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年間温湿度の「見える化」

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

振り返ってみると1年を通じた年間の温湿度の様子は測ったことはありませんでした。温湿度は外気や室内の場所によってそれぞれ違いますので、同時に複数の場所で続けて計測しなくては全体像はつかめません。新築当時も会社に計測機器はありましたが高価で数が少なく、自宅に長期間複数の測定機器を置くことは難しかったのです。

しかし、最近では精度のよい温湿度計が安価で購入できるようになりました。もう20年以上も住んでいる家ですが、現在も多くのパートナー・クライアントに訪れていただいている場所です。これまでの「生活感覚」が「数字」になった際にどのようなものなのか?好奇心が湧いてきましたので「いまさら」と言わず、試してみることにしたのです。

 

 

年間温湿度の「測定体制」

 

その便利な温湿度計も、徐々に買い足しているうちに11個にもなってしまいました。単四電池を2個入れておけば1年以上は作動し続けています。Wi-FiやBluetoothでスマホに接続してデータを集約できるので、測定箇所がたくさんあっても本当に手軽です。

 

↑このような小さな本体でWi-Fiでスマホに繋がります

 

 

今回の年間データを計測した温湿度計の位置をご紹介しておきます。1階部分にはカーポート奥の倉庫を含めて4箇所、2階部分にはカーポート上の倉庫とダイニング、外気温も2階バルコニーの軒下で計測しています。あと、ロフトは棟の下あたりのいちばん室温の高そうな場所です。

 

 

↑1階の温湿度計位置

 

↑2階の温湿度計位置

 

↑ロフトの温湿度計位置

 

 

測定結果「室内編」

 

外気温の年間推移を見ると夏場の暑さのピークは丸くなっていて、冬場の寒さのピークは鋭角になっています。これは冬に雪が降り積もった日があった影響かと思います。湿度は年中高めの鹿児島らしいグラフになっています。4月頃が最も湿度の振れ幅が大きくなっています。

各箇所のグラフと外気温を比べながら見てみてください。また、アプリの特性上グラフの縦軸はその箇所の年間最高温度・湿度と最低温度・湿度(赤線部分)で自動的に描画されていますので、測定箇所毎に温度幅が異なっています。ご注意ください。

1階和室の湿度は3月頃が振れ幅は大きいものの全体として低くなっています。これは、空気式ソーラーの集熱がこの時期まで働いているせいだと思われます。1階トイレでは湿度の振れ幅が大きく、最高湿度も年中高くなっています。自宅のトイレは、年中窓を開けているお風呂→脱衣室に接続しているスペースで、普段ほとんどだ引き戸を開放しているからでしょう。

 

 

↑外気温の年間温湿度グラフ

 

↑1階 和室の年間温湿度グラフ

 

↑1階 トイレの年間温湿度グラフ

 

 

 

2階ダイニングの夏場の室温と湿度のピークが平たくなっています。これはエアコン使用によるものでしょう。ロフトの室温は外気に比べて冬場の谷間が浅くなっています。見えにくいですが、年間平均気温(点線)の25.4 度を上回っている日も多く、かなり暖かいです。

また、湿度のほうは外気に比べて冬場の相対湿度が低くなっています。こちらも、年間平均湿度(点線)54.1%を下回っている日が多く、乾燥気味です。これは、太陽熱による空気式床暖房+薪ストーブによるものだと思われます。

 

 

↑外気温の年間温湿度グラフ

 

↑2階 ダイニングの年間温湿度グラフ

 

↑ロフトの年間温湿度グラフ

 

 

 

測定結果「室外編」

 

部屋の外の温度・湿度にも興味がわいて、追加で測定してみました。なぜなら、この部分は感覚的なものもほとんど持ち合わせていない場所であるからです。こちらも外気温度・湿度と比べながら見ていきます。

まず、床下の温度ですが、11月から振れ幅が大きくなっています。これは、この時期からソーラーシステムの運転モードの切り替えを行い、ファンにより床下の空気が動いたためです。逆にそれ以前の夏場は空気があまり動かない、通常の床下の状態の数値です。

いっぽう、湿度に関しても同様の要因ですが、床下の湿度が大きく低減されていることが分かります。気温の下がる季節では、床下が室内以上の乾燥状態に保たれていることが確認できました。

 

 

↑外気温の年間温湿度グラフ

 

↑1階 床下の年間温湿度グラフ

 

 

 

最後に、カーポートの奥にある作り付け1階倉庫と、カーポート上に新設した既製品の2階倉庫(DIY断熱)も見てみます。1階倉庫は外気に比べて少しだけ暑さ寒さがマシで、年間通じて湿度が高いめで安定しています。どうりでヤモちゃんが好きなはずです。

2階倉庫では、1階倉庫より温度の振れ幅が大きくなっています。2階の倉庫のほうが日照や風の影響を受けやすいからでしょう。DIYですが、7月上旬にしっかり断熱工事を施しましたので、それまでは湿度の振れが大きいです。しかし、内部に熱源がありませんので、その真価は測定結果には現れていません。ちょっとがっかりです。

冬場、2階の倉庫にこもってパソコン作業をやってみたことがあるのですが、その際には私の体温とパソコンの熱で室温がどんどん上がっていましたので、断熱対策は確かに効いています。(2階倉庫の製作プロセスについては 果てしなき収納力との闘い(その1) をご覧ください)

 

 

↑外気温の年間温湿度グラフ

 

↑1階 倉庫の年間温湿度グラフ

 

↑2階 倉庫の年間温湿度グラフ

 

 

 

入居20年にしてようやく自宅とその周辺の温度湿度の年間推移傾向が分かりました。感覚と一致する点と、意外に感じた点がありました。特に湿度は体感しにくい指標であり、相対湿度と絶対湿度があって捉えにくいものです。全体を数値で掴むことの意義はありそうです。(相対湿度と絶対湿度については『ぜいたくソーラー』の季節 で詳しく解説しています)

たとえ1軒でも、結果としての環境を数値で分かっているかどうかは、後に大きな違いとなっていくでしょう。(住まいの温度計測について興味のある方は、わが家は『エコハウス』なのか?知られざる『トップライト断熱列伝』2 をご覧ください)

 

 

社長の会社では「実際に建てた家で1年間に温度や湿度がどのようになっているのか?」にキチンと回答できるようになっていますか?

 

 

 

 

 

 

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