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事業承継の適齢期と経営権の確保

SPECIAL

「信託」活用コンサルタント

株式会社日本トラストコンサルティング

代表取締役 

オーナー社長を対象に、「信託」を活用した事業承継や財産保全、さまざまな金融的打ち手を指南する専門家。経営的な意向と社長個人の意向をくみ取り、信託ならではの手法を駆使して安心と安全の体制をさずけてくれる…と定評。

トヨタ自動車の社長交代が発表されました。豊田章男社長は52歳で社長に就任しています。次期社長となる佐藤恒治執行役員も53歳と大幅な若返りです。

東京商工リサーチによれば社長の平均年齢は約62歳。トヨタ自動車の歴代社長の就任適齢期は62歳前後ということですから、創業家として社長適齢期を50代前半に恒例化したということでしょうか。

 

1.経営者の交代

中小企業の経営者交代でも大きな変化を確認ができます。2022年版の中小企業白書に掲載されている「中小企業の経営者の年齢の分布表」に顕著に表れています。

2015年のピークが65歳〜69歳世だったので、2020年のピークも70〜74歳になるはずです。しかし、2020年には60歳〜74歳までピークはなく、平坦なグラフになっています(出典:中小企業白書)。

この現象について中小企業白書では、事業承継の二極化と説明しています。コロナ禍による経営環境の変化の影響で、世代交代を促された会社と、後継者が見つからないまま廃業等にいたる企業の二極化です。

2.父親と息子の関係性と適齢期

ファミリービジネスで経営者交代する場合、創業者と血縁関係者、婿養子、創業家と無関係、などのパターンがあります。上場企業のファミリービジネスのデータでは、承継後の経営成績が最も良かったのは婿養子でした。

同族会社(ファミリービジネス)の経営交代に良いタイミングというのがあるのでしょうか。海外の研究によれば、父親から息子への承継の場合、年齢の組み合わせで良好な関係が期待できるのは次のパターンです。

  • 父親が50〜60歳で、息子が27〜33歳の間
  • 父親が70〜75歳で、息子が40〜55歳の間

 

3.上手くいかない場合に備える

後継者が想定と違う方向に暴走して経営の悪化を招くなど、必ずしも上手くいくとは限りません。いざとなったら、先代の経営者が返り咲かないといけないこともあり得ます。その時に経営者に返り咲けるかは、経営権を握っているかどうかにかかっています。

株主総会での委任状争奪戦(プロキシーファイト)で有名になった大塚家具の場合は、創業社長が社外に去、長女が経営権を握ることになりました。騒動のあった2015年の時点で、父親74歳、長男45歳、長女46歳です。

創業者の父と長男が経営する匠大塚は現在も事業を継続しています。しかし、長女の経営する大塚家具はヤマダ電機に吸収されました。大塚家具がヤマダ電機の傘下でも収益化できなかった事を考えると、事業モデルが終わっていたと言わざるを得ません。

結果的に、創業者の父親は上手く事業を売り抜けた、と言えなくもないのですが、創業社長にとって経営権を奪われたのは、忸怩たるものではないでしょうか。

 

4.社長の椅子と財産は譲っても、経営権は譲らない

後継者に会社を任せても、上手くいかないかもしれない。だから、「いつまでも社長を続ける」のではなく、社長の椅子は早めに譲り、後継者を試す期間を設けた方が合理的ではないでしょうか。

社長の椅子と自社株は譲っても、経営権は譲らない方法は色々と考えられます。それぞれの方法にメリット、デメリットがあるので、法律的な面だけでなく、家族、会社、社長個人の思い、など総合的に考えて、どの方法を採用するか判断する必要があります。

上場企業の中でも、経営権の承継と、株主としての承継などを総合して考えた結果、信託を採用する会社も出てきました。上場会社の株主に資産管理会社として信託銀行等が名前を連ねるのは珍しくありません。

しかし、昨今ではコーポレートガバナンスやファミリーガバナンスを考えた上で、信託を採用している会社が現れているのが特徴的です。

 

5.まとめ

「息子を社長にするのは、いつでもできる。だが、経営者にすることはできない。(中内功)」という言葉もあります。息子が経営者に適さなかったら、オーナーとして別の選択肢を採用せざるを得ません。

「社長の椅子を譲っても、経営権は譲らない」という工夫も時には必要です。その時、信託を活用するというのも有力な選択肢です。資産の管理、運用、承継にも活用できる信託という武器は、オーナー社長の強力な味方になります。

 

 

 

 

 

 

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