厚く解雇が容易でないドイツなどの欧米型とも異なるものが、日本の主要企業で進められているジョブ型雇用なのです。

整理すると、以下のようになります。

「ジョブ型:新しい雇用形態」=仕事内容を明確に示したポストに就く

「メンバーシップ型:従来の雇用形態」=仕事内容は明確化されずどんな仕事でも対象になり、採用した人にその時空いているポストを与える

 

雇用制度の変更が議論されるその背景には、必ず社会環境の大きな変化があります。

現在の「ジョブ型」議論の場合、AI(Artificial Intelligence;人工知能)、IoT(Internet of Things;モノのインターネット)、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)などのデジタル技術の普及やグローバル化の進展などによって日本や世界を取り巻く環境は大きく変化してきたところに、コロナ禍がさらに拍車をかけたため、社会環境だけでなく人々の生活も劇的に変化してきたことが背景にあります。

過去の例では、バブル崩壊後の「成果主義」があげられます。

それまでの土地神話・株高などのバブル経済が崩壊し、資産価値だけでなく売上が激減しているにもかかわらず、固定費の大部分を占める人件費が横ばいであったため、「高い成果を出す社員には高い賃金」、「低い成果しか出せない社員には低い賃金」となるよう、成果に応じて賃金を支払う成果主義が一気に浸透しました。

確かに、論理的には正しいのですが、成果主義の導入はいろいろな悪影響をもたらしました。

営業を例に挙げると、従来の評価方法であればトップ営業のやり方を他の営業部員にフィードバックし、全員の営業の底上げをするといった手法が取られていました。

しかし、成果主義を導入した途端、トップ営業が他の営業部員に自分の営業手法を教えなくなり、自分のスキルを囲い込んでしまいました。

このため、成果の低い営業部員の底上げができなくなり、さらに、営業しか評価されないから、と、事務職員からの協力も得られなくなるなど、新たな弊害が生まれました。

人間関係がギクシャクし職場の雰囲気が悪くなり、クレームの発生件数も増加、そして、トップ営業や成果の低い営業部員が転職・退職するなど、営業部隊そのものが瓦解してしまうという、予想だにしなかったことが起きるようになったのです。

上記のような例が頻発したから、と、評価制度を元に戻しても、一度拗れてしまうと、なかなか導入前のような状況に戻すことはできなくなります。

論理的には正しい成果主義でさえ、導入後このような混乱を招いたのですから、経団連の参加企業が実践している「「メンバーシップ型」のメリットを活かしながら自社の経営戦略にとって最適なかたちで「ジョブ型」を組み合わせた「自社型」の雇用システムを確立する」ことは、中小企業にとって非常に難易度が高いと考えています。

ちなみに、公表されている日立製作所の事例でも、職務の見える化であるジョブディスクリプション:職務記述書はざっと300~400種類ほどになるとのこと。

その職務ごとにポジション名、ミッションと役割、必要な能力とスキル、必要な資格と経験、リポートラインなどを記載し会社と社員でイメージを共有していく作業が、まず最初に日本式の「ジョブ型」導入には必要になるのです。

職務の見える化がジョブディスクリプションで、これと対になるのが人材の見える化です。

日立製作所では「タレントレビュー」と呼ぶ仕組みで、上長との個別面談、あるいは複数の上長による部下1人ひとりのレビューにより、社員の強みと弱み、キャリア志向を踏まえた育成や職務のアサインについて検討します。

これらにより、職務と人材のマッチングを促し、社員のキャリア育成と組織力の強化に結びつけるとのことです。

上記以外にも、ジョブ型に関連する制度や仕組みは多岐にわたります。

採用施策、配置異動、人材育成、処遇制度、働き方改革、福利厚生などがあり、日立製作所では2021年4月からジョブ型人事制度の運用を始め、関連する制度や仕組みについては2024年をターゲットに整備することで、ジョブ型人財マネジメントの定着を目指すとのこと。

ジョブ型雇用制度を導入するには、以下の項目をあなたが経営する会社で準備、対応・定着することが必要となりますが、対応は可能でしょうか?

必要なことを整理すると、以下となります。
①職務の見える化
②人材の見える化
③職務と人材のマッチング
④社員のキャリア育成と組織力の強化
⑤採用施策
⑥配置異動
⑦人材育成
⑧処遇制度
⑨働き方改革
⑩福利厚生

仮にできたとして、ジョブ型雇用の行く末が、成果主義と同様に機能せず、導入したことで社内の人間関係が悪化する原因になってしまうとしたら・・・

 

さらに、人生100年時代の到来に伴い、これまで経験したことのない長い人生を生きることになります。
これからの時代は、人それぞれが興味・関心に応じた多様な幸せの形を追求するため、社会人になっても多様な学び直しの機会や、新しい時代に応じたライフスタイルを追求できる環境が必要となります。

そのためにはあなたが経営する会社だけでなく、社会全体としても「知」の循環を促進し、新たな価値の創造につなげ、人生のどの段階においても、個人の能力が最大限発揮されることや、複線型のキャリアパスが構築できること。新たなチャレンジができることが可能な環境を構築することが、今後は求められるのです。

 

これまでの成果主義、そしてこれからのジョブ型と、環境変化に対応するための雇用制度の変更を検討することは有意義だとは思います。
とはいえ、導入に際しては職務や人材の見える化に加えて、それに付随する諸々の事務なども大きく変更する必要があり、一朝一夕に対応できるものではありません。

今後対応すべき課題として雇用制度の変更を念頭に置いておくのは当然のことですが、優先順位を考えれば、至急対応すべき課題として売上確保・増加が真っ先にあがるはずです。

まずは売上確保・増加を達成することで資金・利益を確保し、じっくりと雇用制度の変更について検討した上で、あなたの会社の実態や社会の変化に合わせて雇用制度の変更をしてください。
一見遠回りに思えますが、このルートが最短距離で最適解なのです。

 

そもそも、何のために「ジョブ型」に雇用制度を変更するのでしょうか?
従業員が100名未満の会社であれば「費用・負担」VS「効果」を考えると、ジョブ型に変更する意味がない場合がほとんどです。
それ以上の従業員規模の会社であってもシミュレーションしてみて、どれだけの効果が期待できるかを、まずは検証してみてください。

もし変更する必要があると判断できたとして、あなたの会社にとっての優先順位はきちんと整理されていますか?

雇用制度変更よりもっと優先順位が高くて、至急性があるものはありませんか?
雇用制度を変更するよりも、売上を確保・増加させることのほうが会社にとって優先順位が高いはずですが、売上増加の施策はきちんと実施されていますか?

 

トレンドに乗り遅れるまいと慌てて雇用制度変更を考える前に、
労働分配率などを確認して、売上がどれだけ減ったら赤字になるのか? 
利益を確保するには、どれくらいの売上を確保しなければいけないのか? 
を確認し把握しておきましょう。

会社にとっての優先順位を確認した上で雇用制度を変更する、と決定した場合は、仕事内容の可視化&効率化を前提に、日立製作所のようにきちんとしたマイルストーンを決めてから着手しましょう。

デジタル技術の普及やグローバル化の進展だけでなく、新型コロナウイルスによる社会と経済の歴史的な大転換となる「ニューノーマル」時代を乗り越えて、更なる発展をしていくために、今一度、経営者であるあなたが会社の解決すべき課題の優先順位と緊急性を見直してみませんか?

 

あなたは「ニューノーマル」時代を乗り越えるために、会社経営をどのような方針・優先順位で経営をしていきますか?
あなたが経営する会社のゴールはどのようなものですか?
あなたの「経営者としての夢」はなんですか?

弊社では、「銀行のネットワークを最大限に活用する営業紹介の仕組みづくり」に特化しコンサルティングさせていただいています。
売上を確保・増加させることさえできれば、資金・利益を上げられるので、あなたの「経営者としての夢」を実現させるための施策をいろいろと実施できる余裕ができます。
社会インフラでもある銀行のネットワークを活用したビジネスマッチングで、新規取引先が自動的に増やせる仕組みづくりを一緒にしませんか?

「売り手よし」、「買い手よし」、「世間よし」という、「三方よし」の経営をご一緒に実現させましょう!

 

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