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資産管理会社からファミリーオフィスの時代?

SPECIAL

「信託」活用コンサルタント

株式会社日本トラストコンサルティング

代表取締役 

オーナー社長を対象に、「信託」を活用した事業承継や財産保全、さまざまな金融的打ち手を指南する専門家。経営的な意向と社長個人の意向をくみ取り、信託ならではの手法を駆使して安心と安全の体制をさずけてくれる…と定評。

「資産管理会社をすすめられたけどね」とK社長。しかし、あまり気が乗らないご様子。確かに、資産管理会社の前に考えておくべきことがあります。環境の変化もありますし、心境の変化のあるのが人というものです。

 

1.資産管理会社

日本における資産管理会社の典型的なパターンの一つは、オーナー経営者が相続税対策のために活用するというものです。

確かに、日本の相続税負担の重さを考えると必要なことではあります。ただし、この先のライフプラン次第で活用方法は変わります。

そもそも、K社長が事業を長男に承継させるか、それとも第三者に譲るかという点こそ、K社長の迷いの根源でした。

親世代はなんとなく継がせたい気持ちがあり、子供世代も継がなければいけないかも、という気持ちがある。よくある構図ですね。

そもそも日本人の特性は、家業というものを次の世代に引き継ごうとする意識が強い傾向があります。いわゆる家(イエ)意識というものが関係します。

会社を親族が承継し、株主だけでなく、従業員、取引先、顧客などの利害関係者との関係性を重視するドイツ型のいわゆる「ライン型資本主義」に近いのが日本の同族企業です。

この点、会社を上場させる、あるいは譲渡することを躊躇わないアメリカやイギリスなどのアングロサクソン資本主義の国とは異なります。

とはいえ、近年の日本の同族企業の状況も変わっています。親族承継の割合が減り、親族以外への承継やM&Aの割合が上昇しています。

帝国データバンクの全国「後継者不在率」動向調査(2023年)によりますと、同族承継の割合(33.1%)を内部昇格(35.5%)の割合が超えました。

となると、株式の承継はどうなったか、という点が気になりますが、そこまでは触れられていません。

オーナー家が株を持ち続け、経営者は内部昇格した親族以外の人材となると、いわゆる所有と経営が分離した状態になりますので、ガバナンスというものを機にする必要が出てきます。

こうなりますと資産管理会社の意味合いも変わってきますね。

2.欧米の資産管理会社

ファミリービジネスの研究では、同族経営と同族所有を分けて考えます。本コラムでもBMWやポルシェ、プジョーなどの欧州の自動車メーカーなどが所有と経営を分けて管理していることを紹介してきました。

特に、プジョーの資産管理会社は単に一族の資産管理をするのみならず、ファミリーオフィスとして多様な投資事業を行っています。

欧米の資産管理として一括りにすることは出来ませんが、会社が大きくなるほどファミリーオフィスを活用するという点は共通するのではないでしょうか。

もっとも、このファミリーオフィスの定義は決まっていません。日本では「アルケゴス事件」で有名になりましたので、ファミリーオフィスのことを資産運用会社と思う人も少なくありません。

「アルケゴス事件」とは、ファミリーオフィス業を営むアルケゴス・キャピタル・マネジメント社が資産運用に失敗した結果、クレディ・スイス、UBS、野村證券などが多額の損失を被った事件です。

このアルケゴス・キャピタル・マネジメント社は過度のデリバティブ取引をしていましたがヘッジファンドではないということでSEC(証券取引委員会)の規制の外にありました。

一般にファミリーオフィスとは、資産運用や資産管理に関する助言だけでなく、ファミリーとしての価値観を共有する場の提供や、一族内の紛争予防、公益活用や慈善活動のサポートなど、無形的な財産まで管理する法人などをいいます。

そもそもファミリーオフィスの原点は1882年にロックフェラー家の資産管理のために設立されたのが最初とされています。欧米においては富裕層向けビジネスとして確立しています。

 

3.日本での活用

日本でもファミリーオフィス・サービスを提供するという法人が増えています。相続税対策として資産管理会社を活用するのにとどまらず、資産運用などの各種サービスの提供をメニューとして掲げている会社が多いようです。

ただ、日本で欧米型のファミリーオフィスを会社として行うのは難しいのです。運用の相談や助言は金融商品取引法の規制を受けます。

紛争予防のための法律相談は弁護士法、税務対策のための税務相談は税理士法により、それぞれ弁護士、税理士しか対応できません。

色々な規制が国民の財産を守ってくれいている結果、アルケゴス事件というような事態は起きにくい反面、ビジネスとして制約があります。

インフレ、紛争の増加、地震等の様々なリスクなどを考えれば資産運用の多様化は必要ですし、ファミリーの財産を分散させずに集約して運用する方が合理的です。

経営者の資産管理会社の活用策としては、相続税対策だけでなく、ファミリーの資産防衛や結束の強化という観点も欠かせない時代になっていると感じます。

もはや相続対策だけでは足りない時代になりました。大切な家族の未来を守るための準備が出来てますでしょうか?

 

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