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「ちょっとくらい不正してもいいんだよ」とそそのかしているのは誰なのか?

SPECIAL

チェーン企業のマネジメントの仕組み構築コンサルタント

株式会社ピアーズ

代表取締役 

マネジメントの仕組み構築のスペシャリスト。
これまで20年以上チェーン事業に身を置き、実際に15の組織のリーダーを務め、200以上の経営に関わり売上、利益を上げてきた経験を持つ。チェーン事業の売上が兆単位の企業や創業40年以上の歴史を持つ企業にさえマネジメント面の仕組みが1つも存在していない事に疑問を持ったことから、チェーン事業に共通するマネジメント面の仕組み構築方法を体系化。その効果は大きく、マネジメントの半ば自動化と質の向上により、クライアント企業は利益2~3倍増、業種によっては仕組み実装の初月から数値を跳ね上げさせる指導を展開している。

「伊東さん、チェーンの規模が大きくなっていった時、監査部門って必要になりますか?」

ある社長からの質問に私は即答しました。

「不要です」

社長は驚かれました。なぜなら私の返答はきっと「チェーン事業がある程度の規模になってきますと監査部門を設けているところは多いですね」などとあるはず。その次の質問として「それはどのくらいの規模ですか?」と想定されていたからだそうです。

 

日本には社長が約300万人前後いらっしゃいます。

よって「社長」という括りで一気に表現することはできるものの、考え方はそれぞれ違いますし経営方針も様々です。

多くの社長は何を重視しているのか?

そう問われた時、私の経験上からの述べますと「売上UP」です。

「守りよりも攻め!」そんな姿勢を貫きたい社長としては、次々に効果的な一手を打ち出し続けて、うまく会社の売上を上げつつも、利益も上げていきたいところです。

しかし、攻めの陣営に長く身を置いていますとこんな事態が発生しやすくなります。

 

 「社内で不正が発覚しました!」

 

これは決して他人ごとではありません。残念ですがどの企業にも起こりうることです。

会社としては問題が小さいうちに素早く、かつ適切に対応してもらいたいところですが、発見が遅れたり、対応を間違えてしまいますと大きな損失へつながります。

 「日々頑張ってコツコツと積み重ねてきた信用が・・・」

 「体が悲鳴を上げてても、組織の先頭で旗を振り続けてきた結果がこれなのか?」

 「従業員達は辛い日々も一生懸命ついてきてくれていたのに」

それまでの努力が、誰かの出来心から一瞬にして水の泡となりかねません。

 

先日、日野自動車で社内不正があったと発表がありました。 

これで日野自の不正発覚は3回目で、不正は約20年前から行われていたとのことです。親会社のトヨタ自動車によりますと、これまでに公表済みの不正行為(3/4および8/2公表)に加えて、新たに、エンジンの排出ガス認証申請に関わる追加不正行為が、国土交通省の立ち入り検査を通じた指摘で判明したと認めています。

日野自動車がCMでおなじみの2トントラックの日野デュトロを発売したのは1999年で、小型トラックの分野では後発メーカーでした。

後発であるがゆえに、知名度を他社よりも上げていかなければならない。

日野は2トントラックがあることを広く知ってもらうため、規模の大きな物流会社や運送会社だけではなく、自営の小売店や中小規模の企業の人たちにも知ってもらおうと、「印象に残るPRを」ということで「トントントントン日野の二トン♪」というCMソングを打ち出せました。

トラックに縁遠い子供達が口ずさむほどの上手な宣伝もむなしく、14年には745億円もの利益を出していたのに、21年は847億円の赤字とまでなってしまっています。

 

うちも不正があってはならないと、一時も攻めの姿勢を崩したくない社長にも後方確認が必要となってきます。

しかし、チラチラ後ろが気になっていますと腰の入った攻めが出来ません。

もちろん社長が自ら守りに入ることで会社のディフェンス力は跳ね上がりますが、だからといって社長があまりディフェンス陣に長居していますと、今度は従業員の間にはこんな考えも出てきます。 

 「え? 攻め(売ら)なくていいの?」

 「なんだ、じゃあ守ってばかりいればいいのか、楽勝じゃないか!」

それは困るからと

 「何か私の分身となってディフェンス陣で奮闘してもらえる良い一手は無いものか?」

その一手として挙げられる1つの手法が「監査部門設立」です。

 

ではなぜ私は監査部門は「不要」とまで言い切るのか?

その理由は2点です。

1.不正は社長にしかわからない事ではないから

 詳しくは 7月24日のコラム 大の大人ばかりの会社なのに、何故いつまでもチェックしてあげないといけないのか? をご覧ください

 

2.「ちょっとくらい不正してもいいんだよ」とそそのかしている犯人が社内にいるから

 

「これくらいやってもいいんじゃないの?」

人間には「魔が差す」ことがあります。

ここで「いや、やっぱりやめておこう」と自制が効いたり、「とんでもないことになるんじゃないか?」と不幸な未来を予測できる人であれば、自らブレーキを踏んでくれますが、一番危険なのは本人がどうしようか?迷っている時に

 「大丈夫、平気だからやってしまえ!」

とそそのかされることです。

これは実際に社内にそんな人物が湧いて、不正を初めて行おうとしている人を見つけては近寄り、耳元で

 「そんなズルイ手があったんだね、でもそれはアリなんじゃない?」

 「もっとやってもいいよ。誰だってそうしてるんだし」

等とささやいている・・・というわけではありません。

助長する人の正体とは「不正を行った人が出した結果を、会社が認めてしまっていること」なのです。

 

ここでコラムをご覧の方に質問です。

誰かが困難な課題をクリアした時、あなたはその人に向かってどんなアクションをしますか?

 

ほとんどの方は「よくやった!」等と褒める。とお応えになるのではないでしょうか?

中にはこうおっしゃる方もいます。

 「どうやって良い結果が出せたのか?」過程を聞く

こうされている方はかなり優れたマネジメント力をお持ちですね、と言えます。

その理由は2つ挙げられます。

まずは

 「こんな良い結果を出せたのなら、他の人達も見習って結果を出して欲しい」

などと、他の人にも努力を波及させやすいから

上司や周りの人が「君はそんなに苦労してたんだ! やるじゃないか!」と言ってくれるだけでもその効果は絶大です。

2つ目の理由は、不正の発見、予防にも役に立つから

例えばやりとりとしては

 「そんな簡単にこんな良い結果が出せるものなの?」

もし、結果を出した本人が不正をしていたとしたら、つじつまがあった過程を説明できませんし、後ろめたさが態度に出てきてしまいます。

 「いえ、 えっと・・・それは・・・〇〇でして・・・その」

などと口どもってしまうでしょう。

 

できれば「どうやってそんな良い結果を出せたの?」と誰もがそんなマネジメントをしてほしいところですが、問題なのは「良くやった」だけで済ませる企業が多い事です。

わけも聞かずに「よくぞクリアした!」「さぁ次に向かってGO!]とだけ言われますから、もし結果を出した本人が不正をしていたとしたら

 「危ねえ危ねえ、バレなかったぜ」

とまずは一安心。それが続きますと、だんだんエスカレートしていき

 「今度も私にお任せを!」

ハードルはどんどん上がっていき、本人としても

 「やばい! もっとだ・・・もっと手を染めなければ・・・」

それがいずれ前年比となれば

 「これって多くの人が不正して出した結果だよね?」

 「会社はそれを超えろと言ってるの?」

 「しょうがない、みんなが不正して結果を出しているんだから私も・・・」

不正はまるで一度手を出してしまったら簡単には戻れない覚せい剤です。

 

ここで

 「ちょっと待って下さい伊東さん、会社が満足する程の結果を出してくれた従業員に、どうやって課題をクリアしたのか?と聞かない企業なんてあるんですか?」

と疑問を持たれた社長もいらっしゃるのではないでしょうか?

または

 「伊東さ~ん、当社にはうまくいった理由を聞かない程、冷たい人はいませんよ~」

という方もいらっしゃることでしょう。

 

ではそんな人間味あふれる、従業員愛がいっぱいの経営者に更に質問です。

あなたの経営する職場がこんな状況下だったらいかがでしょうか?

 ・上司と部下が常に離れた場所で働いている

 ・上司は昼、部下は夜など、勤務時間が違っていて顔を合わせる事が少ない

 ・勤務曜日も違っていて、会えるチャンスは一週間に2~3日のみ

それでも果たして従業員達全員が

「皆が『君はどうやって良い結果を出せたの?』と聞いてくれているはず!」

と言い切れますか?

 

もうお気づきの方もいらっしゃると思います。

上記の3つの条件下で働いている企業といえばチェーン企業です。

チェーン本部と店長の関係もそうですが、現場で働く店長とスタッフの関係も該当します。他の事業と違ってリーダーはまず傍にいません。

良い結果を出せた人に対して「どうやって良い結果を出せたの?」と理由を聞いてあげたいと思っていたとしても、そう簡単に本人には会えない状況下で仕事をされているのです。

 

チェーンビジネスにおいて、他社よりも大きな利益を出し続けられている企業は

 「本人に会えなくても理由は聞かなきゃならん」

 「たとえ1週間以上会えなくても!」

マネジメントの体制づくりには工夫に工夫を重ねた仕組みがうまく構築できていて、こんな熱い思いを持った人ばかりの組織が出来上がっています。

 

自社のマネジメントをよく観察してみた時

良い結果を出してくれた人はいるけど、会える機会が少ないからと、安易に「よくやってくれたな」だけで終わっていないでしょうか?

その人がどれだけ苦労して、どんな工夫を重ねて、その結果を生み出したのか?

誰もが「その過程を詳しく聞き出したい!」

そして共感し、喜びを分かち合い、時には一緒に涙する熱い関係が続いている。

そんな組織ができあがっているでしょうか?

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