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見込客とスタッフの『脳科学』4

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

見込客とスタッフの『脳科学』3 からつづく

 

 

社長の「Xシステム」と「Cシステム」

 

社長は毎日常に「判断」することの連続です。人間は何らかの「判断」をしないといけない時には、主にふたつのシステムを使用しているそうです。ひとつが、スピード重視の「Xシステム」と呼ばれるものです。Xは「REFLEX=反射」のXで、反射的に反応するシステムです。

”即断即決”のシステムですが、速いだけに間違えやすいという欠点もあります。”朝令暮改”といってコロコロ変わる多くの社長さんたちが目に浮かびます。このシステムはどうやら「脳」の中でも”動物的”な部分で働いているようです。

もうひとつが「Cシステム」です。「CALCULATE=計算する」のCと覚えると間違いにくいです。こちらはスピードは遅いものの、物事をしっかり考えて判断できるそうです。目先にとらわれず長期的な視点で合理的な結論を出すことができるシステムです。

見ようによっては”優柔不断”とも言えるシステムですが、このシステムは人間ならではの高度なものです。この「Cシステム」を有効に働かせて情動を抑えることのできる人は、生涯を通じて『勝者』となりやすいという結果が1970年にスタンフォード大学で行われた「マシュマロ実験」という実験では出ているそうです。

ご興味のある方は「マシュマロの実験」で検索してみてください。

 

↑186人の子供たちが参加した「マシュマロの実験」(イメージ)

 

 

経営者たるもの可能な限り、重要な判断はしっかり吟味したいものです。しかし、この「Cシステム」は脳の負荷が大きく、状況によってはうまく稼働しない場合もあるそうです。どんな時に「Cシステム」が鈍ってしまうのか?以下のようなものが主な阻害要因なのです。

 

●睡眠不足(脳内に老廃物が残りやすくなって、神経細胞が死にやすくなるそうです)

●アルコール(晩酌後に仕事する習慣のある社長は要注意です)

●焦り(宿題をため込みたくない、忙しい社長にありがちです)

 

 

「脳」が自らをだます「仕組み」

 

人間の「脳」は過去の経験や学習を生かしながら、できるだけエネルギーを節約しつつ働いています。「大事な事以外は記憶しない能力」や「不都合なことは忘れる能力」ともいえるものです。それ故その仕組みに、当の本人がだまされてしまう事もあるようです。

いつも目を通している会社の資料などは「完璧に理解している」と思いがちですが、単に「脳」に見慣れた感覚が出来上がって「自分は理解している」と錯覚してしまうことが起こるそうです。

また、見た目の認識の例として「ゲシュタルト知覚」というのがあります。このゲシュタルトの法則とは、人間は近いものや似ているものをグループ化したり、閉じた図形のような全体性のある構造を見出そうとする性向があるという法則のことです。この全体性のある構造のことをドイツ語でゲシュタルト(Gestalt:「形態」の意味)と呼びます。

 

↑ゲシュタルト知覚の例「ルビンの盃」

 

 

数字に関してはこのような例もあります。オランダの心理学者が考えた、ふたりの気象予報士、AさんとBさんの予報についての反応についての実験です。以下の表がおふたりの予報と実際の天気です。被験者に「どちらの気象予報士が優秀と思うか?」という質問をして回答を得るという単純なものです。

 

↑ふたりの気象予報士の予想した降水確率

 

 

実際に雨が降ったのは4日間のうち3日でした。気象予報士として優秀なのはAさん、Bさんのどちらでしょうか?合理的に考えると結果は3/4の確率ですから「75%と的中させたBさん」のはずなのですが・・・被験者の約半数が「90%と確信の強かったAさん」を「優秀な気象予報士」と回答しました。

人間は”迅速型”「Xシステム」と”熟慮型”「Cシステム」の両方を持っているという話をしましたが、たいていは限られた情報量で意思決定できる「Xシステム」がメインに働いているそうです。「直感的に」とか「なんとなく」というやつです。

カリフォルニア大学の研究チームはこのような実験を行なったそうです。

互いに知らない4人の学生でグループとつくり、数学の問題を協力して解いてもらいました。被験者グループ内でのやりとりはすべて録画され、それを見て4人のうち誰をリーダーにするか、決めてもらいます。また、被験者たちとは関係のない第三者にも同様にビデオを見てもらい、リーダーに誰がふさわしいかを選んでもらいました。

結果は、被験者も第三者も同じ人物をリーダーに選んだそうです。選ばれたのは、単に「いちばん最初に発言していた人」だったそうです。数学の能力が他のメンバーより優れているということではありませんでした。ビデオを繰り返し見てみると、選ばれた人は最初に発言していたこと以外に「他の学生よりも強い調子、確信に満ちた様子で話す傾向」があったそうです。

研究チームは「実力のある人がリーダーに選ばれる」よりも「確信のある人がリーダーに選ばれる」傾向があるとの結論を出しました。結果として「実力」があっても「確信」のない人は選ばれにくかったのです。

私たちのビジネスにおける日常でも、こういう傾向はあるような気がしますよね。

 

 

社長が気をつけないといけない「環境」

 

ビジネス書の帯に「たちまち増刷!」とか「10万部突破!」とか書いてあったりすると、ついつい手にとってみたりしちゃいますよね。こういうのを「バンドワゴン効果※1」というそうです。

本当は、現在の販売高に関係なく良いものは良いし、イマイチなものはイマイチです。書籍に関しては現代のベストセラーよりも「古典」の中に素晴らしいものが多くあることは、経営者なら周知の事と思いますが。

 

※1バンドワゴン効果とは「人が持っているから自分も欲しい、流行に乗り遅れたくない」と言う心理が作用し、他者の所有や利用が増えるほど需要が増加する効果です。 「バンドワゴン」は行列の先頭をいく楽隊車を意味します。

 

そして、昨今ではインターネットの普及により、以前では考えられない低コストで大量の広告ができるようになりました。商品情報は、いまやクチコミ型のものが主流となりつつありますが、これらにも恣意的なものは含まれており、膨大な量に拡大しています。

そういった環境では簡単に「デマ」も拡がる訳ですが、「嘘」でも複数のルートから繰り返し発していると「本当」になってしまったりします。ついつい信用してしまうのです。海外の軍事侵攻の戦況などでも、既にお感じになっている通りです。このような事象にもちゃんと名前がついていて「ウィンザー効果」と呼ばれています。

 

※2ウィンザー効果とは、直接訴えかけるよりも第三者を介した口コミや情報の方が信頼性が増すという心理状態(効果)を言います。名前の由来は、ある小説でのウィンザー伯爵夫人の台詞「第三者の褒め言葉がどんな時も一番効果があるのよ、忘れないでね」に由来しているそうです。

 

ご紹介している「実験」や「知見」は意外とどれも年代の古いものです。どうも、社会環境が変化するほどは人間の「脳」とその「動作傾向」は変化していないようです。生物が環境の変化に順応して「進化」するスピードよりも、現代では情報量など「環境」の変化の方が早いように感じます。

その中で人間の「脳」の「動作傾向」がもたらす『結果』は、より増幅されて出現する事を知っておかなければなりません。

 

社長は見込客やスタッフの「脳」を考える前に、自らの「脳」の傾向と対策も知っておく必要があります。社長が自らの「脳」にだまされないようにするためです。

 

 

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