なぜ町中華は生き残るのか?──「空気」を価値に変える、透明資産経営のヒント

こんにちは。企業の「空気」をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
長年、飲食業界を見てきた中で、ひとつ、どうしても気になる現象があります。それは、「ラーメン店は次々と閉店していくのに、町中華はなぜか元気」という現実です。もちろん、すべてのラーメン専門店が閉店にむかっているわけではなく、私が運営している「ラーメンまこと屋」は100店舗達成し全店好調です。また、すべての町中華が好調というわけではありませんし、後継者不足で閉店している町中華も増えています。しかし、倒産件数が過去最多を記録した2024年の飲食業界の中にあっても、古びた暖簾を掲げながら地域に根を張り続ける町中華業態には、数字に表れない「何か」が確かに存在していると感じるです。私はこれを、透明資産経営の視点から読み解いてみたいと思います。
町中華の店構えを見て、最新の設備があるわけでもなく、映える盛り付けがあるわけでもない。キャッシュレス非対応、メニューも手書き、注文は口頭、厨房ではベテランの店主が中華鍋をふるう。合理性とは真逆とも言えるこの空間が、なぜ今の時代に生き残っているのか?そのヒントは、「空気感」にあります。ここで言う「空気感」とは、雰囲気ではなく、関係性や文化、信頼感といった目に見えない経営資産が生み出す店内で感じる「空気」です。──これ、まさに『透明資産』の仕組が生み出す心地よさです。たとえば、ある町中華では、お昼時になると近隣の建設業の方々が次々と集まってきます。注文が通る前から「いつもの!」と厨房に声が飛び、おばちゃんが笑顔でうなずく。お釣りの受け渡しに言葉はなくとも、目と目で通じ合う安心感。──これが、マニュアルでもマーケティングでも生み出せない、「空気感」です。
一方、ラーメン専門店の多くは、SNS映えや素材へのこだわり、デザイン性、マーケティング力で集客します。意図的に店頭に行列をつくって見せたり、一杯1,200円を超えるような高単価設定にし店主のこだわりが全面に出るスタイル。もちろん、それもひとつの正解です。ただし、こだわりが強くなればなるほど、お客様が「合う・合わない」で評価しやすくなり、関係性は「商品」に依存します。ところが、町中華はどうでしょう?チャーハンもラーメンも餃子もある、高齢者が一人でも入れる、仕事帰りのサラリーマンがビールを飲める、家族連れも気軽に立ち寄れる、子どもがおばちゃんに声をかけられるつまり、料理だけでなく、関係性と空間が価値になっているのです。高齢者が子や孫と三世代で、杖をつきながらいつもの町中華に通う姿こそ地域密着の飲食店の在り方なのです。
この在り方、関係性を私は透明資産の源泉と呼んでいます。数字では測れないけれど、確実に売上に影響し、リピートを生む力。町中華には、その空気感を意図的に設計する構造が自然に組み込まれています。たとえば──毎日くる常連さんの名前を覚えている、忙しい時間帯でも、おばちゃんの「おつかれさま」が飛んでくる、注文が混んでいても「あと3分でできるよ」と声をかけてくれる、これは、空気を読む経営ではなく、空気を創っている経営なのです。つまり、無意識に実践されている透明資産経営なのです。
このように町中華は単なる飲食店ではありません。地域に暮らす人々の日常の居場所であり、コミュニティの一部なのです。あの店に行けば誰かと会える、久しぶりでも変わらない空気がある、自分の居場所があると感じられる、この心理的安全性は、他の業種でも応用可能な透明資産の源泉です。IT企業だって、製造業だって同じです。「この会社にいると落ち着く」「この上司には相談できる」「この職場はあたたかい」──そんな空気感が社内にあるかどうかで、人も売上も、未来も変わっていきます。町中華のような存在になること。それは、企業が地域やお客様、社員から信頼される存在に変わる第一歩なのです。
「でも、町中華はたまたまそうなっただけでは?」そう思われる方もいるかもしれません。確かに、町中華の多くは自然発生的にその空気を育ててきました。しかし、透明資産経営では、それを「意図的に設計」することができます。理念を伝え浸透させる、組織に安心の文化を醸成するお客様に存在価値を届ける、人の行動を変える雰囲気を創る、「空気感」のマネジメントを仕組みにする、これらはすべて、目に見えないが確実に影響する経営資源なのです。つまり、数値化できない空気感を設計・運用することこそが、これからの時代を生き抜く企業の力になるのです。
町中華のような会社に、人は惹かれる、、、高い広告費も、最新設備も、洗練されたパッケージもない。それでも「また行きたくなる」。それが町中華です。企業にも、そんな存在になれる道があります。人が自然と集まり、離れず、支えてくれる場所。空気感が価値になり、関係が資産になる経営──それこそが、私が提唱する透明資産経営の本質です。
あなたの会社は、町中華のような「空気」を持っていますか?
―勝田耕司
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