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時代の象徴と「社長の大仕事」

SPECIAL

「信託」活用コンサルタント

株式会社日本トラストコンサルティング

代表取締役 

オーナー社長を対象に、「信託」を活用した事業承継や財産保全、さまざまな金融的打ち手を指南する専門家。経営的な意向と社長個人の意向をくみ取り、信託ならではの手法を駆使して安心と安全の体制をさずけてくれる…と定評。

スタジオジブリが日本テレビ傘下に入るとのニュースがありました。2023年にジブリが公開した映画は「君たちはどう生きるか」です。日経新聞の見出しは「ジブリはどう生きるか」でした。

 

◆時代の象徴

「1人の人間が背負うにはジブリは大きな存在になりすぎた」と話す鈴木敏夫社長。さらに、「宮崎(駿監督)が、82歳、僕が気付いたら75(歳)。一種、老害を考えなきゃいけない年齢になった」とのコメントもありました。

気がついたら75歳、というのは今の日本の経営者では珍しくはありません。そこまで元気に現役で働けたことは、素晴らしいことですし、自分もそうありたいと思います。

一方で、「本当のことを言うと、宮崎駿とぼくというのは、わがままだったんですよね。自分勝手というか。2人は好き放題なことをやった。そういうことを言うと、人材の育成、その他に関してはさぼってきました。」という本音もポロリ。

後継者候補はいても十分に育成できなかったため、宮崎氏の長男である吾朗氏を推す声もあったようです。しかし、宮崎駿監督が同族の承継を拒否。吾朗氏も固辞したため、第三者への株式の譲渡に至りました。

親族への承継でなく、内部昇格や第三者への承継となる割合が増えている昨今の情勢を象徴する事例といえます。時代を鋭く切り取る映画を作成してきたジブリという会社が、事業を継続し、承継するという流れという面でも、今の時代を象徴する結果となりました。

◆カリスマの後任

「君たちはどう生きるか」の制作に7年間かけるというのも、普通の経営感覚では判断がつきません。採算はとれたとのことですが、カリスマといわれるお二人だからこそ、といえます。

カリスマといわれる先代に代わって、会社を牽引していく後継者には組織を支配するのにふさわしい根拠や正当性が必要です。M・ヴェーバーは会社や国家、政治団体などの組織をまとめていく権力の正当性を3つの類型にまとめました。


①カリスマ的正当性
②伝統的正当性
③合法的正当性

①のカリスマ的正当性とは、支配者個人の超人間的・超自然的資質やそれに基づく啓示などの指導原理に被支配者が個人的に帰依するときに生ずる正統性です。

②の伝統的正当性とは、血統・家系・古来からの伝習・しきたりなどに基づいて被支配者を服従させる正統性で、古くから存在する秩序と神聖性による支配のことをいいます。

③の合法的正当性とは、秩序・制度・地位など合法性にもとづく正統性です。

これら3つの類型はあくまで把握のためのツールとしての理念型であり、現実社会にそのまま存在しているわけでなく、実際の支配は、多くの場合、この3つの正統性が相互に影響しあって総合的に権力を基礎づけています(Wikipedia)。

ジブリのみならず、カリスマ型の経営者は後任選びに苦労します。カリスマとは「非日常的な天与の資質」だけに、簡単には見つかりません。

このため、創業家の血筋を引く人物が「伝統的正当性」を根拠として組織をまとめていくという選択肢が有力になります。しかし、ジブリではこの選択肢を取りませんでした。

その結果、経営力のある第三者が資本の論理に基づき、カリスマの後任として「支配の正当性」を確保することになります。

そうなりますと、いわばカリスマの魅力による統治から、官僚的な組織統治に切り替わることになります。当面、二人のカリスマが企画・制作に専念するそうです。ジブリのこの先の展開に期待したいですね。

 

◆見極めどき

実際のところ、中小企業がM&Aを活用する割合は増加傾向にあります。自社の株式を譲渡した後も、経営者がその地位に止まる事例も増えてきました。後継者を内部昇格により選ぶ割合が増えており、「脱ファミリー化」の傾向は強まる方向にあります。

一方で、急激な経営環境の変化などにより意図した事業承継の計画が頓挫するケースもあることも少なくありません。自社の状況のみならず、業界状況等を含めた客観的に判断する必要があります。

これまで背負ってきた「社員もいるし、お客様もいる。やるべきこともある…」という気持ちも分かりますが、今の状況と将来の想定を客観的に見つめる時間も必要なのだと思います。

生涯現役で社会に貢献するということに全面的に賛成いたしますが、それは生涯社長を意味するものでもありません。見極めどきを冷静に見つめる必要があります。では、その兆候は何でしょうか?

中小企業白書(2021年)では、経営者の年齢と業績の関係について言及しています。経営者の年齢が上昇すると、増収・増益企業の割合が減り、下記の点について取り組む割合が減少します。

  • 新事業分野への進出
  • 設備投資(維持・更新を除く)
  • 試行錯誤(トライアンドエラー)を許容する組織風土

もし、思い当たるようでした、ちょっと立ち止まって考えてみるのも悪くないかもしれません。

 

<まとめ>

どのような形にしても、事業の承継はエネルギーと時間が必要です。とすれば、エネルギーも時間もあるうちに、手を打つ必要がありますね。経営者としてビジネス面での判断だけでなく、会社のオーナー、家族の大黒柱という立場もあります。

これから年末、年始を迎えます。人生を振り返り、そして見通すことを考えるには最適なタイミングです。社長ご自身の時間と人生を大切にして頂くことこそ、周囲の人々の幸せにつながるのではないでしょうか。

 

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