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あるべき組織とは共同体である

SPECIAL

「信託」活用コンサルタント

株式会社日本トラストコンサルティング

代表取締役 

オーナー社長を対象に、「信託」を活用した事業承継や財産保全、さまざまな金融的打ち手を指南する専門家。経営的な意向と社長個人の意向をくみ取り、信託ならではの手法を駆使して安心と安全の体制をさずけてくれる…と定評。

「それじゃFAXで送っておいてよ」とO社長。定例ミーティングで話しているところに、携帯電話に着信がありました。指示を出してから、ガラケーをパチリ。今なお業界ではFAXが主役のようで、O社長も慣れ親しんだガラケーを手放せません。

 

◾️動かない悩み

「FAXと電話の組み合わせが、誰でも出来て、簡単、便利で速い。システム化すると効率が落ちる。」とO社長。なるほど、なるほど。

FAXといえば、コロナ禍の中、医療機関が保健所への書類の提出に使っていたことが話題になりました。

使い方によってはFAXの活用が合理的なこともあります。一概に否定することはできません。

一方でO社長は「変えたいところが変わらない」と呟きます。今日の経営会議の役員の対応が不満のようです。

社長が指示を出しても、社員は思うように動かない。なぜ、社員は現状を変えようとしないのか。

色々な理由、理屈が考えられます。よくある「組織運営の悩み」ですね。

社長が組織を良くしよう、改善しようと思っても、部下は踊らない。ではどうしましょうか?

組織を改善していく方法の一つが、現場から業務改善提案を出してもらうこと、そして、その提案に対して報酬を払うことです。

ご存知のとおり、日本一のホワイト企業である未来工業の施策です。1改善提案で500円の報酬とのこと。

それにしても、未来工業はユニークです。年功序列、社員は全員正社員、70歳までの選択定年制、5年に一度の会社負担の海外旅行。まさに、昭和の時代の日本の会社です。

本社の社員の大半は地元の輪中地域の出身。しかも「輪中根性」という排他的な気質があるという、極めて日本的な環境だそうです。

2023年4月にこれまで開示していなかった中期経営計画を公表。計画では営業利益率13.5%、配当性向50%を目標として掲げていますが、十分に達成可能な数字です。

しかも、経営計画発表から半年余りで株価が倍増しています。資本主義の要請にも見事に応えています。

しかし、その組織の内実は、資本主義の徹底した株式会社というより、昔ながらの共同体的な組織といったほうが、ぴったりのようにみえます。

◾️共同体的な組織

コンビニエンスストアでは無人レジは当たり前ですし、アプリによる決済も急速に拡大しています。資本主義の合理的で無駄のない世界は人の介在する余地は減少しています。

確かに効率的ですが、ある種の寂しさを感じることが少なくありません。煩わしさがありながらも、昔ながらの共同体的な関係(共同体そのものではなく)も必要に感じます。

資本主義は購買における人との関係性の減少のみならず、労働というものに対する価値、見方を変えてしまいました。

資本主義社会における労働は、社員に高い給料を払う代わりに、それに見合う成果をあげるという契約関係です。つまり、金銭とサービスの交換です。

しかし、共同体においては金銭により交換が行われません。そこでは贈与による交換が行われます。マルセル・モースは贈与の本質を次のように説明します。

①贈与は義務である
②相手は受け取る義務がある
③必ず返礼が伴う

共同体においては、年賀状、お中元、お歳暮などにより、相互の「関係性」が維持されていました。年賀状は郵便料金の引き上げで更に減少することは間違いありません。関係性は希薄になるばかりです。

かつて日本の会社は社長も社員も運命共同体という価値観の中にいました。しかし、今や資本主義的価値観が共同体的価値観を駆逐する勢いです。

資本主義の世界では「金銭と商品(サービス)の交換」で完結します。したがって、社長と社員の間に関係性は希薄です。逆に、共同体的な世界では一体感が生まれるのです。

 

◾️「場」

日本の組織の特徴は、個人志向より集団志向に重きが置かれます。このため、集団でルールを決めたとなれば、一人で勝手に変更するのは難しい。変えようとすれば、構成員は周囲を伺いながら、腹の探り合いをすることになります。

では、なぜ日本の組織は集団思考になるのか。これは日本の組織というよりも日本社会の基本構造、すなわち「場」の問題です。

日本の組織は、個人が「場」に集まって、集団となることにより構成されます。そして、この「場」では「論理より感情」が優先されるのです。

その結果、日本の組織では、外部に合理的なオプションが存在していたとしても、感情として受け入れられなければ、その合理的な選択はなされません。

つまり、西洋社会は個人をベースに意思決定するのに対し、日本は集団ベースになります。多様な人が入り混じる西洋社会は法が規範となるのに対して、日本では集団の掟(慣習)が重視されるという違いが生じます。

遺産相続の「場」でも、合理性よりも一族の掟とか感情というものが優先されることは少なくありません。

オーナー社長を中心に形成される会社、家族、株主という人の集まる「場」を「共同体」として捉え直してみてはいかがでしょうか?

近年の日本スポーツ界の飛躍の背景には、同じ目標をもった「共同体的な関係性」があります。

共同体としての関係性の構築、目指す方向性の共有、掟を確認しておくこと。「私」ではなく、「我々」という関係性の構築が大切なのだと思います。

オーナー社長を中心とした家族、会社、株主を共同体として繋ぎ止める手段の一つに「信託」という仕組みがあります。その使い方をご存知ですか?

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