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面白いように会社が変わるお話

SPECIAL

親子経営コンサルタント

ビジネス・イノベーション・サービス株式会社

代表取締役 

オーナー社長と後継者のための、「親子経営」を指導するコンサルタント。みずから100億円企業を築くも、同族企業ならではの難しさや舵取りの大変さで苦しんだ実体験を指導。親から子へ失敗しない経営継承の極意として「親子経営」を伝授する。

もう今年もあと数日で年が明ける。今日は朝から東京近郊にある顧問先へ今年最後の定期訪問に出かけた。お付き合いをし始めもう8年が過ぎる。当初は息子さんへ事業承継を考えており相談に乗って欲しいということで訪問が始まった。一昨年息子さんへ無事経営交代がなされた。

その後も息子さんの経営相談役として月に一度訪問を続けている。8年前に比べ会社の規模は大きくなっている。毎月試算表を見ながら話をしている。今日もいつものように試算表を見始めた。二人して思わず笑みがこぼれてしまった。ここ3年ほど順調に売り上げ、利益を伸ばしてきている。

そのなかでも先月の利益がすごかった。単月の売上総利益額、営業利益額ともに過去最高額を記録していた。それを見て一昨年社長に就任した息子さんと私が思わず笑みをこぼした。今期はまだ3か月しか経っていないけれど今期も前期を上回る業績を挙げることが予想される。コロナ禍も心配は杞憂となり難なく切り抜けることができていた。

ビジネスモデルとしてはいくつかの強みが顕著である。自社の市場を自ら都内と限定していることで効率の良い営業ができている。業界環境が特殊であるため参入障壁が高く競合相手が限られている。都内近郊に本社、事業所を構えているため比較的安い経費で賄えている。等の理由があり今後も大きく業績が落ちることがないと思われる。

8年前私が訪問し始めたころも業績は悪くはなかった。先代社長は創業社長で技術者タイプの方で営業はもっぱら今の社長がやっていた。私は事業承継をスムーズに進めるための相談に乗っていたので当然のこととして決算書を拝見させていただいていた。決算書とは面白いもので決算書を見ると経営者の経営姿勢のみならず経営者の姿までが見える気がするものだ。

先代社長は口癖のようによく節税という言葉を使っていた。決算書を見ると先代社長の節税策の跡がいたるところに散見された。まず目についたのは保険金支払額のあまりの多さだ。先代社長に聞くと、もちろん節税のためだという。その数120本ほどの保険契約数。さらには詳しく聞いてみないとよく分からない節税目的の金融商品がいくつか。

そして節税目的の不動産投資などなど。それは私が今まで目にしたことも耳にしたこともないほどの節税策の数々だった。それでも最終利益はそこそこに挙がっていた。私は事業承継に向けこれ以上の節税策は当分無用だと話させてもらった。決算のたびにできるだけ多く税金を払ってくださいと申し上げた。

その後、後継者となる息子さんにそれまでの節税策をひとつひとつ見直し検討することをお願いした。その結果、保険はぜひとも必要なもの、解約すれば損となるものだけを残すことにし、その他の保険はすべて解約してしまうということになった。100件近くあった保険で残すものはたった5件だけということになった。

その他の節税金融商品は期限まで解約ができないものがあったりするが基本的にすべて解約を進めていくことにした。保険、金融商品などの解約により多額の雑収入が発生することが分かり、計画的に進めることになる。これにより先代社長への退職金の出所を確保することができた。

さらに、節税のための不動産投資物件は調べてみると心配していたほどの不良資産ではなく、家賃収入として雑収入がしっかり挙がっているのでしばらくはそのままにしておくことになった。当初私は先代社長の節税対策を懐疑的に見ていた。解約を進めるうちにそれほど大きく価値が毀損されたものがないことが分かってきた。それらが解約されることで多額の雑収入となって現金化され返ってきていることで大いに安心した。

2年前に息子さんが先代に代わり社長になった。その際、私から彼に言ったのはこれからしばらくは節税策を一切取らずに税金を払いましょうということだ。ただそれだけだ。先代社長も最後の2年間はあまりに私が節税をせず税金を払いましょうと言い続けていたのでこれといった節税策をとらずいい決算をしてくれていた。

前期はこれまでにない最高の売り上げ、最高の利益を挙げれたことでこれまでにない多くの税金を払うことになった。そのおかげで決算書の姿が見違えるほどになった。企業の財務分析をするためいろいろな指標がある。売上高総利益率、自己資本比率などなどの指標が軒並み好転しているのが一目瞭然としている。

ここ数年の好決算のおかげで顧問先にはいろいろな変化がい起きている。財務内容が良くなってきたことで金融機関の対応が一段と良くなっている。今まで以上の好条件で取引を望んでくる。また、古くなった機械、設備等の買い替え、新たな事業推進のための設備投資など積極的投資が進んでいる。

また社員への待遇がさらに良くなっている。まず定期昇給を実施。ボーナスは決算賞与を含め3回支給。完全週休2日実施。社員旅行、忘年会、新年会の復活。全体にベースアップがされているため社員の新規雇用が容易になっている。必要な人材が必要な時期に得ることが出来るようになっている。

結果、社員ひとりひとりのパフォーマンスが向上しモチベーションが高まっているのが感じられる。一歩社内に入ると活気が感じられ空気感がすっきりと清涼感すら感じられる。おそらくたくさん税金を払う前にできるだけ社員に利益を還元してやろうと少なくないボーナスが支給されていることも影響していることだろう。

今回顧問先の試算表を見させてもらい改めて思い知らされた。会社を良くしようと思うならとにかく利益を1円でも多くあげることだ。そして少しでも多く税金を払い少しでも多くの純利益をあげることが大事だ。純利益こそが税金を含めすべてを支払った残りのお金であり自己資本となり純資産となるものである。

言い換えるなら良い決算をすることでさまざまな変化が起こり業績が好転する。その結果またさらにいい決算をすることができることになる。まさに正の連鎖が起こり続けることになる。いい会社にしたければ利益をたくさんあげ、節税はほどほどにして税金を多く払い1円でも多く純利益をあげることに尽きる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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